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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第四十五章『残響』

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598話「2分45秒」

ホルスターから拳銃を抜き、右手の人差し指が引き金に掛かるのとタイミングと同時に反射的にディアマントの四方を特務が囲み、その隙間を埋めるようにエーリックとジェレイド、魔導師長と巫術官長が立ち、前をアミュ、後ろをリエーブで配置を固めた。ヘルソニアもその脇で腕を組みながら周辺を見回し、ガーネの銃を握る右手が持ち上がるのを見てその方向へと視線を向けた。

「カルセ!」

「…序列はございません!」

ガーネの呼び声に、ガーネが『何を求めているか』を瞬時に判断したカルセが声を張ると、それに対しての返答のようにガーネの左手がスライドに掛かり弾いた音が小さく、風の音と共に響いた。

初弾が装填されると同時にガーネが地面を蹴り、数歩出たのと同時に銃声が1発響いた。そのまま腕の向きを変え2発目を発砲したところで、岩場の陰から男が数人飛び出し、ディアマントは思わず肩を跳ねさせてカルセの服をきゅっと握った。

「ガーネ!結界どうする!」

ラズリの声にちらりと視線を向けたガーネが、ディアマントたちから崖までの距離や退避可能箇所を含めた現状の立ち位置配置を少し離れた箇所から確認し、あまりの場所の悪さに小さく舌打ちを漏らした。下手に出力の高い攻撃が爆ぜれば、あの場所ごと近くの崖が崩落する可能性がある。

「何もするな!必要があればリエーブにやらせろ!とにかくまじで場所が悪すぎる下手に動くな!黙って盾になってろ!」

そのまますぐに視線を戻し、続け様に4発発砲したところで転がる『死体』の数と視認出来る『人間』の数を数えた。

「11、12…あと3匹隠れてやがるな」

魔道具か呪具の類を発動させた男の頭部を目掛けて1発撃ち込み、ほか視認出来るうちの3人も同じように地面に転がした。

残った視認出来る人間は2人、隠れている敵のおおよその位置は気配とこのまだ生きている敵の視線の配りから見当がつく。あまり実戦慣れしていなそうな粗末な足運びに、ガーネは容赦無く懐に数歩で踏み込み、引き金から人差し指を外してしっかりと握り込むと、男のみぞおち目掛けて鈍器代わりに銃身を打ち込んだ。

骨の軋み砕ける音と、声にならない呻き声とともに身体が崩れ落ち、完全に沈む前に男のこめかみを銃底で強かに殴りつけた。

鼻から出血し、口元からは血泡を吹いた男の頭蓋が完全に砕け陥没してずるりと身体が完全に地面に倒れ痙攣するのを見下ろし、腰のベルトに仕込んでいたナイフを取り出して左手に構えた。もう1人の男の背後に素早く回り首筋に突き立てて頸動脈から喉笛にかけてを切りつける。男が声を上げる間も無く切創から血が吹き出し、まだ息がかろうじてあるのを確認してから改めて首に腕を回して頭を固定した。そして次の瞬間には骨の折れるような、筋が弾けるような鈍く嫌な音が鳴ってからドサッと音を立てて、ガーネによって地面に雑に転がされた。

その音を合図にするように、建物の奥から現れた3人とガーネが睨み合うように数秒膠着した。


「…なんでガーネ、てっぽううつのやめた?」

「へ、え、な…なんでって、弾切れじゃないですかね」

アミュが近くにいたエーリックの服の裾を引いてちょこんと首を傾げて問いかける。それまで息を飲んで見守っていたエーリックが現実に引き戻されたかのようにハッとして返答をすると、後方からリエーブの「あら、やだ」という声になんとなく嫌な予感がした。

「ディアマントを渡らせる時に、わたしあの子から銃の中身を預かっていたんだったわ。どうしましょう。渡しに行ったら多分あの子、また怒っちゃうわよね。わたしあんまりあの子に叱られたくないわ。だってガーネ、叱る時怖いんだもの」

「…し…叱られる方が、…怖くないかもしれないです…」

日頃ガーネに『一番叱られている』サイフィルが小さく震えた声で口を挟み、ディアマントもガーネの様子を見てこくりと唾を飲み込んだ。


ガーネが敵の潜伏に気付きヘルソニアに報告をし、多くを語らない指示をスメイラとラズリにしてディアマントの身体を託して銃の『初弾を装填してから』ここまで、約1分30秒。

今まで鳴りを潜めていた3人の姿を確認し、カルセが再度声を張った。

「ガーネ様!」

「わかった」

皆まで言わずとも、この3人が『序列持ち』であることはカルセの名前を呼ぶ声だけでガーネには伝わった。

「わ、わかったって、本当におわかりいただけたのでしょうか」

カルセが小さく漏らすと、ディアマントは小さく笑ってカルセの手を握り返した。

「無論じゃ。あの男はアレで充分じゃ」



────3人とも『序列持ち』ではあるが、全員下位だな弱すぎる。つーことは『こんなところ』でこの人数で張ってたわけだ、『引率』がいるな。右と真ん中じゃなくて、『この中の頭は左』か。しかしよりにもよって頭は左の野郎か、ディアマント達の位置が近い。…あ、だから『あそこにいた』のか。ふーん、舐めやがって。



残った3人の微妙な立ち位置や気配、視線の運び方で誰がボスなのかを瞬時に見極めたガーネは、左手に握った血まみれのナイフを振りかぶって真ん中の男の頭部目掛けて投げつけた。そのまま右手人差し指は再度引き金に掛かり、右の男の頭部へ向けて引き金を引き、流れるような動作で左の男へと2発撃ち込んだ。

的確に左にいた男の膝と足の甲に銃弾が食い込み、ディアマントたちの目の前で崩れるように倒れた。


「女王陛下。制圧完了いたしました。至急『喋らせ』ますのでもう少々お待ちください」

すでに絶命した真ん中の男の眉間に投げつけたナイフを回収し、足だけを撃ち抜いた男の傍に歩み寄り頭を踏みつけて宣言をした。

ここまで、僅か2分45秒であった。

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