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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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106/110

106話

皇帝バルトフェルドの急逝。

それは帝国だけでなく、全土を揺るがす大事件だった。

強大な力を持つ皇帝の死は、各地で内乱を引き起こし、対立国はこの時とばかりに失った領土を取り戻すべく躍起になっていた。

世界は再び混迷と波乱の時代へと変わっていく。

そして、ここ地方領アスガルドも内乱の只中にあったのだった。

「皆、張り切っていますね」

「そうね。あなたがいなくなっただけで、世界はこんなに大きく変わってしまうのね」

「別にいなくなったわけではありませんが……」

「ふふ、新しい身体はどうですか、バルトフェルド? いえオズワルド」

「息子の身体だからでしょうか、昔よりキレがあるように思えます……ですが、息子の身体を奪ってしまったことに対する罪悪感は中々慣れませんね」

「そうですか」

敵陣の中を城内を散歩するかのように歩くオズワルド。

確かめるように剣を振るい、時に首をかしげ、時に頷く。

自分の感覚のズレを修正するようにゆっくりと進んでいく。

彼の後にはたくさんの兵士が倒れていた。

オズワルドの隣でオフィーリアはいつものように優しく微笑んでいた。

「罪悪感ですって……あなたそんなことは微塵も感じていないでしょうに。あなたのその魂は今も変わらず輝いているわ。一点の曇りもない透明、あぁ、美しい」

その瞳に浮かぶ恍惚とした感情に気付くものはいない。

誰もがオズワルド一人を見ているのだから。


——

数回の魂の継承を行って、なお男は無敗のままであった。

時折、自分と戦える者が現れるが、いずれも自分に勝ち得るものはいなかった。

それでも強さへの飽くなき欲求は衰えることを知らず、常に新たな敵を求めていた。

そして遂に彼が追い求めていた好敵手が現れた。

北の封印されし大地。そこからデモニアと呼ばれる種族が攻め込んできたのだ。

羊のような角を持ち、強靭な肉体と強力な魔法を行使する彼らに帝国軍は幾度も敗北していた。

そして現皇帝であるマクシミリアンの出陣が決定された。

「オフィーリア、今回は何かが違う気がするのです。見てください、この指を……」

壁に掛けてある自分の愛刀に伸ばした手が震えている。

どんな戦いでも冷静で胸が高鳴ることなどなかったマクシミリアンが興奮で震えている。

「確かに何か予感めいたものを感じるわ。あなたが望む戦いが近付いているのかもしれないわね」

「あぁ、その時を迎えられるならば……死んでもいい」

「あら、駄目よ。それは私のものなのだから。離さないわよ」

「オフィーリア、私の魂が最も輝く時が来たのかもしれない。その目に刻んでおくれ、そして見届けておくれよ」

部屋を出て、バルコニーから眼下を見渡す。

兵士たちの熱狂が広がり、マクシミリアンを包む。

普段ならば意に介することなどない、兵たちの士気。

それが今はマクシミリアンの心を熱く震わせていたのだった。


——

彼女がマクシミリアンの前に現れたのは、デモニアの将軍の一人、アルカイザとの戦いの最中だった。

マクシミリアンがアルカイザを打ち倒し、トドメを刺す直前に彼女は現れた。

美しく形を整えられた氷弾がアルカイザからマクシミリアンを遠ざけるように撃ち込まれていく。

それを回避し、撃ち落とすマクシミリアン。

氷弾が放たれるたび、急激な冷気が森を覆う。気付けば辺りは深い霧に包まれていた。

「ずいぶんとハッスルしとるようじゃの」

幼さを感じる少し高い声が森の木々に吸い込まれていく。

マクシミリアンが見上げる先には大きく丸い満月が浮かんでいた。

そしてそこに影を落とす人物が一人。

真紅に輝く瞳が暗闇に浮かび上がる。その瞳にマクシミリアンはゾクリと背筋を凍らせた。

「レティシア様、すみません……不覚をとりました……」

レティシアと呼ばれる少女が二人の間に降り立った。

そしてニコリとアルカイザに微笑み、頭を撫でる。

「うむ。ヌシが無事で良かった。ヨシュアが後に控えてるでな、拾ってもらうが良かろ」

「それではお一人でアイツに? 危険です! 私も助太刀致します故!」

「その身体で何ができるんじゃ。黙って帰るのじゃ。間違ってワシの氷弾をヌシのケツにぶち込んだらワシがヨシュアに叱られるんじゃからな」

マクシミリアンの目はレティシアと呼ばれる少女に釘付けになっていた。

「さて、ヌシがどこの誰だかわからんがの、その身なりから察するにお偉いさんじゃろ? 残念じゃったなぁ、帝国とは戦争中らしくてのぅ……」

マクシミリアンは一言も発することができずにいた。

目の前の少女が発する強大な圧力にただ圧倒されていた。

かつて経験したことも感じたことすらない感情をマクシミリアンはその時、初めて心に抱いていた。

「ヌシはここで死ぬ」

それは恐怖と呼ばれるものだった。

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