第十二話 ギルド④
酒場を出たあと、一行はJr.のガレージへ向かった。
そこはJr.の住処でもあり、マシンの整備や部品を扱う店《wildfox》のガレージでもあった。
壁には工具が整然と並び、奥には整備中の小型マシン、棚には部品が山ほど置かれている。
「うわぁ…」
見たことのない光景にロッキーは目を輝かせた。
「すごい」
「触るなよ」
Jr.が即座に言う。
「はい」
ガレージの奥には、ソファや低いテーブルが置かれたくつろぎ用のスペースがあった。
そこに全員が自然と集まり、円になるように座る。
Jr.は工具箱の上に腰掛け、腕を組んだ。
「で、ギルドを作るって話だけどよ、決めるとこはちゃんと決めないとな」
ロッキーは目を瞬かせる。
「早いですね」
「こういうのは早い方がいいんだよ」
Jr.は指を3本立てた。
「ギルドハウスの場所、ギルドの名前、そしてギルドのリーダーであるマスターを誰にするか」
「マスター…」
ロッキーはその響きに少し緊張した。
ビアンカが顎に手を当てる。
「順当に行くなら、最年長のポポよね」
ポポはすぐに両手を振った。
「マスターってキャラじゃないヨ」
「似合わなくはないけど」
「俺は前に出て暴れる方が好きネ、書類や管理は嫌いヨ」
「…マスター候補、即落ちだな」
「じゃあターニャ?」
ターニャは少し考えてから、肩をすくめた。
「年齢はそうだけど、威厳が足りないわぁ」
「自分で言うのかよ」
「私はサポートするのは好きよ、でも前に立って導いたりするのは向いてないもの」
ターニャはバイオレットを見る。
「ヴィオはどう?強さで行くと一番でしょう?貫禄もあるわ」
ロッキーがふと顔を上げた。
「バイオレットさんって、強いんですか?」
その場が一瞬静かになった。
ソロが珍しく口元を緩める。
「バイオレットは君と同じメレーの優勝者だよ、6年前のね」
「同じ…」
ロッキーの目が丸くなる。
ターニャが待ってましたと言わんばかりに身を乗り出した。
「ヴィオは15歳で優勝したの!」
急に早口になる。
「当時はまだ今みたいに有名じゃなかったのに、ブロンズ連中を全部置き去りにして、最後の3人になった時なんてもう誰も追いつけなくてね、髪の色とその速さから“紫電”って呼ばれるようになったのよ、あれは本当に歴史的な試合で今でも切り抜きが回ってるし当時の実況なんて――」
「ターニャ」
バイオレットが静かに止める。
ターニャははっとした。
「ごめんなさい、つい」
「ガチ勢だな」
「事実を言っただけよ」
「ターニャはヴィオのファンでもあるネ」
「もちろん」
「認めるんだ」
ビアンカが笑った。
ターニャはロッキーを見て、嬉しそうに続ける。
「つまり、あなたは6年ぶりのルーキー優勝者ってわけ」
「そうなんだ…」
ロッキーはバイオレットを見る。
「すごい人なんですね、バイオレットさん」
バイオレットは少しだけ視線を逸らした。
「…ヴィオでいいわ」
ロッキーはぱっと顔を明るくする。
「いいんですか?」
「呼びにくいでしょう」
「じゃあ、ヴィオさん」
バイオレットは短く言った。
「ヴィオでいい」
「…ヴィオ」
ロッキーが少し照れたように呼ぶ。
その光景を見てターニャが小さく息を呑む。
「推しと推しの距離が縮まった…」
「んだそれ」
Jr.が呆れた。




