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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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93/107

93話

戦いは長時間続いた。

時間が経つに連れ、明らかに状況が悪くなっていくにも関わらず、猿帝は止まらなかった。

魔力切れを起こしているのか、回復もままならない。

それでも猿帝は何度も何度も攻撃を繰り返していた。

「おらぁあ!」

猿帝の不用意なパンチに合わせ、ミルズは盾でその拳を後方へ反らした。

そして自分もくるりと回転し、剣の腹で猿帝の顔面を強打した。

意識が途絶えたのか、ふと金の毛が元の茶色い体毛に戻った。

それでも猿帝の足は大地を踏みしめて耐え、返す拳を振りかざそうとしていた。

その瞬間をメイは見逃さない。

「もらったぁああ!!」

切れの落ちたパンチへと飛び込んでいき、そのまま腕を伝い猿帝のバックを取る。

そしてそのまま猿帝の喉の前で両足をフックし、猿帝の後頭部を両手で押し上げた。

「なんだ、その目茶苦茶なチョークは!」

「メイ式対デカブツ用リアネイキッドチョークだよ!」

グイグイと首の頸動脈を圧迫し、それと同時に喉元へのアタック。

完全なる思いつきだが、メイのセンスが猿帝を追い詰めていく。

猿帝は片膝を付き、メイの足を掴んで抵抗を試みる。

だが、残り少ない体力ではメイの技からは逃げることはできない。

メイを掴んでいた腕がダラリと下がり、猿帝は沈み込むように前のめりになって座り込んでいた。

「よし、一本!」

猿帝の巨体は完全に弛緩している。

そしてメイは技を解除し、拳を天に突き出した。

猿帝の意識は完全に絶たれていたのだった。

「おおお!」

「猿帝を倒したのか?!」

周囲から歓声が聞こえる。

日出国の兵士たちが倒れ伏せる猿帝を見て沸き立つ。

「日巫女様、今こそ封印を!」

「お願いします!」

猿帝の暴虐は日出国の民に書物や伝記、口伝などを通して広く知られていた。

その暴君の力を見て兵士たちは恐れを抱いていた。

だが、それを超える者たちによって倒されたと解ると、狂ったように封印するように日巫女に懇願した。

日巫女自身もその熱に押され、ミルズたちの前へと進み出ようとしていた。

だが、その熱狂を一陣の風が薙ぎ払った。

日巫女の目の前には、深く抉りこむような谷ができていたのだ。

目の前の突然の変化に日巫女は恐怖し、後ずさる。

「な、何をするのじゃ!」

「ピーピーとうるさいのぅ」

レティが構えた杖を降ろす。

レティの風魔法によって生み出された大溝は、日出国の民を拒絶するかのようだ。

猿帝の身体はローザの魔法で優しく慈愛に満ちた光で包まれている。

ミルズは猿帝の足を上げて血流を脳へと戻していた。

「何をしているのじゃ!」

「のじゃのじゃうるさいのぅ。ワシと被っとるんじゃから黙っておれ」

やがて猿帝は目を覚ました。

そしてミルズたちを見回すと納得したかのように頷いた。

「ふぅ、儂の負けじゃな」

「おぅ、俺たちの勝ちだ!」

「ならば殺すなり封じるなり好きにするがいい」

「潔し! 男前!」

メイの言葉に苦笑しながら、その目を閉じる猿帝。

メイはその閉じた瞳を無理やりこじ開けて覗き込む。

「やめろ、何するんじゃ!」

「何してもいいって言った!」

「おぬし、頭がおかしいのか?」

ミルズたちと共に猿帝は笑った。

遠い遠い昔、こんな風に笑っていたことがあった。

猿帝はそんなことを思い出していた。

「うむ、良い目をしておる。邪気の無い良い目じゃ!」

「お前まで語尾に『じゃ』をつけるな。まぁ、メイの言葉じゃねぇけどよ、お前が邪悪な存在じゃないことぐらいわかるよ」

「おぬしも馬鹿なのか?」

「一応お前の話は聞いたけどさ、無駄に暴れたり人を害するようなヤツでもないだろ、お前」

「……」

「好きにしていいって言うなら、このあと好きにしろよ。封印なんてさせねぇ。そんなことしようとするヤツがいたら……俺たちが大暴れするかもしれねぇなぁ」

ミルズはチラリと日巫女とその後の軍勢に目を向ける。

その言葉に彼らはどよめく。

人を超える力を持つミルズたちの力を眼の前で見せつけられたのだ。

それを自分たちに向けられると思うと、日巫女たちには口を開くことはできなかった。

「だがなぁ、人間……もはや俺には何もないんだよ。仲間も愛する家族も、誰もおらん」

「まぁ、けど今更殺す気にもなんねぇし、そこは負けたんだから黙って従えよ。ほら、あそこにいる猿も頷いてるぜ?」

ミルズの視線の先へと猿帝は身を向ける。

そこには猿帝を見つめる一匹の猿がいた。

「お、おぉ……」

猿帝の大きな肩が小さく震える。

猿帝は両手で目を覆った。

「生きて……生きておったか……」

一匹の猿に走り寄り、寄り添う猿が現れる。

すると何処にいたのか、たくさんの猿たちが集まり猿帝を囲っていた。

「あぁ……あぁああ」

猿帝の瞳から大粒の涙が溢れる。

猿帝は誰にはばかることもなく、大声を上げてわんわんと泣いたのだった。





考えたんですが、今さら読んでくれる方が増えるわけでもないのに書いたものをストックして更新を遅らせる意味は無いなと思いました。

これからは毎週何曜日とか気にせずに書いたらアップしていきます。

この物語を読んでくださってくれている方、ありがとうございます。

あと少し続くのでこれからもお付き合い下さい。

よろしくお願いします。

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