↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第四十四章『壮行』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

591/629

570話「犬のお巡りさん」

数時間後、評定開始予定時刻30分前となり、スメイラたち特務とリエーブ・アミュは揃って評定の間へと向かった。

「……特務のお嬢さん方」

リエーブが声を掛けると、スメイラが振り返り首を傾げた。

「はい、リエーブ様。なんでしょうか」

「あの報道の件、ごめんなさいね。うちの子怒っていたかしら」

リエーブなりに気にしていた様子で、珍しく少しだけ眉を下げて申し訳なさそうな顔をして見せていた。

「全然怒ってませんでしたよ。というか、視線は気付いていたみたいでわかって放置してたみたいです」

「あら、そうなの?……あの子、怒ると怖いんだもの」

「あはは、本人も気にしてましたよこの前。『俺怒ると怖いのか』って」

「怖いわとても。わたし、あの子の母様だけれど怒られたらとっても怖かったもの」

「アタシたちも怖いわよ、女だろうと容赦無いからあの子」

評定の間に入ると、外遊前日の最終警備評定ということもあり大半が既に室内にいる状態であった。


本日の評定の参加者は魔女2名、特務全員、随行する衛兵隊士及び長である衛兵総監エーリック、近衛と近衛総監ジェレイド、随行する魔導師と巫術官及び魔導師長と巫術官長の警備要員。それから女王側近であるヘルソニアと、侍女長ミモゼ、女官長ジステル、侍従長ディーン。そして、今回の警備最高責任者であり女王の近衛騎士兼特務の長・特務総監であるガーネ。

そこそこの大所帯が集まる評定の間に、異質だらけの特務と魔女の姿が混ざると一気に空気が緊張して張り詰める。

「ねぇねぇリエーブ」

「なにかしらアミュ」

「おひるごはんまだ?」

「……先程いただいたのはなにかしら?」

「おいしいハンバーグと、おいしいピラフ」

「それはお昼ご飯ですよアミュ」

「アミュ、あれおやつかとおもった」

「………」

「………」

「ねぇそこの、これおやつ?」

「えっ?は、はい、おや、おやつです」

「アミュこれたべたい」

「評定が始まる前におやつがなくなってしまうわ」

席に配膳されて事前に用意されていた冷茶と小さなクッキーを早速さくさくと頬張り始めたアミュを見て、リエーブは少しだけ呆れたように肩を竦めた。


開始までまだ30分近くあるが、ディアマントが早々に部屋に現れた。

「へ、陛下!?まだ30分ほど早いですが…!」

「予定もなく退屈だったのじゃ。たまには妾もお前たちと普通に雑談がしたい。……迷惑か?」

「滅相もございません!」

返答を受けて嬉しそうににこりと笑みを浮かべたディアマントが席につくと、早速アミュがディアマントへと声をかけた。

「ディアマント、このおやつおいしい。おかわりほしい」

「控えの侍女に申し伝えよ。……来ておらぬのは、ガーネとヘルソニアくらいか?」

「あ、ええと、あのー……ガーネくんは『評定までには戻る』と言っておりました、すみません」

スメイラが慌てて立ち上がって謝罪をすると、ディアマントは苦笑いをしながらクッキーを1枚摘んだ。

「あの男の外出は妾も把握しておる。勝手に早く来たのは妾じゃ、気にするな。……して、普段お前たちはこういう時はどんな話をしておるのじゃ」


ガーネと付き合うようになってから、元々そこまで厳格な方ではないものの妙に臣下に対して気安い面が顕著になったディアマントに、一同流行りの娯楽の話しやら誰と誰が付き合っているだのと『よくある雑談』に興じて、ディアマントは楽しそうに笑みを浮かべた。

本来『構ってちゃん』気質なディアマントであるために、チヤホヤされるのはもちろんこうして話の輪に入ることがとにかく嬉しい様子で、最近の彼女の様子をよく見て知っている面々は多少の畏れ多さは感じつつも『こういう時』は敢えて普通に接していた。ディアマントも、公私の区別さえ付ければ多少砕けても咎めるようなことは無く、先の外遊で目の当たりにした『他国の元首への臣下の厳格過ぎる上下関係』を思えば、相当に我が国は大らかな国だと一同いい意味で再確認もしたものであった。

少ししてヘルソニアも部屋にやって来て、ディアマントの様子を見て一瞬だけミモゼに視線を向けるものの、それ以上は気にした様子もなく会話に耳を傾けていた。


「ところでディアマント。貴女、うちの息子と結婚してしまったらわたしのことは『お義母様』とでも呼ぶのかしら」

「呼ばぬ」

「何を言っているの、わたしはガーネの母様であって貴女の母様ではないわ」

「聞いておったか、妾は『呼ばぬ』と言っておるのじゃ」

「わたし前々から聞こうと思っていたんだけれど、貴女とうちの息子はどちらから交際を申し込んだのかしら」

「えーと……一応ガーネではないのか、多分」

「あらそう。プロポーズは?」

「ガーネからじゃ」

「ほんとかしら」

「嘘を言ってどうするのじゃ」

「なら、好きになったのはどちらが先なのかしら」

リエーブのその質問に、全員思わずディアマントの返答に集中するようにしんと鎮まりかえった。

ディアマントは少しだけ考えるように首を傾げ、記憶を辿るように目を伏せてからゆっくりと長い睫毛で縁取られたアーモンドアイを開いた。

「妾じゃ、多分」

「ふぅん。なら、巷で噂の『寵愛人事』というのはあながち嘘では無いということ?」

「きっかけのひとつではあるが、そもここにいる全員ガーネの頭の良さも強さも理解しておるじゃろ、そんな妾の寵愛人事程度でおさまるような器の仕事の出来ではない」

「そ、わたしの可愛い息子を正当評価してくれているようでよかったわ」

ようやくリエーブが小さく笑いながら、紅茶をゆっくりと飲んだ。


そして評定開始予定時刻5分前、評定の間の後方扉が開かれ参加者の最後の1人であるガーネが姿を現した。

「げ、……あれ、やべ。俺最後か」

「時間前じゃ、問題無い」

「あれ?ガーネなんでまた『警察官』の制服着てるの?」

警官制服の正装姿で前に進んできたガーネの姿を見て、サイフィルが声を掛けた。

「だから俺『警察行ってくる』って言ったろ」

「正装じゃん、懐かしいなソレ」

エーリックも声を掛け、初めて息子の警官姿を見るリエーブは物珍しそうな顔でガーネを見上げていた。

「辞令受けて来たからな」

「…………辞令?え?辞令?」

「陛下にオネダリしてた『寵愛人事』の受け取りに。ようやく正式辞令下りたから」

「だが妾は口添えはしたが、さすがに警察内部の人事には干渉しておらぬぞ。妾もお前がどういう辞令を受けたのか知らぬ、お前の希望通り『地方から王都への異動』しか指示しておらぬ」

「だって籍が地方だと色々動きにくいし。それに、体良く『凍結』扱いなもんだから権限通すのに無理矢理『特務総監権限』でゴリ押したりしてたから、結構面倒なんだぞ権限行使」

そう言って話しながら、小脇に抱えた封筒から辞令書と新しい警察手帳を取り出して全員の前でディアマントへと見せた。


「本日付で、ヴェルーティン王国警察ノードースト警察署捜査局第一課異常強行犯係主任捜査官、階級巡査部長・職務身分凍結扱いからヴェルーティン王国王都警務本部公安局第一課配属、警視に昇進いたしました。合わせて『無期限王城出向扱い』として警察権限全部戻して来ました。……これで心置き無く、警察の方のキナ臭い内部の方も探れます。公安なんて願ったり叶ったりだ」

警察官としてぴしっと敬礼をしてディアマントへ所属と階級を報告してから、いつもの悪どい顔で警察手帳を見せつけた。

「妾の犬は本当に警察官なのか、今まで嘘だと思っておった」

「はぁ?冗談だろ。俺一番最初の謁見の時『コレ』着てただろうが」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。