表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

92/111

92話

パチパチと爆ぜる音が聞こえる。

もはや周囲は火に囲まれ、美しかった猿の国の緑は灰と化していた。

「親父ー駄目だ! もうどうにもならねぇよ!」

「諦めるんじゃねぇ! なんとか生き延びろ!」

猿たちの悲壮な声が響き渡る。

既に国は人間の軍勢に囲まれている。

槍衾と炎に包まれた猿たちは、逃げ惑う他なかった。

猿帝一人ならなんとでもなる。

だが、そんなことは問題にすらならない。

猿帝以外の猿たちが焼けて死ぬか、槍に貫かれて死ぬか、そのどちらかしかなかった。

猿帝の力を持ってしても、猿の国に住む猿たち全てを救うことなどできないのだ。

熱で歪む景色にあの日の瞳が重なる。

復讐の炎で輝きを失ったあの目は、この日をずっと待ち望んでいたのだ。

一匹、また一匹と仲間の猿たちが死んでいく。

「儂はどこで間違ったのか……」

猿帝の声は、誰にも、どこにも届かない。

「なぜ……」

自分の大切なものが、灰となってその手から零れ落ちていく。猿帝はそれを呆然と眺めていた。


炎が全てを奪ったあと、猿帝は一人、焼けた岩の上に座っていた。

身を焼く熱も、爛れた匂いも、全てどうでもよかった。

目の前に近付く一人の人物だけを、猿帝の瞳は見つめていた。

「これが大事なものを失った痛みです」

日那が言う。

淡々と、何かを読み上げるように。

「やっと曾祖父様にも教えてあげられたわ」

日那は猿帝の顔を両手で掴み、その目を覗き込むように顔を近付けた。

日那の顔は暗い激情に歪みきっていた。

猿帝の知る激しくも真っ直ぐな瞳を持つ、気持ちの良い女の子は、どこにもいない。

「ですが、まだまだです。まだ足りません。曾祖父様はこれからこの岩に封印され、未来永劫このことを悔やみながら生き続けるのです」

掴んでいた手を放し、狂ったように踊る日那。

猿帝はその姿を見つめていた。

そして、何一つ抵抗することもなく、そのまま猿帝は封印されたのだった。

その後、猿の国は歴史から消えた。

豊かな鉱脈は日那の手に渡り、天津国は日出国へと名を変える。

後の世に残された記録はこう語る。

――暴虐なる猿帝を、偉大なる日巫女が封印したのだと。

その歴史を訂正する者は、もう誰もいなかった。



――

「うがぁぁああああ」

猿帝の咆哮と共にミルズは回避行動を取る。

空気を切り裂く甲高い音を立てながら氷の刃が迫っていた。

それをミルズは落ち着いて盾で防ぎ、剣で薙ぎ払う。

「おぉ! 大猿の攻撃と言えば口からビームだね、イカス!」

「氷の塊がめっちゃ飛んできてるけど、お前の目は大丈夫か?」

「氷? あれはビーム! 子供の夢は壊しちゃいけない!」

「いい加減大人になりな? 小学生ならいいよ? あなたもう高校生でしょ?」

「父ちゃんだって現役の時ですら必殺技の練習してたじゃんかさ!」

「何故それを?!」

「零式? ただの縦肘が? この少年ハートめ!」

「心のレバーを叩くのはやめろ!」

そんなことを言っている間にも、猿帝の猛攻は続く。

レティの魔法を掻い潜り、ニナの攻撃を躱し、猿帝は何故かミルズ一人を徹底的に攻撃していた。

猿帝の体術も魔法も、その全てを躱し、防御し、反撃する。

味方の援護射撃があるとはいえ、ミルズは目の前の暴君と一人互角に渡り合っていた。

「うぉおお、盾役としてはそれで良いんだが、コイツ俺しか狙わねぇ!」

「前世で猿に悪いことをしたに違いない! きっと子供の夢を潰したとか、そういう類の!」

「マヂか……ゴメンな、ジョージ……」

「全ての猿の名前をジョージにするのはよくない!」

「おぬしら、まじめに戦わんか!」

レズンの突っ込みと猿帝の攻撃はなおも続く。

ミルズは喉元を正確に狙う棍を体を反らして躱す。

そこから繰り出された横薙ぎの攻撃も肩で攻撃方向を反らす。

ミルズを捉えきれないと悟ると、猿帝はタックルに切り替える。

だが足を後方に出し、猿帝の肩に体重を乗せてタックルを切り、ミルズは猿帝の首を抱えてそのままぶん投げた。

「おらよ! これがまじめに戦ってないように見えるのかよ!」

「ほんと、どこ見てんだ! まじめにやれ!」

メイはそう叫びながら大地を蹴る。

宙に投げられた猿帝にあっという間に接近する。

体を十分に捻り、勢いをつけたオーバーヘッドキックで猿帝を地面へと叩きつける。

「ほれほれ、隙だらけじゃぞ!」

そこを見逃さずレティは追撃の魔法を打ち込んでいった。

砕ける岩盤と土煙でその姿は霞むが、赤い飛沫が飛び散っている。

猿帝が動くその軌跡を鮮血が描いていく。

それは傷が浅いものではないとミルズたちに伝えていた。

回避行動を取りながらも即座に回復を試みる猿帝にレズンとニナが接近していた。

「ふむ、回復魔法が苦手のようだな」

「少し遅いよ! それじゃ僕からは逃げられない!」

レズンの爪とニナのナイフが猿帝の前腕と脇腹を切り裂いた。

レズンはわざと大きな一撃で猿帝のガードを誘い、開いたガードの下をニナが駆け抜けたのだ。

「ぐぬぅ」

苦悶の表情を浮かべながらも、氷弾を広範囲にばら撒き、猿帝はさらなる追撃を阻止した。


少しストックができたので今週は木曜日にもアップします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ