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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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30話

メイとニナが幾度となく攻撃を仕掛ける。

その度にゴーレムとセリアス、ラセルナの魔法に行く手を阻まれる。


「このアイアンジャックはウィンダミアの魔道人形の中でも最高の防御力を誇ります。 簡単に倒せるなどと思わないことですね!」

ラセルナの言う通り、アイアンジャックという名のゴーレムはメイやニナの物理攻撃だけでなく、レティの魔法すらも効果が薄い。

機動力に欠けるのは明確な弱点だが、セリアスの魔法がその弱点を上手くフォローしている。

さらにこの魔道人形は、ラセルナの回復魔法を受け付ける。

ダメージを与えても回復していくのだ。

ここで時間をかけてしまってはミルズへの負担が大きくなる。


「そんなにゆっくりしていていいのか? ジョウジョカがあの男を殺してしまうぞ?」

このまま時間を稼げばジョウジョカがあの剣士を倒し戻ってくる。

セリアスとラセルナはそれを待てば良いのだ。

実のところ、ゴーレムの操作には魔力が必要だ。 

ニ体のゴーレムをより長く動かすために、威力を抑えた牽制しかしていない。

回復は消費魔力を抑える代わりに時間をかけて治療するリジェネーションを使っている。

それに気付かれないように、ジョウジョカが戻る時間を稼ぐために2人は巧みに立ち回っていた。

「あの男は無事かな? もう死んでしまったかもしれないな……ククク……」

セリアスはまるで彼女たちの不安を楽しむかのように笑う。 

「とうちゃん……大丈夫だよね……」

その言葉に動揺し精彩を欠くメイ。

焦りが無駄な動きを誘発し、連携に淀みを生じさせる。

「娘っ子、落ち着け! ヌシの父を信じるのじゃ!」

「でも……」

メイも強くなってきたが、その精神はやはり子どものままだ。

父の危機に心が揺れ、集中力が切れていた。

レティはちらりとニナを見る。

散らばった魔力はすでに彼女のスキルによって大魔法を行使できる程に集められている。

しかし、今の自分ではあのゴーレムニ体を同時に倒すほどの威力は出せない。

それなら一体だけでも倒して、残りを全員で倒すか?

しかし、大魔法を打てば自分の魔力が枯渇してしまう。

それでは一体倒したところで状況はあまり変わらない。

ゴーレムを喚ばれた時点で計画は狂ってしまった。

ここで彼らが何をしているかはわからないが、大したものはないはず。

ならば……別段逃げてしまっても構わないだろう。 

そう考えていたレティは、玉座の前に見覚えのある杖を抱く石像をその視界にとらえる。

その男の頭には見覚えのある角が……

「ヨ……シュア……?」

レティは戦いの最中に気を取られてしまった。

それは致命的な隙だった。

「レティ!」

メイの叫び声と同時に全身を撃ち抜くような衝撃が走った。

 

「うぐぅううあああ」

ゴーレムの渾身の一撃がレティを捉える。

全くの無防備な状態で受け、吹き飛ばされたレティの身体は柱を砕き、地面に転がっていく。

「レティイイイ!」

戦闘面において父よりも強く、絶対的な信頼を寄せているレティが意識を失い倒れている。

頭から血を流し、ピクリとも動かないのだ。

父の生死もわからない、頼りにしているレティは倒れてしまった。

目の前の事実を受け止められずメイは頭を抱えてその場に膝をついた。

彼女はこの世界に来て初めて冒険者という職業が死と隣り合わせだという事実に気付いたのだった。


ゴオッ……と唸るような機械音が近付いてくる。


メイの前へ、大地を砕くような一歩を踏みしめるゴーレムが迫る。

見上げるとその巨体が、軋む音とともにゆっくりと腕を振り上げていた。

まるで、時間がスローモーションになったようだった。  

視界が狭まり、音が消えていく。

ただ、目前のその腕――質量と殺意を込めたこん棒だけをメイは見つめていた。


逃げなきゃ。 動かなきゃ。


頭のどこかでは理解しているのに、足は一歩も動かない。 喉が張り付いたように声も出ない。


恐怖が全身を縛りつけていた。


ゴーレムのこん棒が無慈悲に振り下ろされる。

空気が震える。  

大気が押しつぶされ、踏み抜いた石床が砕ける。


――死ぬ。


そう確信した瞬間、メイの瞳に浮かんだのは、幼い頃に見た父の背中だった。  

どんなに無様でも、どんなにボロボロでも、絶対に折れなかったあの背中だった。


鈍い音がメイの鼓膜を揺らす。

振り下ろされた暴力はメイに届くことなく、彼女の前に立つものによって防がれる。 


「おいおい、ウチの大事な娘に何してくれてんだよ?」

自分の身の丈程の大きな盾を構え、手には長剣。

その背中はメイがよく知る男のものだった。

「父ちゃん!」

「おまえも何ぼうっとしてるんだよ。 危ないじゃねぇか」

「父ちゃん! 父ちゃん!」

声が漏れた瞬間、全身の力が抜けた。

膝が笑い、地面に崩れ落ちる。


涙が勝手に溢れた。

ただ、生きていた。 助かった――その事実だけで、呼吸が止まりそうになる。

自分を庇って立ちはだかる父の姿は、ずっと夢に見ていたヒーローのままだった。

「まさか俺が負けてるとか思ってたのか? 俺が負けるわけないだろ!」

「割と頻繁に負けてるとこ見るよ!」

そう笑いながら答えるメイの目には涙が溢れていた。

ミルズは彼女の頭にぽんっと手を乗せるとメイはグスグスと泣きながら手を払いのけた。

「空気読めよ!」

「うるさい、馬鹿!」

「勝つまでやれば負けてないんだよ。だから俺は無敗、つまり最強だ」

そう言うとミルズはラセルナとセリアスに向き直り、剣をかまえるのだった。 

「馬鹿な! ジョウジョカはどうしたんだ?」

「あのクソ猫か? あいつなら向こうでおねんねだ。 いい夢見てるんじゃないか?」

「そんな、ジョウジョカが敗れるなんて……」

「まぁ、この世界には寝技の知識なんてないからな。 楽なもんだったぜ?」

ミルズが指差すその先、ジョウジョカが倒れていた。

「言ったろ? 寝技は技術と経験、そして知識だってな」

父の笑顔にメイはジョウジョカの方を見る。

手足が曲がってはならない方向に折られ一見すると子どもに遊ばれた人形のようなものが横たわっている。

「タップなんてないからな。 全部折ってから寝かしといた」

セリアスとラセルナは戦慄の表情を浮かべる。

メイの笑顔も引きつっていた。

いくらタップがないからといってあんなになるまでやることはないのに…… 

ラセルナはミルズが何をやったのか、どうやったのかすらわからないが、ジョウジョカが一方的に敗北したことは状況から理解していた。

「油断したわ。 もろに喰らってもうた……」

「ご無事で何よりです。 いけますか?」

ローザの回復で立ち上がるレティ。

ひしゃげた杖に寄りかかってはいるが命に別状はない。


勝敗は、既に明らかだった。


「残念ですが、ここまでのようです。」

なおも闘志を敵に向けるセリアスを抑止するラセルナ。

「しかし!」

「全ては調べられませんでしたが、すでに十分な情報が集まりました。 ここで無理をする必要がありません」

「クソ! 我々が負けたというのか!」

「負けてなどいません。 戦術的に今は引くべきだと言っているのです」

セリアスはきつくミルズを睨みつけたあと、ラセルナと共にジョウジョカにむかって走り出す。

「またラセルナがスクロールを手にしているよ、皆気をつけて!」

ゴーレムを召喚したものと似たスクロールが怪しく光る。

まだ何かあるのかとミルズたちは警戒する。

 

それと同時にゴーレムは動きを止めた。

まるで二人を守る壁のように。

 

そして胸部が赤く燃えるように光り、そこへ魔力が収束していく。

「マズイ、自爆じゃぞ!」

金属が擦り合わされたような音が玉座の間に響きわたる。

「ニナ!」

「任せたよ、レティ!!」

 ニナによって集められた膨大な魔力をレティは強力な衝撃波へと変換させる。

「ローザ!!」

「はい! 皆、集まって下さい!」

「俺の後へ!」

二体のゴーレムはレティの放つ衝撃魔法により吹き飛ばされる。

その先にはジョウジョカ、ラセルナ、セリアスの三人が。

そしてゴーレムが臨界を迎える。

 

轟音と共に赤黒い閃光が巨体から迸る。

内側から膨張するように裂け、空間を焼き尽くすほどの炎が噴き出した。


爆発の余韻が、玉座の間に重く響く。

石床は抉れ、天井は崩れ、瓦礫と塵が舞い上がり、あたり一面が濃い煙に包まれていた。

誰もが息を潜める中――やがて、微かに風が流れ始める。  

ローザが詠じた風の魔法が、舞い上がった塵を払い、徐々に視界を晴らしていく。

「消えた……?」

ミルズが剣を構えたまま、慎重に前へ踏み出す。  瓦礫の先、爆心地に目を凝らすが――そこには、既に敵の姿はなかった。

「逃げおったか。 転移魔法をじゃろうな」

地面には微かに残る魔力の残滓。

まだ揺らいでいる空間の痕跡が、ついさっきまで転移陣が展開されていたことを物語っていたのだった。

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