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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第十三話『定着』

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88話「執行」

一通りの片付けも終わり、サイフィルは「ふう」と息を漏らした。

「すみません、うちの『主任』が盛大に散らかしまして」

「いえいえ、捜査なら多少は仕方がないですよ。我々もこれからは在庫管理しっかりやらなくては…ははは」


────遮断板と、…あれはなんの基盤だろう


サイフィルは、ガーネの言いつけどおり泳がせた男が目論見通り最後に『一仕事する』ところをしっかり『視て』いた。自分にも鑑定士として、呪具の類には多少の知識はもちろんある。が、ガーネやケントの言う通り『どれも無くなったからといってどうにかなるような代物ではない』ものばかりで、最後の盗んだものも取るに足らないものであった。

「じゃあお疲れ様です。お先に失礼します」

「お疲れ様」

男が盗んだ呪具を持って部屋を出た。

それを視て、サイフィルはケントに一瞬目配せをした。ケントはその視線を受けて意外そうな顔をした後、少し悲しそうに眉を下げたのがなんとなくサイフィルにも刺さるものがあった。

「じゃあ、僕もこれで。失礼します、お邪魔しました」

サイフィルはケントに会釈して男を追いかけて扉を開けた。

すると、数秒前に出たはずの男の背中がすぐそこにあって危うく接触しそうになって足が縺れた。

「わ、わっ」

視線の先には、警官の制服姿のガーネと控えるようにスメイラとカルセの姿。

「サイフィル、どうだ」

入口の前で仁王立ちしたガーネが目の前の男を顎で差し、サイフィルはこくんと頷いた。

「スメイラ記録」

「18時3分」

「…18時3分、王立管理物の不正持出し及び窃取の現行犯だ」

「…ッくそ、なんで…!」

慌てて逃げようとして男はガーネに無謀にも殴りかかるも、呆気なくその拳を受け止められ逆に力を反動させるように地面に組み伏せられると、そのまま後ろ手に手錠をかけられた。

「はい、公務執行妨害。大人しくしねーと肩外すぞ、ここから先は『警察官』としてじゃなくて、お前らの望みの『統裁官』として相手してやる」

「は…!?え、な、なんっ…!」

周辺が酷くざわついている。それも当然だろう。王立施設のど真ん中で、丁度閉館と職員の退勤の時間でもある。

見せしめのように行われた逮捕劇に、野次馬が集まるのも当然だった。

「スメイラ、コイツの荷物」

「…低級遮断板と、呪力収束用基盤」

スメイラが男の荷物から今しがた持ち出されたものを確認し、サイフィルに視線を向ける。サイフィルも間違いないと返すように小さく頷いた。

「さて…まずは位相固定用測定針で結界座標でも組むつもりだったかな。んで封蝋筒で他人の呪力でも媒介にしようとしたか、銀粉は魔法陣描写の精度上げに…あの研究用拘束具は『俺に』詠唱の強要でもさせようとしたか。最後に低級遮断板で環境ノイズ抹消した上で…基盤で今まで盗んだもので術式完成か。まあ、お前らが考えそうなやり口だな。付き合い短いけどなんとなくわかるわ」

「な…!」

「お、図星か。一応な、『使わない』なりに知識はあるんだよ俺も。残念だったな、俺の魂の固定術式組めずに終わって────カルセ、寝かせろ」

「はい、…シュクラーフェン」

名前を呼ばれて近寄ったカルセが男の目の前に手を翳し、呪文を詠唱するとあっという間に昏倒した。

「…なんの耐性も無いのか、小物確定だな」

ガーネは男の身体を弄り、服の内側に大事そうに保管している呪符を見つけて手に取った。

「ラズリ、仕事だ」

サイフィルは『ラズリ』の名前に状況が読めずに目を丸くした。現れた見慣れたロリータ服の『少女』は、苛立ちを隠すことも無くガーネの傍にヒールをかつかつと鳴らして近寄って男の傍にしゃがみ込む。

「だからね、アタシは本職が医者なの。便利屋みたいに使わないでよね」

「うるせーな、黙ってさっさとやれ」

ラズリは舌打ちを盛大に漏らして、呪符を睨みつける。

話し通り、下っ端を切り捨てる目的の術式が呪符を媒介にして男の身体に埋め込まれている。

「ガーネ、今日はこの『呪符の保管』は無理そう。既に発動してるわ」

「構わねぇよ、想定の範囲内だ。予定通り作戦Bで行け」

「ハイハイわかりましたよ統裁官様」

ラズリはヘッドドレスを外し、装飾のラピスラズリを取り外した。数珠状になった装飾を手に巻き付け、そのまま呪符に手を翳し自らの霊力を注ぎ込んだ。

呪符を媒介にして力の流れを乱し、反動で意識のない男が吐血するのを酷く冷ややかな医者らしからぬ目で見下ろすと、力の継ぎ目のようなものを見つけそこを目掛けて『呪い』の力を反転させた。

「……はい、お返し完了」

「返った先は特定出来るか」

「うーん………いや、これは無理。何重にも何層にも、色んなもの仲介してる」

「そうか、良くやった。ラズリ、この男あとで丁重に『取り調べ』するから死なない程度に治しとけ」

ラズリの『呪い返し』によって、ボーデンの時のようにみすみす死なせることは回避出来た。ガーネはラズリを見下ろし、思った以上にこの女も使えるなと判断し満足そうに笑った。

「…アンタ、その笑い方やめてくれる?どこかの誰かを思い出す」

「は、そりゃ光栄なこった。スメイラとサイフィルは後処理、カルセはラズリと一緒にこの男見張れ」

「あのね?ほんとに何度も言うけど、便利屋じゃないの。偉そうにアタシに命令しないでバカ」

「バカはお前だ。お前の立場は『王命付特務医』、つまり『王命執行最高責任者兼異界対策統裁官』である俺の配下なんだ弁えろババァ。それに今回の厄介事はスメイラの元旦那に言え、ほらそこにいるだろクソババァ」

「アンタ嫌い!!!」

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