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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第十三話『定着』

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85話「格付け」

「こんにちは、本日の診療科はどちらでしょうか」

王立中央医療院の受付にて、受付職員がガーネを見てにこやかに声をかけた。

「ラズリ・フリュード・インディ医師を呼び出せ。至急だ」

「え?よ、呼び出し…ですか?診療中ですのですぐの呼び出しは…」

「『統裁官命令』だ、そう伝えろ」

「かっ、…かしこまりましたすぐに!」

受付職員がガーネの言葉と身なりで誰なのかを理解すると、慌てた様子で駆けていく。別の職員に来客用の応接室に通され、十数分後ラズリがその部屋にやって来た。


「なによ、わざわざ『統裁官命令だー』って偉そうに呼び出して。昨日アタシがわざわざ往診までしてやったのに、またどっか怪我でもしたの!?アンタと違って忙しいのよアタシは!」

「はいはい、そりゃどーもすんませんでしたラズリ『先生』」

ガーネの正面のソファに腰を落とし、どうにも小馬鹿にしたようなあしらうような物言いをする男を一睨みした。瞬間、ラズリはガーネをはっとした顔で上から下まで舐めるように視線を這わせ眉を寄せて口を開いた。

「……ガーネ、アンタ…昨日の今日でどうしたのその魂」

「お、気付くか。さすがだな。…まあ、今日はそれを見せびらかしに来た訳じゃない。単刀直入に『今回お前が使い物になるのかどうか』を知りたくて来た」

「はぁ?何様?」

「お前、ある程度は魔法使えるような話ししてたよな」


ラズリはガーネの確認したいことの意図がわからず、挙げ句上からものを言われて不機嫌そうに足を組んで背凭れに寄りかかった。

立場的なことを言えば、他の人間から叱責されて必至の態度ではあることは自覚はあるが、ラズリもガーネが女王に向けているものと同じように、『そんな事で怒る人間ではない』とわかった上での行動だった。無論、ガーネもこの場でそのような些細などうでも良いことに逐一目くじらを立てることも一切無い。

質問の意図と背景を辿るも、彼の特務に関わる案件であろうこと以外は想定出来ない。そこまで判断し、ラズリはようやく口を開いて返答した。


「……言っておくけど、そっちが専門じゃないから。あくまでアタシは医者、その前提で…どの程度をアンタが期待してるのかは知らないけれどね、まあ…カルセと同程度か、カルセよりちょっと使える程度。とは言え、カルセとアタシじゃ使える魔法の得意分野がそもそも違うし。アタシは治癒特化ではあるけど、『そういう医者じゃない』って話は前にもしたから説明不要でしょ?つまるところ、ゴリゴリに前衛に立って戦闘するタイプの魔法はあてにされても困る。けど────『人の壊し方』なら、誰よりも知ってるつもりよ。この回答で満足かしら」

「質問を変える。『呪い』とか、そういう方面は?」


ラズリは、その独特の幼い少女の顔で悪戯に笑みを浮かべた。

「どっちかって言うと、『そっちが本命』。呪い殺すのも呪い返すのも、ね。でも────」

「でも?」

「アンタ、アタシにそんなの頼まなくたって、自分で出来る魔力も霊力もポテンシャルは十二分以上にあるでしょ?」

ガーネは存外侮れない目利きをしている幼女を見て肩を震わせて笑った。


────サイフィルとは違う方面で目は利く。医者らしく、『必要の無いこと』は口にしない。口は悪いし喧しいが存外『弁えている』。


「俺は『使えない』ことになってるからな」

「左様でございますかー…で?アタシはお眼鏡にかないましたか、統裁官閣下」

「及第点、って言っとくか。可も無く不可も無く?必要になったらお望み通り使ってやるよ」

「……ハイハイ、合格ってことね。ありがとー存じますー」


用事は済んだらしく、「じゃあな」とさっさと退室するガーネを見送ってラズリは溜息を漏らした。

「…アイツの魂の固定、『誰がやったか一目瞭然』過ぎてキモチワル。元々性格良くないのに、もっと性格悪い方向に固定されてやんの。…ま、本人はなんとも思ってないだろうしどうでもいいけど」



*****



「ガーネこれ、お前が留守中にケントさんが至急手配してくれてさっき持ってきた」

特務室に戻ると、早速サイフィルから責任者権限のついた管理証書を手渡される。

「…いま、礼状手配はしてるんだけど…結構正規の手順飛ばしてるから時間かかってて」

「礼状?んな非効率なモン、俺の名前出していいからすっ飛ばせ」

「えっ」

スメイラは珍しく鳩が豆鉄砲を食らったような顔で黙りこくってガーネを見つめた。

「そんなん手配してる暇があったら、なくなった呪具の流出先とか洗え。裏に出てんのか単純に転売されてんのか、それによって話しも変わんだろ」

「わ、…わかるけど」

「わかるならやれ、今日中」

「………ハイ」

「俺は今日は戻る。カルセは各所調整、いらん所から口挟まれないように根回しだけしとけ」

「ガーネ僕は!?」

「お前が役に立つのは今じゃない、大人しくカルセとスメイラの邪魔しないようにしてろ」

「…はーい」

ぱたん、と扉の閉まる音が妙に大きく響いた。

「…カルセちゃん」

「?いかがなさいました?」

「ガーネ、どうしたの?」

「…さあ、わかりませんわ。でも、前にもお話ししていたじゃないですか。アレが彼の『本質』じゃないかしら、って」

「私、ガーネくんの欲しがってるもの手に入れて来るね」

スメイラだけは言語化出来ない何かを、『言語化してはいけない』と切り替え荷物をまとめた。

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