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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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56話

「呆れるわ、自殺志願者なのかしら……」


エルフリーデはミルズの指示のまま、敵兵に精神作用のある魔法をかけ続けていた。


彼女はミルズとアクセルを優先的に攻撃するという精神的な指向を敵集団へと放つ。


光に群がる虫のように2人のもとへ敵機が引き寄せられていくのだ。


しかし、それでも流れ弾や精神魔法をレジストした敵機が向かってくる。

それらをメイが迎え撃ちローザが回復する。


さらにティアーゴの的確な指示はこの劣勢においてもこの集団を戦力として成立させていた。


しかし、あの2人に向けられる敵意はその比ではない。

血とオイルに塗れ、剣撃と銃弾の飛び交う戦場で獣の様なうめき声をあげて戦う彼らはもはや人と呼べるものか定かではない。


身を削り、藻掻くように暴れる二人へ、無尽蔵の殺意が次々と降り注ぐ。


彼らに比べティアーゴの部隊は優秀ではあったが、人外と思えるような力は持たない。


一人、また一人と倒れていく兵士をローザの回復魔法が支えるが、それはミルズとアクセルに魔法をかける機会を失わせていた。


2分を過ぎたあたりですでに限界が見え始めていた。

奮闘を続けるアクセルの動きが悪くなっていたのだ。


魔力が枯渇し始め自己回復にまわす余力がなくなってきている。

「身体が重い……」

波のように押し寄せる敵を倒しながらアクセルは視界にミルズをとらえる。


自分とは違い、まだ余裕があるように見える……

ミルズは戦況全体を見回して、各個に指示を出しながら戦っているのだ。


「クソ……」

次期団長と持て囃され、その能力を磨き続けた。

騎士団の中で指折りの実力は任務で裏切ることはなく、その全てを成功させてきた。


アクセルにとってそれはあらゆる困難に打ち勝てるという自信になっていた。


それが……


不意に横っ腹に衝撃が走り、アクセルは吹き飛ばされる。

しまったと思った時にはすでに遅く、眼の前にはギラリと光を反射した刃がその身に迫っていた。


ここまでかと覚悟を決めたアクセルの視界はぐるりとまわり宙に浮かぶ。

首を切られるとこんな風になるんだな、などとそんなことを考えていた。


しかし、その数巡後、地面が身体を叩き、自分が防御陣の中にいることをアクセルは認識した。


「エルフリーデ! ニナ! アクセルを頼む!」

ミルズの叫び声が聞こえる。

隣では二人が自分の傷と魔力の回復を懸命に行っていた。


「助かったのか……」

アクセルの口から安堵の言葉がこぼれ落ちた。

恐怖と疲労で震える手を抱きかかえ、一息つく。


そんな彼の口にエルフリーデは出来る早く戦線復帰させるべくマナポーションを突っ込む。


「まだ助かってないわ。 絶体絶命の状況に変わりはないもの。」

自身の魔力も枯渇し、意識を失いそうになりながらも、指示を全うしようとエルフリーデは額に汗を浮かべながら治療を続ける。


「今度はミルズを助けてあげて。」

ニナもそうだ。

ここにいる全員が死力を尽くしている。


アクセルは己の心の隙を恥じ、その上で意識を切り替えた。

この場では自分の力も必要とされている。

ならばそれに答えなければと、今は全力で回復に努める。

それが今、自分に与えられたことなのだから。



メイは戦場を駆けていた。


アクセルが抜けたことでミルズの負担が倍増することは明らかだ。

だが、彼女は与えられた戦場で彼女の戦いを続けていた。

本当は今すぐにでも父の元へ駆けつけ、助けに行きたかった。

だが、この戦いの前にメイは父を信じろと言われていた。


その言葉だけを信じ、彼女は戦う。

後で皆と笑い合っていることを信じて。


一方でミルズは全く別のことを考えていた。


敵軍の集中砲火ですでに満身創痍だが、今までに感じたことのないほどにその精神は研ぎ澄まされていた。


残り少ない魔力をどう配分するべきか、襲い来る敵機をどう処理していくか、全ての最適解を最短で導き出していく。


きっかけはシリウスのただ一つのアドバイス。

その雫が彼の中で波紋のように広がり、意識を広げていく。


身体とは腕や足だけではない。

五感や脳も自分を構成する全てなのだ。


「はは、世界が広がっていく……」

ミルズは一人呟く。


窮地の中で鋭く削り出された感覚は、最初は無意識に。

次に自覚的に己の魔力を使うことで、彼の能力は覚醒していく。


「何なんだ、アイツは……」

これ以上溶け込む要素のない砲火の中をまるで未来が見えているかのように回避するミルズに敵軍は何か悪夢のようなものを見ているような錯覚に陥る。


血とオイルが飛沫をあげ、切り裂かれた魔導兵装がふわりと宙を舞う。

そして地面に叩きつけられた低く鈍い音だけが、それらの質量を伝えていた。


「死神、なのか……?」

およそ現実感の無い光景の中、共和国軍の部隊長はそう呟き、その後すぐにそれらの一部に加わっていた。


戦場を支配しているのは、圧倒的大軍の共和国軍でもなく、たった1人の男だった。


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