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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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29話

ジョウジョカの動きが鈍っている――

その原因が、あの謎の光針にあるのはまず間違いなかった。

ラセルナはニナを睨みつける。

おそらくあの支援役の仕業だ。

味方へのバフだけでなく、密かにこちらのデバフも仕掛けていたのだ。

一杯喰わされた、ラセルナは歯噛みする。

ジョウジョカの戦闘力がこれ以上削られれば、戦線が崩壊するのは時間の問題だった。

――ここで決めるしかない。

「セリアス、全力でいくわ。残りの魔力、すべて使い切って構わない。最大出力の魔法を!」

「任せろ!」

セリアスの周囲に、巨大な魔法陣が多重展開されていく。

空間が軋み、空気中の水分が結晶化して舞い始めた。

降り注ぐ氷片の密度は、これまでの比ではなかった。

その中心に立つセリアスは、まさに“氷の王”のごとき威圧を放っていた。

「ジョウジョカ! あの赤毛には構うな! 剣士を仕留めろ、絶対に!」

「言われるまでもないにゃ……」

ジョウジョカの瞳に、濁りのない殺意が灯る。

その視線の先――標的はただ一人、ミルズ。


地を割るような勢いで足に力を込め、跳躍の機を窺う。

その身が空気を裂く刃と化す時、誰にも止められはしない。


セリアスの魔法が発動寸前に達しようとするその瞬間――ミルズたちが動いた。

今までの受け身の姿勢から一転、攻勢へと転じる。


――好機。

獲物が自ら虎口に飛び込んできている。

「ジョウジョカ、魔道士へ! セリアス、前後を断て! 剣士を魔道士から引き離せ!」

ラセルナは瞬間的に標的を変更した。

ミルズたちが焦って攻めてきたことにより、レティとローザへ直接攻撃する機会が生まれたのだ。

ミルズたちが走る進路に合わせ、セリアスは氷槍を打ち込む。


射出のタイミングに意図的なラグを設けることで、ミルズたち前衛とレティたちの後衛との間に距離を生じさせる。

その隙間を狙い、ジョウジョカが強襲を仕掛ける。

視線はすでに、レティとローザを捉えていた。


だが、レティも黙ってはいない。

土魔法で即席の壁を築き、ジョウジョカの進路を制限していく。

さらには、セリアスの氷魔法さえ利用して時間を稼ぐ。

それでもジョウジョカは止まらない。

壁を最小限の動きで避け、力技で次々と突破していく。

そしてついに、ミルズとメイが戻る前にレティへと肉薄する。

「残念だったにゃ! ウチの勝ちにゃ!」

ジョウジョカの拳がレティの顔面を砕かんとばかりに振るわれる。

だが――水の膜が弾ける音とともに、拳は空を斬った。

そこにあったのは本物ではない。

ローザの水魔法が、鏡面のような幻影を張っていたのだ。

レティの姿を目の前に錯覚させる、巧妙な陽動。

「にゃに?」

困惑するジョウジョカへ飛んできたのは大きな盾。

大きくスウェーし回避した――はずだった。

だが、その直後、思わぬ衝撃を受けて地面へ倒れ込んでしまう。


ミルズのタックルだ。

そのままジョウジョカの横を取り、さらに流れるようにマウントポジションを取る。

ミルズの動きを確認したパーティーは一気に駆け出す。

狙いはラセルナ、セリアスの魔道士たち。

メイは風魔法を利用し、自分自身の移動速度へプラスさせる。

爆風と連動して動くメイの速度は、あっという間に距離的優位を奪いラセルナとセリアスへ近接攻撃を仕掛けたのだった。


――

ニナの脳裏にある訓練の光景がよぎった。

「グラップリング?」

ミルズとメイが組み技の練習をしている時にニナが不思議そうに話しかけてきた。 

「うん。 グラップリングってのは武器なしの組み技で戦う格闘技なんだ」

「へぇ〜、ミルズは剣士なのに体術も使えるんだ」

「まぁ、柔術は黒帯だし、ノーギも自信あるからな。 打撃もまぁまぁ強いんだぜ?」

「柔術? ノーギ?」

頭にはてなを浮かべるニナ。

ミルズはニナにどういった競技なのか説明するのに苦労した。 

「ウチ、父ちゃんにはまったく敵わないからね! まだ一本取ったことすらないの!」

「ふふん、まだまだ若いもんには負けんよ」

「ほんと腹が立つ程強いよね。 父ちゃんより大きい人でも勝てないからね!」

「グラップリングは技術と経験、そして知識よ。フィジカルだけじゃ勝てんからな」

「へぇ、メイがまったく勝てないなんて、想像できないな」

「今なら打撃ありじゃ負けない!」

「馬鹿ぬかせ、何なら打撃ありでやってやろうじゃない」

ミルズとメイは仲良さげに拳をタッチさせ、模擬戦を再開する。


ニナはその時のことを覚えていた。

スルスルと、すごい速度で逃げようとするメイをミルズはコントロールして離さない。

氷に閉じ込められた魚のように、もがくほどに動きの鈍くなるメイをゆっくりと流れるように仕留めるのだった。

負けるたびに手足をバタバタさせて悔しがるメイの表情がとても楽しそうだったことが印象的だった。


ジョウジョカのあまりの強さに圧倒された時、ニナは自分に何ができるのかを考えていた。

そしてミルズのグラップリングの強さを覚えていたのだった。

捕まえさえすればミルズならジョウジョカを抑えられるに違いない。

そう考えたニナはジョウジョカの身体能力低下をさせる針を密かに打ち込み続けたのだ。


身体に触れることによって色々な種類のバフ、デバフをかけられるニナは、新しく針によって敵に触れること無くデバフを与えられる術を身につけていた。


「ここからは時間との勝負じゃ! 娘っ子! 先に女じゃ! 薬箱があると戦いが長引くでな!」

「オーキードーキー! 回復する暇なんてあげないよ!」

レティは万全を期してラセルナたちの後方へ土の壁を作り逃げ場を封じる。

さらに左から襲い掛かるメイに対してローザとレティが右へと展開し包囲戦を作り出す。

「勝ったと思うのはまだ早いんですよ……」

「奥の手っていうのはここぞという場所で使うから強いんだ」

二人の魔道士は不敵に笑う。

優勢から劣勢、目まぐるしく戦況が変化する中でも冷静に対応するラセルナとセリアス。

その手には特定の魔法を発動させるスクロールが握られている。


メイがラセルナへ肉薄するその直前、それは発動された。

 

光り輝くスクロールが生み出す魔法陣が弾け、そこから重々しく姿を現したのは兵士型ゴーレム。

体高は3メートル近く。

甲冑にも似た装甲は鉄のように冷たく、だが節目には木のような年輪模様が浮かぶ。

巨大な盾を構え、こん棒を肩に乗せる姿は、まるで古の城を守る門番のような威厳を纏っている。


「召喚型のガーディアン?!」

ニナが驚きの声を上げた直後、鈍い音が響く。


メイがガードの上からこん棒を叩きつけられたのだ。

その威力は柱を砕き、なおも彼女を吹き飛ばすほどだった。


両手を砕かれながらも闘志を絶やさないメイはすぐさま起き上がる。

「馬鹿力でなぐりやがって! ぶっ壊す!」

「冷静に! まずは治療を!」

ローザがメイを回復しすぐに戦線復帰を果たすが……巨人が彼女たちの行方を阻む。


戦局はいまだ揺蕩う。

その綱渡りのような均衡の中で、戦いはなお続いていた。

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