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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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102/107

102話

レティの言う通り、戦況は一気に傾いた。

シリウスの魔法をしばらくは反射に失敗していたロザリカだが、それも時と共になくなっていく。

一方でロザリカは調子を取り戻し、お得意の炎魔法を連発していった。

今では回復に回す魔力を攻撃に振り替え、シリウスを追い込む。

魔法を打てば返され、打たないと攻められる。

手詰まりとなったシリウスの身体は既に満身創痍となっていた。

レティが神妙な顔つきになっていたのを不思議がってミルズが問いかけた。

「どした?」

「うむ。これはもう勝負がついておるんじゃが、どうするのかと思うての」

「命の奪い合いまでやるってことか?」

「そうではない、そこは最初から二人ともそのつもりじゃろ。そうではなく……」

限界まで追い詰められたシリウスをレティは見つめる。

「アヤツ、もはや限界じゃ。ロザリカに闘いの中で対応されたのが悔しかったのじゃろうか、自分も属性魔法を打てるようにと何度も試しとる」

「負けず嫌いか!」

「結果、全部失敗しててもはやほとんど魔力が残っとらんぞ」

「人には向き不向きがある……あ、なんか歩き出した!」

「諦めたんかのぅ」

様子がおかしいシリウスを見て、ロザリカも魔法を打つのを止めた。

「なんですの? 今さら命乞いでして?」

「いえ、負けを認めようと思いまして……私は魔導師として、あなたに勝ち得ないことを理解しました」

「愚かですこと。ワタクシに勝てる魔導師などこの世のどこにもいないのでしてよ」

「そうでしょうか……私は一人思い当たるのですが。しかし、残念でした。才能の欠片もないことはわかっておりましたが、それでも五百年研鑽を積み続けました」

「はぁ、五百年? あなたエルフィニアでしてよ?」

「ふふ、色々ありましてね。生きている年数はもっと上です」

「それでよくワタクシを化物呼ばわりしましたわね? やはりあなたはぶち殺さなければ気がすまないのですわ」

「煽ると面白いと……あなたの師であるアジュルモジュルに伺っていましたから」

「本気で……言っているみたいですわね……」

杖を構えたままロザリカはシリウスを見つめていた。

頭には色々な疑問が浮かぶが、自らの師の名前を知っているものは既にこの世にはいない。

そのことがロザリカの動きを止めていた。

「で、それがなんですの?」

「申し訳ないのですが、本気で戦わせてもらってもよろしいでしょうか?」

「ずいぶんと舐めたことを言いますのね。ワタクシと戦うのに本気ではなかったと、そうおっしゃいますの?」

「残念ながら……」

「本当にあなたは人をイラつかせるのが上手でしてね……ほんっとうに!」

ロザリカがいきなり大魔法を放った。

一瞬の間に最大、限界の魔力をまとわせ、巨大な紫の炎がシリウスを襲う。

その獄炎がシリウスに迫る直前、それは真っ二つに切断される。

そしてシリウスへと届く前に無数に切り裂かれ、宙に霧散していった。

そしていつのまにかシリウスは剣を構えていた。

彼には不釣り合いな、なんの飾り気もない無骨な剣だ。

それがロザリカの魔法を斬り払ったのだ。

「驚かせてしまいましたね。この剣だけが、私と共に長い年月を生きてくれた相棒でしてね」

シリウスが長年の友達に向けるように剣に視線を落とす。

その様子をロザリカは黙って見ていた。

「ここからは一人の剣士としてお相手します。あなたの全力を私に見せつけて下さい」

シリウスは構える。

その姿にどこにも力みはなく、自然体。

隙だらけのように見えるが彼から感じる圧力はこれまでの比ではない。

「さぁ、決死の覚悟を! あなたの命、私に見せつけて下さい!」

シリウスが静かに歩みを進める。

一歩、また一歩。

ロザリカの元へと。

ロザリカは足元から乾いた音が鳴ったことに気付いた。

いつの間にか自分の足が、すぐ後にあった石を踏み抜いて砕いた音だった。

「恐怖した……というのですの? このワタクシが?」

ロザリカの足が震えている。

いかなる逆境であっても勝ち気な表情を崩さなかったロザリカが、恐怖で後ずさったのだ。

「ふざけるんじゃありませんの……ワタクシはロザリカ・ナザリカ」

そう宣言すると、震える足は止まった。

「ワタクシの前には勝利か、より完全な勝利しかありませんのよ!」

その瞬間、ロザリカの覚悟が決まった。

内に秘める全魔力を解放し、圧縮し変換する。後のことなど微塵も考えず、そのすべてを解き放った。

紅と蒼が溶け合った美しいまでの轟炎が彼女を包む。

「これがワタクシの覚悟、ワタクシの命、砕けるものなら見せてご覧なさい!」

ロザリカから炎が放たれる。

空間が歪み、その熱で大地が融ける。あらゆるものを焼き尽くす業火は、この世で最も美しく咲く華のようだった。

命を焼き尽くす業華を前にしてもシリウスは止まらない。

静かに、ただ静かに歩みを進める。

その花弁がその身に触れようとしたその刹那、まるで風に吹かれ舞い散る華のように、ロザリカの魔法は霧散したのだった。

「良い覚悟でした」

二人の間に落ちる紅の中、一太刀がロザリカへと吸い込まれていく。


ひらひらと落ちゆく花弁と共にロザリカの身体もまた、華を咲かせながら大地へと散ったのだった。

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