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Aster Crown 〜100勝するのが面倒で100人乱戦に出たら優勝して、最強の仲間ができました〜  作者: 辛子高菜


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第百三話 仲間



グレイの訓練は、確実に成果を出していた。


待て。

伏せ。

来い。

止まれ。

追え。

離れろ。


最初は遊びの延長で覚えていたグレイも、今ではロッキーの声をきちんと聞くようになった。

先日の依頼での害獣退治でもグレイは見事に役目を果たした。

それを見て最初に言い出したのはソロだった。


「グレイを俺の依頼にも同行させたい」


ラウンジでそう言われた時、ロッキーは目を丸くした。


「グレイを?」


「追跡系の依頼だ。匂いを追えるなら助かる」


グレイは足元で「わふ」と鳴いた。

まるで任せろと言っているみたいだった。

ロッキーは少し迷った。


「でも、俺なしで大丈夫かな」


ロッキーはグレイを見る。

グレイは期待に満ちた顔で尻尾を振っていた。

Jr.が横から言う。


「行かせてみりゃいいだろ」


「Jr.」


「いつまでもお前の後ろだけ歩かせてたら、できることも増えねぇよ」


「…でも」


「グレイはもう命令を聞ける。俺の言葉だって聞く。ソロも無茶させるタイプじゃねぇ」


ソロが短く頷く。


「無理はさせない」


ロッキーはしばらく考えたあと、グレイの前にしゃがんだ。


「グレイ、ソロと行ける?」


「わふっ」


返事は元気だった。


「ちゃんと言うこと聞くんだよ」


「わふ」


「危ないことしないでね」


「わふ」


「…じゃあ、ソロについていってね」




ーーーーーーーーーー




その日、グレイはソロと一緒に依頼へ出た。

内容は森の中で姿を消した荷運び用の小型魔獣の捜索だった。

グレイは地面に鼻を近づけ、匂いを追う。

ソロはその後ろを静かに歩いた。


「グレイ」


「わふ」


「ゆっくり」


グレイは速度を落とす。


「待て」


ぴたりと止まる。


「よし」


また進む。

やがて、茂みの奥で震えている小型魔獣を見つけた。

足に蔓が絡まって動けなくなっている。

グレイは近づきかけたが、ソロの声で止まった。


「待て」


グレイは伏せる。

ソロが蔓を切り、小型魔獣を助け出す。

依頼は無事完了した。

帰ってきたグレイは、どこか誇らしげだった。


「わふ!」


ロッキーのもとへ駆け寄る。


「おかえり! どうだった?」


ソロが短く言う。


「優秀だった」


ロッキーの顔がぱっと明るくなる。


「ほんと?」


「あぁ、匂いを追える。俺の命令も聞ける。助かった」


「グレイ、すごい!」


「わふっ」


グレイは胸を張った。

ソロは袋を差し出した。


「取り分だ」


「取り分?」


ロッキーが受け取ると、中には干し肉が入っていた。


「グレイの分」


グレイの耳がぴんと立つ。


「わふっ!」


「依頼報酬の一部として、依頼主がくれた」


ロッキーは思わず笑った。


「グレイ、報酬もらったんだ」


「わふ!」


ターニャが少し離れたところから微笑む。


「働いた報酬ね」


Jr.が言う。


「食わせすぎんなよ、最近よく食うんだから」


「成長期だからねぇ」


ロッキーは干し肉をひとつ取り出す。


「はいグレイ、初報酬」


グレイはお座りして待つ。

ロッキーが少し笑った。


「待て」


グレイはじっと見る。


「よし」


その瞬間、ぱくり。

グレイは大事そうに干し肉を噛んだ。

尻尾がぶんぶん揺れている。


「美味しい?」


「わふっ」


「よかったねぇ」


Jr.が腕を組みながら少しだけ口元を緩めた。


「投げ銭のおやつ代だけじゃなくて実際に稼ぐようになったな」




ーーーーーーーーーー




それからグレイは、少しずつ他のメンバーの依頼にも同行するようになった。

ビアンカの採取依頼では、危ない匂いのする場所を先に見つけた。


「こっちは魔獣の巣が近いわね」


「わふ」


「助かるわ、グレイ」


ビアンカは帰りに、報酬とは別に柔らかい干し肉を買ってくれた。


「これ、グレイの分ね」


「わふっ」


「ロッキーには内緒で…と言いたいところだけど、怒られるからちゃんと言うわ」


ポポの護衛依頼では、荷馬車の周りを歩きながら近づいてくる獣を低い唸り声で追い払った。


「おー、頼もしいネ」


「ぐるる…」


「賢いネ」


ポポは帰りに、肉の多めなご飯を買った。


「報酬ヨ」


グレイは完全に覚えた。


依頼に行く。

役に立つ。

帰る。

お肉がもらえる。

その流れを。


ロッキーが依頼に出かけようとするだけで、グレイは尻尾を振るようになった。


「グレイ、今日は違うよ俺だけ」


「わふ?」


「今日はお留守番」


「くぅ…」


しょんぼりする。

ロッキーは胸を押さえた。


「そんな顔しないで…」




ーーーーーーーーーー




ある日の夕方。

グレイはラウンジのソファで、自分の報酬袋を前に座っていた。


ソロからもらった干し肉。

ビアンカからもらったおやつ。

ポポが買ってきた肉。

ターニャが管理用に分けた健康的なフード。

ロッキーはそれを整理しながら言う。


「グレイすごいねぇ。いっぱい働いたねぇ」


「わふ」


「頑張ってるね、グレイ」


グレイは得意げに鼻を鳴らす。

ソロが言う。


「実際、助かっている」


ポポも頷く。


「グレイがいると依頼が楽になるネ」


ビアンカも続ける。


「危険察知も早いし追い込みも上手いわ」


Jr.は少しだけ間を置いてから言った。


「まぁ、鍛えた甲斐はあったな」


ロッキーは嬉しそうにグレイを見る。


「聞いた?褒められてるよ」


「わふ!」


グレイは胸を張った。

もう、ただ可愛いだけの子どもではない。

もちろん可愛い、そこは変わらない。

でも少しずつ強くなっている。

Aster Crownのみんなの依頼に同行し、役に立ち、報酬としてお肉をもらう。

ロッキーの相棒であり、Aster Crownの仲間。

そう呼べる存在にグレイはなり始めていた。




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