64話
「む、なんじゃ? 馴れ馴れしいトカゲじゃの。」
「僕だよ、僕! レズンだよ!」
「んん〜なんか聞いた覚えがあるようなないような……」
「じゃあ、ここみて、ほら!」
威厳たっぷりの超巨大古龍がまるで子供のような口調になり、ケツの穴を見せつけてくる気持ちを誰か説明してくれないか?
どういう性癖してんだ、この龍。
こんな時、どんな顔をしたらいいか分からないの……
「なんじゃ、汚いもんみせおって……ん? この傷跡……」
「思い出した? レティちゃんが杖で突き刺して穴が2つになったって笑ってた!」
「おぉ! あの時のチビ助か!」
確かに、ケツの穴の上に傷跡があるのが見て取れる。
杖で突き刺したって、なんぞ?
どういう理由で杖を突き刺したんだよ……
「違うぞ? いや、違うくはないんじゃが…… コケた先にコヤツのケツがあってそこにこれが刺さってしもうたんじゃ!」
全員から白い目で見られて流石のレティも焦って言い訳を並べる。
レティの杖の先にある尖った魔石に注目が集まる。
いやはや、ホールインワンしなくて良かったな。
出すとこであって入れるとこじゃないからな!
「それでもワシの城をこんなにした罪は重いぞ! 今度はその穴、3つにしてやるから降りてくるがよい!」
「ちょっと待ってよ! 僕がやったんじゃないよ!」
登場時の威厳は2つ目の穴にしまい込んでしまったらしい、古龍はガクブル震えながら言い訳をしている。
「まぁ、立ち話もなんだし、座って話さないか?」
長い話になりそうだし、ニナの意見に同意して椅子と机を作ってお茶を入れよう。
ガルガル威嚇しているレティをなだめて一式を用意してもらう。
無駄に凝ったテーブルと椅子に腰掛け話をしようとするが、古龍の身体がデカすぎて紅く光った壁にしか見えねぇ。
「チビ助、デカすぎてどこを見て話せばえぇのかわからん。 龍には人化する魔法があったじゃろ、それを使え」
「えぇ〜 せっかく大きくなった僕の姿をレティちゃんに見せられるのに〜」
「うるさいのぅ」
そう言って古龍に杖の先を向けるレティ。
ヒィっと言って背中を伸ばし姿勢を正す古龍。
どういう力関係なんだよ……
ピカっと光ったと思えば、古龍の姿は見る見る間に縮んでいく。
2メートル程の優しそうな二十代ぐらいの男性が俺たちの前に現れる。
どうなったらこうなるんだよ。
「なんでワシがチビ助を見上げんといかんのじゃ、もちっと小さくならんか」
そう言われてさらに小さくなる古龍。
ショタ古龍の誕生の瞬間である。
「あらあら」
「まぁまぁ」
ローザとニナの瞳が輝く。
愛らしい少年のような見た目となった古龍に母性をくすぐられたらしい。
まぁ、確かに半ズボンとか履かせてやりたい見た目だけど。
こっちにいらっしゃいと自分の太もものあたりをパンパンと叩くローザ。
その上にちょっと困った顔で恥ずかしそうに古龍、いや、レズン少年が座る。
「クッキーでも食べるかい?」
ニナが微笑みながらレズン君に御手製のクッキーを手渡す。
ハニカミながらポリポリと食べる小動物のようなレズン君に二人は優しげな視線を送る。
なんだ、これ。
もとは超巨大生物だぞ?
見た目に左右されすぎだろ!
少しながら俺の感情の波が荒くなっていたところ、レティが俺の膝の上に座る。
いつもなら頭を叩いて隣に座らせる流れだが、レズン少年が羨ましそうにこちらを見ているのでそのままにしておいた。
ふふん。
自慢気にレティの頭をナデナデする。
そんなことまで?!という驚きの顔を浮かべるレズン少年に向かって俺は勝者の笑みを浮かべる。
そんな俺に対してローザとニナが実に深いため息をつく。
「ミルズは大人げないね」
「そうですね、もう少し余裕を持っていただきたいものです」
ぐぬぬ。
勝利者の立場から一転、これは状況不利だ。
ならば、話題を反らす!
「で、壊れた城を巣にしてたのはなんで?」
「小僧、我に対してその物言い、万事に値するぞ」
「いやいや、今さらそのキャラは無理がある。 何顔を赤くしてローザに包まれてんだよ!」
「ぐぬぬ」
古龍レズン少年も立ち位置が悪い。
二人して微妙な顔を浮かべた後、お互いに歩み寄るという選択を取った。
「で、壊れた城を巣にしてたのはなんで?」
「それは……ここにいれば誰か戻ってきてくれると信じてな、待っておった。 ここはワシらの大事な場所であったからな」
当時の気持ちが呼び起こされたのだろう。
少し遠い目を浮かべるレズン少年。
「城を壊したのは?」
「ワシのオヤジとレティちゃんを倒した帝国の王だ」
「む? ワシ、そやつはちゃんと殺ったぞ?」
「それ! レティちゃん、そこからずっと帝国のヤツと闘ってたでしょ」
「まぁ、世界を敵に回してたからのぅ。 特に帝国のヤツとはようやりあっとった。」
「それ、全員同一人物」
「ほぇ?」
「どういうことなんだい?」
「魂を司る神の秘術、転生の秘術を使ったのだ」
当時、レティは本当に世界と戦っていたらしい。
かつての帝国や他の国々、そしてこの世界にいた神々さえも。
それほどの存在だったらしく、すべてを敵に回して大立ち回りを演じていたそうな。
その中で唯一、レティと対抗出来る存在が帝国の王だと言われていた。
しかし、その才気あふれる王を以てしてもレティには敵わないのはわかっていたらしい。
その魂を司る神とやらが、王が敗北したら魂を引き継がせ別の入れ物に乗り移させる。
そして、またレティとの戦いに挑む。
そうやってレティの戦術、癖や考え方などをずっと学び続けた。
ありとあらゆる対策を用意して繰り返し、やがてレティも為す術が無くなっていき、その王に敗れてしまったんだと。
「なるほどのぅ。 あのガキンチョがやたらとワシの戦い方に対応してきたのはそういうことじゃったか」
「所謂死に覚えゲーやられてたわけか。 普通なら一回で終わりなのに、何回もチャレンジされていずれってことか」
こんなところでレティの敗北の理由を知ることになるとは、思いもよらなんだわ。




