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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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24/71

24話

ギルドでの登録を終えた翌朝。

俺たちは町の南西、白砂の広がる沿岸地帯へと足を向けていた。


遠くからでも見える白い砂丘が、うねるように連なっている。

乾いた風が吹き抜け、足元の砂を巻き上げては肌に細かく叩きつけてくる。

時折、視界が霞むほどの砂嵐が立ち上がり、言葉を交わすのにも声を張らなければならなかった。


「なんか……異世界感、すごいね!」

メイが顔を覆いながらも興奮気味に言う。

もう少し本とか読んで語彙をつけような。

 

風に舞う砂が髪やマントの隙間に容赦なく入り込む。

俺たちはフードを深く被り、足を取られながらも進む。


やがて、砂の斜面の先に黒ずんだ岩肌が顔をのぞかせる。

風でえぐられたかのような、ぽっかりと口を開けた横穴――それが、今回の依頼先となる洞窟のひとつだった。


「ここが……“白砂の嘴”、通称3番だね」

ニナが懐から取り出した地図を確認しながら、呟くように言う。

この番号はギルドが勝手に割り振った管理用の呼び名だ。

なんとなく中二感があって、そこはかとなく好き。

潮の満ち引きによって内部が浸水するこの洞窟では、数日前にも複数のアンデッドが確認されたという。


「くちばしに見えんこともないかな。」

「ヌシらが星を見て適当にはくちょうだのやぎだの言うのに比べたら余程、嘴に見えるがの。」

確かに星3つ結んでコンパス座とか言ってるしな。

星座は言ったもの勝ちすぎる。

 

洞窟の入り口に立つと、風の唸りに似た低いうなり声のようなものが、間断なく漏れ出していた。

「雰囲気あるね、僕は結構こういうの苦手な方なんだ。」

「幽霊とかいるのかいないのか、わからないから怖いんじゃない? アンデッドがいるって言われてるんだから普通のモンスターとかわらなくない?」

「確かにそうなんだけど……怖いものは怖いかな」

「じゃあ手を握っておいてあげようか?」

恐怖から足取りの重いニナ。

赤い髪を短く刈り上げていた頃に比べて髪も少し伸び、女性的な見た目になった彼女は可愛らしく身を縮めている。

こういうことを言うとすぐにカーフを蹴るヤツがいるので対応できるように意識を下に割く。

するとゴンっと頭に衝撃が走る。

「あら、ごめんなさい。杖が岩に引っかかってしまって……」

「……気をつけようね。」

レティではなくローザからの攻撃だった。

気をつける場所がふくらはぎだけではなくなったようだ。

近年は暴力系ヒロインは流行らないのに……


奥の暗がりからうめき声が聞こえる……

のそりのそりと足を引きずりながら現れるのは肌の一部が腐り落ち、骨が見えてしまっているゾンビ。

こちらを視認しながらも散漫な動きは生理的な嫌悪感以外に恐れるものはなさそうだ。

 

「おぉ! 第一アンデッド発見! よ〜っし!!って、くっさ! くぅっっさ! おぇえ」

確かに臭え! そりゃあ腐った死体なんだから当たり前なんだけど、ゲームには嗅覚なんてなかったからここまで腐臭が漂うとは思ってなかった。

「レティ、焼いて! 焼いて!」

鼻をつまみながらレティに火葬を懇願するメイ。

「こんなところで炎魔法なんぞ撃ったらあっという間に酸欠じゃよ?」

「むうぅ。 普通にやるしかないのか! ゾンビより骨のヤツと戦うようにしよう!」

最初の一匹目を皮切りに奥から大量の歩く屍が現れる。

しかし、物量で押し切ろうにもここまで強さに差があると問題にならない。

ここのアンデッド達には魔法による遠隔攻撃もないようで、ゆっくりと近付いてくるだけ。

レティの範囲魔法での攻撃とローザの神聖魔法で広範囲を一気に浄化してもらう。

依頼としてはここで終了。

 

だが、これではレベリングにならないので俺たちはさらに奥へと進んでいく。

奥へと進むほど敵の強さが増していき、最下層では中々骨のあるヤツと戦えた。

骨だけにな!っていうスケルトンタイプではなく、シャドウと呼ばれるアンデッド。

姿形は人間そのものだが、その名の通り影のように肌が黒い、というか闇?

全身が真っ黒なマネキンという表現が一番わかりやすいかな。

目だけが怪しく紅く光っている。

 

そいつらは種族もバラバラ、武器も魔法も、その戦闘スタイルは様々。

対人戦はミーレスの訓練以降、経験していなかったこともあり、ここでの戦いは非常に有意義だった。

 

シャドウは戦術を理解しているのか、ちゃんとそれぞれに合った闘い方を仕掛けてくるからだ。

ニナを中衛として、歌や踊りによるバフやデバフを交えたスタイルは、俺たちの中にしっかりと落とし込まれたというにはまだまだ早い。

ニナの特殊な動きはレティも今まで出会ったこともないらしく、試行錯誤を繰り返している段階だ。


シャドウの群れを見つけるたび、テーマを決めて戦う。

勝利が目的ではなく、練度を高めるのだ。

とにかく戦いを終える度に話し合い確認し、次に活かせるように工夫を重ねた。

「ここの敵じゃともう訓練にはならんの」

「そだね! もう少し強くないとローザが暇そう」

「暇をしているわけではありませんよ? ただ何も起こらないのに戦いを注視しているのは結構疲れるんです」

「まぁ、ニナが一番疲れるのは間違いない」

「だって僕、ずっと歌って踊ってだよ? もうくたくただよ……」

俺の肩に担がれて運ばれているニナが不満そうに言う。

 

そろそろ本日のレベリングがお開きとなり疲労で動けなくなったニナをおぶって帰ろうとした。

するとレティからニナのケツにさわるなと物言いが入る。

仕方ないのでお姫様抱っこで運ぼうとすると、女性の太ももにみだりに触ってはならないとローザから指摘が入った。

じゃあどうするんだよとなったところ、メイがニナをそっと持ち上げて俺の肩にかけた。

今日の頑張りの結果が風呂上がりのタオルみたいな扱いだ。

ニナの不満げな顔も無理はなかった。

 

「僕は別に……ミルズだったらいいのに……」

俺の肩で垂れ下がるニナが小声でそんなことを言う。

鈍感主人公なら物語上スルーされるべき発言だが、俺にそのような属性はなくバッチリと聞こえていた。


レティはさておき、ローザからの好意も感じている。

そしてニナもか?

おいおい、困っちまうな、モテ男は。

ヘラヘラと妄想を膨らませていたらメイにケツを蹴られた。

「顔がキモい!」

娘からの冷ややかな視線で我に返る。

俺は膨らませた妄想を回収し、現実世界に頭を戻した。


その時だった。

小さな揺れを感じる。

 

地震だ。

 

「おぉ、揺れてる」

「んだね。 洞窟崩れないかな?」

「まぁ最悪ゲートクリスタルに飛べばよかろう。 ワシからあまり離れるでないぞ」

 

大きくない、震度で言うと体感2とか3ぐらい。

だが、洞窟内部での揺れは地震に慣れた日本人でも肝を冷やした。

揺れ自体はすぐに収まり洞窟内も崩壊の危険性もないように思われた。

だけど安全の為、俺たちはその日は寄り道もせずまっすぐゴルドバへと向かった。

 

ギルドへ戻り、報告ついでにもう少し強い敵がいる依頼を望んでいることを伝えてから地震のことについて聞く。

受付のおっさん曰く、ずっとゴルドバに住んでいるが今まではそんなことは無かった。

それが数カ月前から地震が頻繁に発生するようになったらしい。

さしあたり崩落などの報告は今のところあがってはいないそうだ。

不安は残るが明日の依頼に備えて今日は休もう。


――

ここは"崖咆の窟"、通称8番。

崖下の洞窟内に入り込む風や波の音が獣が吠えるようだと名付けられた。

そこは今やアンデッド達の巣になってしまっていたが……

 

「計器が数値の異常を検知しています」

金色髪を後ろで束ねたネイフェルの女性が手に持った機器を見て言う。

「数カ月前に帝国方面で起こった天変地異とも呼べるレベルの異常な魔力量の検知から始まり、世界各国で起こる災害、モンスターの大量発生……」

「ここも当たりかにゃ?」

「そのようだね。 このアンデッドの発生は異常だし、さっきの地震は魔力による振動だとコイツが示している」

ラセルナが持つ機器に目線をやり考え込むセリアス。

「ここには何かがあるのは間違いなさそうだ。 そしてこの世界で何かが始まっている……」

「星詠の塔の神子様がおっしゃるとおりね。 世界の魔力の流れを計測できるウィンダミアだけが先んじて調査に乗り出しているのは大きいわ」

「他の国の馬鹿共は問題を認識すらしていないからね」

「ウチは戦う場所を与えてくれるにゃらそれでいいんだけどにゃ」

目の前に迫るシャドウを相手に躍動感溢れる動きで翻弄し倒していくジョウジョカ。

ネイフェルの二人は戦いに目を向けることもなく調査を続けている。

それはジョウジョカという戦力に圧倒的な信頼を置いているに他ならない。

「けれど……8番はハズレね」

「まぁ、あとは7つ。 虱潰しにしていくしかないね」

8つの洞窟のその奥、彼らが求めるものは秘めたる思いと共にそこにあるのだった……

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