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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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22話

「大っっ勝利!」

メイがVサインを天に掲げる。

感極まったアーシェがメイに飛びついて涙を流す。

ニナもレティに抱きつきながら喜んでいる。

「ま、ワシらにかかればこんなもんじゃて」

余裕の表情で勝利の余韻に浸るレティ。

魔力枯渇で疲労困憊のローザはその場に座り込んで微笑んでいる。


俺はというと……

「君たち、殴る……俺、殴られる」

もうボロボロだ。

腕は火傷で酷いことになっているし、髪はチリチリ。

盾は熱と打撃でひしゃげ、剣もところどころ欠けている。


「君たち、綺麗……俺、ボロボロ」

対して俺以外。

レティを筆頭に見た目はほぼ無傷。

そりゃそうだ、人がぼっこぼこに殴られて焼かれている間にサンドバッグを叩いてるような感じだ。


「落差がデカすぎる!」

勝利にはしゃぐ皆はそんな俺を見て笑う。

「すまんすまん、だが言ったじゃろ、キツいって」

「焦げたスチールウールを頭にのっけて何言ってんだ!」

メイが俺の背中をバシバシ叩きながら笑う。

「痛え! 今日のMVPに敬意を払え!」

「MVPはニナ!」

「ばっか、ゴールにばっかり目を奪われちゃいかんのだよ。 その前に堅実な守備あってこそ……」

「心が狭い!」

そんな親子のやり取りを見て皆はさらに笑う。

ちゃんと勝てて良かった。

一歩間違えば全てが今日で終わっていたところだった。


洞窟内に遠くから声が響く。

「姫様!!」

カシャカシャと装備の金属音が近付いてくる。

騎士団の御到着だ。

風穴から逃げられた冒険者からの報告を受けて飛んで来たのだろう。


「姫様、ご無事で!」

到着したのは黒い鎧の騎士達。

走り寄ってきたのは、オレンジの髪を束ねた偉丈夫――フェイだった。

彼は片膝をつき、拳を胸に当て、深く頭を垂れる。


「大事ない。あの者たちが命を賭して私を救った」

アーシェの言葉に、フェイがこちらを向いて深々と頭を下げる。


「本当に、感謝する。お前たちでなかったらどうなっていたか……」

「こうなったんだよ! 見ろ、この頭! マリモ乗っけてんじゃねぇんだぞ!」

「す……すまん。 今度、アーマリア工房で作られた最上の水槽を進呈しよう……」

「飼ってもいねぇよ!」

立派な頭にされた怒りをフェイにぶつける。

半分くらいはコイツのせいだからな!


「今回の件、ちゃんと調べておるんじゃろな。 地形まで調べてかなり計画的じゃったぞ。」

確かに狩りが進んで奥まで行ったところ――逃げ道が限定された上での強襲だ。

情報がどこかしらか漏れていたのは間違いない。

レティの指摘にフェイは鋭い眼差しをして答える。

  

「下手人については――抜かりない。だが話は後日、改めて」

「何が抜かりないだ! 抜かった結果がコレだろが!!」

「真面目な雰囲気になってただろ! 空気読めよ!」

皆がケラケラと笑う中、驚きの表情を浮かべているニナ。

 

「アーシェが姫様って……?」

「何言ってるのよ、ニナ。わたくしの名前はアーシェ、アーシェスカ・フォン・クラインゲルト、冒険者よ!」

バチリとウィンクでキメるアーシェ。

「ええええ!」

「そういやニナだけが知らなかったね! その場の流れで一緒になったから!」

「クラインゲルト家って公爵様? アーシェは皇女殿下?」

わかりやすくテンパるニナ。

そりゃあ短い期間ではあったけど、同じ釜の飯を食っていたのが自分の国の皇女様とは思わないだろう。

「私たち、友達でしょ? またあなたの歌を聴きたいわ」

一緒に戦う仲間ってやつの絆は深いもんだ。

「アーシェ…… そうだね、僕たちは友達だ!」

しっかりと握手する二人。

若いっていいなぁ。

年を取ると涙もろくなるからさ、こういうの見るとすぐジーンときちゃう。

  


さて、これで姫様ともお別れだ。

色々あったが……楽しんでくれていたらいいな。

騎士団に守られ、アーシェがこちらへ歩いてくる。


「いい経験だったわ。……冒険者になれて、良かった」

弾けるような笑顔を残して、姫は俺に拳を差し出す。

「噂に違わぬお転婆ぶりだったよ。」

軽く拳を合わせる。

「ふふ、薬草ぐらい冒険者なら覚えな。」

「まったくだ」

二人の拳が離れる。

 

別れの時間だ。


「ではな。……また会うこともあるであろう。」

背を向け、騎士団の中へと歩いていくアーシェ。


俺もそろそろ皆のところに戻るか――と思った、その時。


「ミルズ!!」

振り返ると、彼女の唇が頰に触れた。


「守ってくれてありがとう。……かっこよかった」

何が起こったのかわからず思考が一瞬停止してしまった。

「これは一人の女の子としてのお礼!」

言い終えるや否や、アーシェは振り返ることなく歩き去っていった。


頰に残った温もりを指で確かめながら、俺はぼーっと立ち尽くした。

顔の熱を誤魔化すように背伸びして言う。


「さあ、帰ろうか」

誤魔化すように言ってみたものの、当然これで終わるはずがない……


ふくらはぎに痛みが走る。

「ヌシは毎回毎回……そういうとこじゃぞ!」

レティが容赦なく蹴ってくる。

「やめろ! 俺が悪いわけじゃない!」

「まぁ、僕も気持ちはわかるよ。あれだけボロボロになって守られたら……さ」

ニナが頬を赤く染める。

「ふっ、俺に惚れると火傷するぜ?」

「レティさん、ローザさん、そうらしいですよ?」

「あばば、チクるのやめて!」

レティが物理、ローザは精神を攻撃してくるんだから危険なんだよ!

二正面作戦は避けるべきだ。

「やるじゃん父ちゃん! 色男め! アフロ頭に姫様がキスしてる絵、ちょっとどころじゃなくウケたけど!」

メイが笑い転げている。

「……ちょ、ちょっと。ローザさん? 回復魔法が止まってるんですけど?」

「私は今、不機嫌になりました。 ご自身で回復なされたらいかが? これ、あげますから」

緑色のキノコを渡される。

これでどうしろと……


う〜ん……俺、今日、けっこう頑張ったんだけどなぁ……。


――

後日、城へと呼び出された俺とレティ。

相変わらず山のように積み上げられた書類に囲まれたフェイの執務室。

畏怖と破壊の象徴とされる団長様は、書類仕事相手から逃亡する癖がある。

なので、隣に控える副団長が鋭く目を光らせていた。

「おぉ、お前ら来たか! ちょっと気分転換に外の空気でも吸うか!」

ジロリと睨みつける副団長の視線をかいくぐり、見晴らしの良い尖塔への通路へと俺たちは案内された。

「ここなら良いだろう」

「入念なことじゃな。 自分の隊の副長まで疑わねばならんのか?」

鋭い眼光でフェイは答える。

今回の件の犯人は既に捉えている。

だが黒幕が見つかっていない。

近年、国内は比較的安定しており、他国との戦争も数十年起きていない。

その中で突発的に発生した今回の事件、底が見えていないらしい。


今回捕まったのはかなり上の方の爵位持ちの貴族。

特に悪い噂もない人物が急に身持ちを崩して借金まみれになった。

かかりつけ医の話では麻薬の中毒症状が見られたらしいがその先からぱったりと手がかりが無くなる。

ドラゴンの召喚を可能とするオーブの入手経路も不明。

その上悪いことに捉えた貴族も獄中死してしまう。

これでは事件は完全に闇の中だ。

 

「抜かりは無いとは誰の言葉じゃったかのぅ。 凶器のナイフだけ見つけても仕方ないのじゃぞ?」

「面目ない……」

「まぁ、姫様も無事で良かったとするか。この先は俺たちには関係ないことだろうしな」

「じゃの」

「けど、そんな情報俺たちに漏らしていいのかよ? 俺達も怪しまれるには十分な要素を持ってると思うけど」

フェイはじっとこちらを見つめる。

まるで心の奥を見透かす様にまっすぐ。

「お前達のことは調べてもわからなかった。出身地から経歴、素性、何もだ」

だろうな。

「じゃあ何で?」

「勘だ」

「そんないい加減な」

「戦場では大事なことだぞ? 俺はそれで何度も救われてきた。それに……」

「それに?」

「食堂で他人の生い立ちを聞いて声を上げて泣いているヤツが悪いヤツとは思えんしな」

「よ、よく似た別人じゃないかな! 稀によくあるやつ!」

超恥ずかしいところを見られてた!

どこに目があるかわからんな……

「貸し一つ消化していいから忘れてくれない?」

レティにバシッと叩かれる。

「しょうもないことで消費すな! ヌシが涙もろいのは今に始まったことではあるまい」

ぐぬぬ。

でも恥ずかしいものは恥ずかしい。

「あぁ、貸しと言えば装備品の件だが、中々の品を揃えたぜ。 ランク3の冒険者には過ぎたレベルのものだ。」

「お、これでまたレベリングにいけるな!」

「うむ、ニナのやつも鍛えんといかんしのぅ。」

これでまた馬鹿みたいな戦いの日々に戻れる。

次は何処で戦おうか。

もっと強いのがいっぱいいるとこだな!


「まぁ、また何かあったら手伝ってくれ。 お前たちを頼りにしている」

「その後ろ盾に国の権力がある要求やめろ!」

フェイは苦笑いを浮かべる。

まぁ、本当に無理なやつはレティに全力で頼って他の国にでも逃げればいいか。

「これだから公務員にはなりたくない……」

俺はそう言いフェイに拳を突き出す。

フェイは笑うとコツンと拳を合わせた。

「恩に着る!」

「貸しだかんな!」


ふと風が吹いた。

それは新しい冒険を予感させる力強い風だった。

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