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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第四十五章『残響』

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596話「キャルクスティーン神殿」

「アミュ、500年ぶりにきた。しろ」

「城ではなく神殿よ、アミュ。ついでに記録上は634年振りのはずだけど、来たのならきちんと記録に残してくれるかしら」

「そういうのはアミュじゃなくて、れきだいの嚆矢が『もうアミュってばしかたない』ってやってくれる。だからリエーブも、アミュしかたがないがってきろくして」

「もう、仕方が無いわね」

思わずガーネがやや引き攣った顔をして相変わらずの魔女2人の会話を聞きながら、興味深そうに谷底を覗くディアマントの背後に立って腰のリボンを掴んだ。

「あんまり覗き込むな、落ちるだろうが」

「うむ。…噂には聞いておったが、これほどとは」

「噂に聞いて知ってたのに服装でギャンギャン文句垂れてたわけ?勘弁してくれよ。いいか、落ちたら『グシャ』だからな。ついでにあの辺の尖った岩に串刺しだ。落ち方にもよるけどまずは普通に全身の粉砕骨折、折れた骨が臓器に刺さって全身を強打したことによって重力もかかって内臓破裂、ひどいと圧力かかって目ん玉ボロっとこぼれて脳みそグシャ」

「ぐしゃ、ぼろ、ぐしゃ…」

「俺はまだ死にたくないから勘弁してくれ。ついでに言うけど痛いのも嫌だ」

「でもガーネ、多分『痛い』とか感じる前に即死じゃないのこの高さなら」

「綺麗に頭から落ちたら痛いとか思う前に死ねるだろうな。足から行ったら下手したらしばらく苦しいぞ、はは」

「ふふ」

「先輩とガーネくん、会話がエグいんだけど。陛下が珍しくドン引きした顔してるじゃない」

ガーネの発した擬音に落下時のことを想像するディアマントをよそに、ラズリとガーネが冷静かつどこか気の抜けた様子で会話をしているところに、スメイラが堪らずツッコミを入れる。

「わらわ、おちたくない」

すっかり怯えた顔のディアマントの顔に一瞬ムラっとしたガーネであったが、それを飲み込みつつ風になびいて顔に一房纏わりつく髪を指先で撫で取り頭をぽんぽんと撫でた。

「ただなぁ、向こうに行くにはまずはこの『橋』だ。かなり古そうだが…サイフィル、視終わったか」

「うん!古いけど、特に劣化が激しくて損傷しそうな箇所はないよ」

「よし。問題はあとは耐荷重だな…アメジ、お前一応聞くけど高いところ平気だよな?」

「平気だけど、なんで平気ってわかるの?きゃ!ガーネ様もしかしてあたしのこと…!」

「『バカと煙はなんとやら』と言うだろ。今日いるメンツではお前が一番重い。次がジェレイド、その次が俺、…衛兵総監体重は」

「俺?多分68くらいかな。去年の健康診断でちょっと太ったらヴィオリーに叱られてさぁ、ハハハ」

「けんこうしんだん!おっとのけんこうかんり!妾も!妾もする!!」

「ヘルソニア様、悪いんですけど一旦小娘黙らせてもらえます?…え、なんで顔背けんの?なんでシカトすんの?」

「私はもう小娘の子守の業務は其方に移管した。職務放棄をするな。間違えた、育児放棄か」

「こもり?いくじ?」

「とりあえず耐荷重確認したい、アメジお前先に渡れ。最悪縄切れて橋壊れてもお前ならどうにか出来んだろ、ついでに一応、リエーブとアミュもいるし俺も多少ならどうにか出来る。尊い犠牲になってくれ」

「なんか最後少し不穏じゃなかったガーネ様?エイミー嫌だわガーネ様」

「アメジ、俺のために頑張ってくれ」

「おっしゃぁ!!エイミー頑張るんだから!!!」


満を持してアメジが恐る恐る橋へと足を踏み出した。体重が掛かる度に、ハンガーロープと橋桁が軋む『ギシッ』という音が谷に反響して響く中、一同は固唾を呑んで見守った。

「アメジで体重が100くらいだから、アレが問題なく渡れりゃいけるだろ。まぁ橋全体のアイツの体重がかかった時の軋み方見る感じ、耐荷重150は問題なく行けそうではあるかなとは思うけど…念のため1人ずつ渡った方が無難そうだな」

「そうだね、今エイミーちゃんが通過したあの辺りの支え、ほんの少しだけど他より劣化してそう」

サイフィルが指差した箇所を見て小さく頷き、ガーネが小さく息を漏らした。

「スメイラ、お前は運痴だけど橋渡るくらいは出来んだろさすがに」

「うん!遺跡とかでもああいうのあるから、あのくらいなら平気!でも落ちた時の対処は出来ないかな!」

「心配すんな、落ちたら死ぬだけだ」

「………」

「ガーネ」

「はいヘルソニア様」

「私は基本的には臣下が生きようが死のうが、陛下さえ無事ならどうでもいいと思うタチだが」

「はい知ってます。アンタ俺のことだって別に死んでも『あ、死んだの?ふーん』くらいにしか思わないでしょ」

「そうだな否定しない。だが其方、そんな私でも一応言うが、『わざわざ怯えさせる必要があった』のか」

「うーん、俺が『ちょっとだけドS』だからですかね。知らんけど」

「ねぇスメイラさん、僕わかんないんだけど、『ドS』に『ちょっとだけ』とかあるの?『ちょっとだけ』ドSってなに?僕いつもガーネがわからない」

「もう誰も私に話しかけないで」


少しだけ離れた場所で、魔導師長と巫術官長がその光景を見て会話を聞きながら気の毒そうに特務の面々を見つめていたのは、また別の話であった。


そしてアメジが橋の中腹辺りに差し掛かった辺りで、ガーネが思い出したように顔を上げた。

「そういやリエーブ、あの神殿結界とかないのか」

「…そう言えば、あったかもしれないわね」

「どこにある」

「どこだったかしら。だって結界張ったのわたしじゃないもの。母様の母様だったはずよ、確か」

「お祖母様が?何年前だ」

「40…いえ、50年前?かしら。待って、母様いまいくつ?24歳のうら若き母様だけど」

「戸籍上は39だ。おいアメジ!結界あるか!」

「え?なぁにー!?」

ガーネが大声でアメジに声を掛け、アメジが振り返り返答する。

谷から舞い上がる風に声が掻き消され、上手く聞き取れなかった様子である。

そしてその風が、とんでもない『風のいたずら』を働いた。


「きゃー!」


アメジのスカートが風で捲れ上がり、アメジが悲鳴を上げる。

その『とんでもない』光景を正面から目の当たりにしてしまった一同絶句し、ガーネは間髪入れずにディアマントの目元を手で覆った。

「妾、知っておる!『どえろいしたぎ』じゃ!ガーネが好んで妾によく着せむぐ!!」

「余計な事言うなついでにアメジ貴様とんでもない呪物見せつけるんじゃねぇ!!!そのまま谷底に落ちて死ね!!!」

「えー、ひどぉい!ガーネ様あたしのパンティー見たんだから責任取ってよぉ!」

「素晴らしいモン見せてくれてありがとうよ!!お礼に猥褻物陳列罪の現行犯でわっぱかけてやろうか!!!」

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