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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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57話

共和国軍大将マーカス・フィリオは苦虫を噛み潰したような表情で大統領の前に歩み寄った。

以前から計画していた反乱分子の誅殺と演習を兼ねたものが大きく崩れ去った。


これほどの戦力が共和国に存在するとは聞いていない。

ならば答えは一つ…… 帝国だ。


このまま数で押していけば、いずれ魔力が尽きて彼を倒すことが出来るだろう。

だが大統領以下、政治的にも軍事的にも大きな影響力を持つ彼らがいる中で無駄なリスクは極力下げたい。


「大統領、思わぬアクシデントのようです。 危険ですからここは退避なされるが良いでしょう。」


初めは生意気な反逆者を一掃出来る様を観ることに嗜虐心を燻ぶられ上機嫌な彼らが自らの命の危険が迫りくるのを感じたのか、普段の高圧的な言動もなく素直に従った。


それほどに自分達の目の前に魔導兵装の頭部が転がってきたことに恐怖を覚えたのだろう。


顔を引きつらせながら早足で進む中、大統領は機嫌の悪さを隠すことなくフィリオを怒鳴りつける。


「あの小僧はどうなるのだ! 今までの不遜を許してやったのは今日があってのことだ。 それがなんだこれは!」

「彼らの居場所はもはや共和国の何処にもありません。 羽虫の一匹や二匹、身の回りで飛び回らなければご不快に感じることもないでしょう。」

「ふん、まぁいい。 どうせ逃げる先は帝国だ。 いずれこの手で奴を処刑してやる。」


こちらに視線を合わせることなく進む大統領から離れ、フィリオは指示を出す。

政府の上層部が安全に退避できるように陣形を変える。


どういった技術か不明だがジルベロから彼らがテレポート魔法を使えると報告があった。

おそらく逃げる算段もついているのだろう。

追い詰めた鼠に指を噛まれたことは遺憾だが、わざわざ鼠が逃げ込んだ狭い穴にもう一度指を突っ込む気にはなれない。


本当の戦いは国境線に布陣する帝国軍とのものなのだから。


――

共和国軍からの圧力が弱い。

一定の距離を保ち、遠距離からの攻撃主体に切り替わっているな。

それなら別に構わない。

逃げられるチャンスは拾わせてもらう。


こちらも向こうに合わせて引いて、ティアーゴたちの防衛に専念しよう。


「よく頑張ったのぅ。 そなたら褒めて使わす。」

しばらくの後、レティから魔法の構築が終わったことを告げられる。

ならばこんなところに長居する必要はない、さっさとケツまくって逃げ出すとしよう。


「レティ、頼む。」

レティはこくりと頷く。

周囲にむける表情とは別の顔を俺に見せる。

その信頼に応えられたことが少しだけ……誇らしかった。


俺たちを囲む魔法陣がより強く光り出す。

視界が白に包まれ、再び景色を映し出すまでほとんど間はなかった。


ギアーデ高原の宿場町、ゲートクリスタルの間。

そこに現れた一団に周囲は騒然となった。


そりゃそうだ。

一度にテレポートしてくるには大人数過ぎる。

タイミングが嚙み合って10人程度なら有り得るが、その倍はいるからな。


そして周りを見渡すに、この場は今、帝国軍の拠点として接収されているようだ。

そこへ許可もなく正体不明の一団、それも共和国と思われる軍人が現れたのだ。


現場指揮官の怒号が飛び交い、すぐさま俺たちは囲まれてすっかり槍衾の中だ。


一触即発の空気の中、運が良かったのはそこは第5騎士団の駐屯地だったということだ。


見知った顔がいることに気付いて、とりなしてもらうのにそう時間はかからなかった。


団長のフェイのもとへ案内される。

「お前ら、何してんだこんなとこで。」

「何してるも何も、あんたらの依頼でこうなったんだよ。」

フェイの指示で人払いされ、事の顛末の説明を求められる。

シリウスの命令で共和国に潜入していたこと、それ自体が罠だったこと、そこから逃げ出すのにレティの魔法を使ったこと。


レティが実はテレポート魔法を国の管理から外れて使用できることがフェイにバレてしまったが仕方なかった。


それよりも重大なことを告げることでこの場を有耶無耶にする。

「それよりも第一陣はどこに布陣している? それ自体が罠で引き込まれているぞ!」

「あからさまに話題の矛先を変えてきたな。 だが、確かにそんなことを言ってる場合じゃねぇな。 よし、わかった。 至急増援に向かうぞ。」

フェイが部下を呼び寄せ、進軍が始まる。


フェイたちの第二陣と後詰めの第三陣が動き出す。

そのあまりの数に鼻白む。


ガチの戦争だ。

アニメや漫画でしか見たことのない景色が広がっている。

どれほどの数がいるかなんてさっぱりわからない。


だが、その渦中に自分たちがいることだけははっきりとわかる。

俺の思い描く異世界の暮らしとは大きくかけ離れてしまった……


フェイからはここで治療を受けて帝国へ戻るように指示されていた。

だが俺は素直に帰る気になれず、レティに頼み込んで軍に紛れてついて行った。


「場合によっちゃ俺たちもこれに強制参加だ。 出来れば情報を集めておきたい。」

「そうじゃのぅ。 まぁ、ワシとヌシじゃったらどんな困難にも打ち勝てるがな、カカカ。」


皆にはそのまま帰ってもらった。

ローザたちやティアーゴの部隊も消耗が激しい。

彼らの今後もあるし、今は帝国に預けるのが良いだろう。


戦争なんて他人事で机の上やテレビの中のものだった。

それがもはや目の前に迫っている事実に俺の歩みは重たいものにならざるを得なかった。



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