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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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87話

この話でストック切れになります。

以後不定期になりますので悪しからず。

周囲は山。

木々に囲まれたここもそうだったらしい。

今やカルデラのようにへこんだ平地はかつての戦いの凄さを感じさせるには十分だ。

ここら一帯だけ荒れた岩場しか存在せず、緑の類どころか生き物すら見当たらない。

それが二千年以上続いているってんだから、中々スケールの大きな話だ。

その猿、塩でも撒いてんのかな。

問題の猿帝さん。

口伝で伝わる情報と残った資料を見るに、そりゃもう大暴れだったらしい。

かつて、日出る国がまだ国を統一しておらず、まだまだ群雄割拠の時代、今の日出る国の首都にあたる場所に猿帝は自分たち猿の国を作った。

交通の要所、肥沃な大地、豊かな水資源、誰もが欲しがるその土地を占有し栄華を誇った。色々な国々がその地を求め、攻め込んでは撃退されていたそうな。

金の毛に赤い棍棒、鋭い目つき、筋骨隆々マッチョな猿帝はその圧倒的な武力で領地を広げ、子分の猿たちは略奪、暴行などの暴虐を尽くし、人々は暮らしに困り果てていた。

その時に現れたのは七人の侍と呼ばれる英雄たち。

胡散臭いったりゃありゃしない。

彼らが力を合わせて猿帝を封印したんだと。

その中の一人が日巫女様の先祖らしい。

さて、目の前には、くぼんだ平地の中心にポツリと建てられた神殿がある。

大きくはない。だが、神聖な力を感じるあたり猿の封印において重要な役割を担っているんだろう。

そこに俺たちはいた。

「このしめ縄を切るとポップするんだとよ」

日巫女から受け取った刀を鞘から抜き放つ。

その刀身は凛と空気を震わせている。

本当かどうか知らんけど、これでしか切れないらしい。

「ポップて!ゲームじゃないんだから!」

「昔、レティと一緒にレアモンスターをポップさせるためのアイテムとか拾いにいったなぁ」

「懐かしいの。まわりのやつらと取り合いになって揉めたことすらも今は昔じゃな」

「あったあった」

「独占しすぎて嫌われたもんじゃ」

「もう、そんなこと言ってる場合じゃないよ!」

「準備しますよ?」

そう言ってバフをかけていくローザ。

遭遇戦でもないから、ゆっくりと下準備してから戦いに臨めるのは楽でいい。

ケラケラと笑いながら準備をしている俺たちには無数の視線が突き刺さっている。

平地の端には日出る国の軍団が殺気立ちながら構え、俺たちに注目している。

もし俺たちが失敗した時に命を賭けて戦うことになるから当然っちゃ当然なんだが……

そして、その中には日巫女の姿もある。

飄々としていた彼女だったけど、さすがに今は緊張しているらしい。

猿帝の封印は彼女の仕事だからな。

封印できるほどに弱らせてほしいという話だけど、俺は猿帝を倒すつもりでいた。

さすがにシリウスより強いとは思えないし、ここで躓くようだと先が思いやられる。

新装備の俺たちの力がどんなものか、試すにはうってつけの相手だと思うんだ。

「じゃあ、行くぜ?」

全ての準備が整った。

俺は日巫女様から預かった刀を上段に構え、スッと振り下ろした。

その瞬間、空から雷撃が神殿に振り注いだ。ドンッと大きな音を立て爆発し、かつて神殿だったものが飛散する。

モクモクと立ち込める煙の中から現れたのは、巨大な猿。

つっても、レズンのような規格外のものではない。

あくまで猿としてはデカいという範囲のもの。

マッチョなちょいワル系のイケオジ猿が赤い棒を小脇に抱えてダルそうに立っていた。

ただその視線は日巫女様を捉えていて、淀んだ瞳は暗いものを内包していた。

「あぁ、久しぶりの娑婆だ。薄暗い空間よりよほど良い」

言葉とは裏腹に太陽の光を恨めしそうに睨みつけて懐から煙管を取り出した。

そこらの岩場に腰掛けてすぱーすぱーと煙を吐き出す。

夜明けの珈琲と煙草のように、気怠そうに、美味そうに何度も煙管へと口をつけた。

チラリと俺たちを見る。

武器を構えて目の前に立ってるんだから、友好的ではないことは理解できるだろう。

猿帝は面倒臭そうに深いため息をつく。

「おぬしら、また儂を封印しようとしておるのか」

「ん、あぁ。そういう依頼なんでな」

「そうか……まぁ、儂としても折角娑婆に出たのにすぐに封印されちゃたまらん。抗うことになるが?」

「じゃろうな」

「こんなところにずっと閉じ込められていた怨みもはらしたいところだ。本人には怨みはないが、こっちを遠目に見ている人間にアイツとの繋がりは感じる。八つ当たりだが、折角だ。付き合ってもらうことになる」

槍を構えた兵たちの中、互いに視線を交差させる猿帝と日巫女様。

「まぁ、そうさせないために俺たちがいるんだが」

「わかってるわかってる。だが、もう少しだけ待てよ」

新たな草を煙管にセットして、火をつける猿帝。

緩い感じだが、感じられる圧力は今までに感じたことのないほど。

ピリピリとした空気が痛いほどだ。

ぽんと煙管から灰を落とし、立ち上がる。

「相変わらず人は闘いが好きだのぅ。争うことなく、平和に生きることはできんのか?」

「まぁ、何年か何十年かの平和のために争うのが人間だからなぁ」

「仕方のないやつらだな……では、始めるとするか。久しぶりの戦いなんでな、加減もできんぞ? 全霊を尽くせよ」

「おぅ。俺もお前に恨みなんてないけど……全力でいかせてもらう」

上段に構えた棍を正眼へ、腰を低く落とし、もう片方の手を前に出した。

大きな動作だが、その動きに無駄はなく、ただ静かに、俺たちを見据えていた。

突き出した手でクイっと手招きをする。

準備ができたらしい。

「いくぞ!」

裂帛の気合と共に俺たちの戦いが始まった。


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