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女神と転生〜ポンコツ女神と父娘が最強へと至る道〜  作者: 荒頭丸


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100/106

100話

「あまり長く遊んでいても仕方ないでしょう。そろそろ本気でいかせてもらいます」

「あらあら。お気が早いことですのね。それではあまり女性にモテませんことよ」

「それは気をつけなければいけませんね。もっとも若作りのお年寄りに好意をもたれるのはあまり好ましいとは思っていないのですよ。特に二百をゆうに超えるような化物とは」

「誰が化物だ、このクソダボが! そのウザいロン毛を全部引き抜いてやる!」

「気が短いとモテないらしいですよ? 知識として持っていてもそれを活かせない人でしょうか? 愚かですね」

「お前は必ず殺す!」

「最初からそのおつもりでしょう? さきほどの自分の言葉をもうお忘れとは……愚かを通り越して罪ですね」

「黙れ!」

シリウスの真下の地面が突如隆起する。

それは大地の刃となってシリウスに襲いかかる。

シリウスは身を翻し、華麗にそれらを回避していく。

その先を風、更に氷、そして炎と追い詰めていく。

「炎一辺倒じゃないんだね」

「一番威力が高いのが炎魔法なのは間違いなさそうじゃがの」

「まぁ、それよりも驚かされるのは……」

「煽り耐性の無さだね!」

「現代日本のネットワークに触れさせたら絶対だめなヤツだな……今まで完璧だった魔法に俺ですらわかる揺らぎが見れるぞ」

「年齢で切れるなんて案外俗っぽいのですね」

「そしてアホっぽい!」

そんな隙を見逃すシリウスではなかった。

魔法を放つ一瞬の隙を見逃さず、神速の魔法を撃ち込んでいく。

ロザリカもその魔法を回避しているが、少しずつバランスを崩したり、魔法が乱れていってる。

「これは……当たるぞ!」

大きな戦況の変化の予感にミルズは身を乗り出した。

今までで最も大きな隙がロザリカに生じる。

シリウスがロザリカの動きを読んで放った魔法に怯みを見せたのだ。

「終わりです」

シリウスが告げる言葉の通り、最高の魔法がこの時に放たれた。

必殺の間合い、最高のタイミング、ここしかない刹那を見逃さずロザリカへと放たれた。

一瞬の閃光がロザリカへと到達する。

誰もがそう思った。

ミルズも。

レティも。

ニナも。

そしてシリウス本人ですら。

次の瞬間。

爆ぜたのはロザリカではなかった。

鮮血が宙を舞う。

シリウスの右脚が膝下から消失していた。

「なっ?」

自失は一瞬、シリウスは即座に立て直し回復魔法を使用して距離を取った。

完全に魔法の範囲外まで下がったのだ。

「あなた、ひょっとしてお馬鹿ですの? 本気でワタクシが怒り狂ってるとでも? お勉強代が片足だけですんで良かったですわね」

「……」

シリウスは冷静に今起きたことを考えていた。

必殺だと信じたタイミングで回避されたどころか、ダメージを負ってしまった。

それを可能にしたものは何だ?

シリウスの頭にある一つの答えが浮かび上がる。

「魔法の反射……」

「ほーほっほ! 御名答ですわよ! 一つの属性、しかも無属性しか使えない『あなたのためだけの』魔法ですわ! 複雑な変換を必要としない、粗雑で不細工な、優雅さの欠片もない魔法だけを反射する魔法……このワタクシがあなたに勝つためだけに開発した世界で唯一の魔法ですの」

勝利を確信したかのように笑うロザリカ。

一方でシリウスは視線を下に向け、震えていた。

「さぁ、その足でどこまで逃げ切れるかしら。無様に躍るさまをワタクシに見せて下さいな」

愉悦の表情を浮かべるロザリカの後方には無数の炎弾が生成されていく。

シリウスは視線を上げ、その光景を見て……笑っていた。

「素晴らしい! この世界に存在していなかった新たな魔法を作り出すなんて……私にはできなかった!」

その表情は歓喜。

敗北を目の前にして、なおも恍惚に融けた瞳でロザリカを賞賛していたのだった。

「あらあら、急に褒めてもあなたの運命は変わりませんことよ」

膨大な魔力を炎弾に注ぎ込み、紅蓮の炎に蒼が溶け込んでいく。

「だが、惜しむらくは……時間が足りなかった。そう、あなたには時間が足りなかったのです」

「確かにあなたの死を悼む時間は私にはございませんが……状況を理解してますこと?」

「では、答え合わせをしましょう」

そうシリウスが言うとロザリカに向けられた指先が光った。

ロザリカはそれに合わせ、反射魔法を展開した。

だが、シリウスの魔法はロザリカの反射魔法をすり抜け、彼女の頬を掠めながら後方の炎弾を吹き飛ばした。

ロザリカの頬から血が流れる。

頬を伝い彼女の形のよい顎の先から血が滴り落ちる。

その表情には先程までの余裕の一切が消えていた。

「その魔法、いつ完成なさいました? 1日前ですか? 1年前ですか? それとも百年前ですか?」

さらにシリウスの指が光る。

展開されたはずのロザリカの魔法をすり抜け、またも炎弾が弾けて消えた。

「おわかりですか?」

ロザリカの表情が歪む。

シリウスの魔法は熟知している。

その上で開発した魔法だ。

その対策をシリウスはあっさりと超えてきたのだ。

さらにもう一発。

それは展開した反射魔法を抜けてロザリカの腕に風穴を開けた。

「あなたのその魔法は本当に素晴らしい。しかし……練度が足りていない」

ロザリカがシリウスを睨みつける。

「本当に残念です。もう少し時間があればこうはならなかったかもしれません……」

シリウスの喜びの表情は既に消え去っていた。

それは希望を失った者の顔だった。

「まさか魔法の展開が追いついていない?」

「うむ。威力は抑えてその分をスピードに特化させたシリウスの魔法にロザリカの魔法の構築が間に合っておらん」

それでも炎弾を放ちつつ、ランダムに回避行動を取るロザリカ。

それを嘲笑うかのようにシリウスは光の弾幕を張り巡らせる。

ロザリカは着弾しそうなものを咄嗟に判断し、反射魔法を展開させているものの、シリウスはそれを無効化している。

ロザリカの身体から無数の傷が生まれていく。

それを即座に回復しながらロザリカは炎弾を放ち続けた。

「だけど……これじゃ千日手じゃないか?」

「いや、そうでもないの。あのちんまいの、回復魔法も使いこなしとる。ある程度の傷は今みたいに治してしまいおる」

「じゃあ、やっぱりここから戦況変わんなくね?」

「そうではない。消費量としては圧倒的にロザリカの方が多い。反射と回復、炎弾と三種の魔法を使っとるのじゃから」

「あっ、魔力切れで終わりか! なるほど!」

「うむ。炎弾の処理も張られた弾幕で撃ち落とされていっとるからの。これは……詰んだかの」

レティは闘いをじっと見つめている。

苦悶の表情を浮かべるロザリカ。

一方でシリウスの表情にも、歓喜はなかった。

その瞳に宿るのは、どこか諦めにも似た色だった。


戦闘はシリウス優位のまま、時間だけが過ぎていた。

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