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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第四十四章『壮行』

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568話「御用達」

「いいですか。今日は忙しいです、俺が。午前中は陛下と来客の対応、陛下の昼食時間帯に来客の個別対応があります」

「個別対応?」

外遊出立前日、近侍朝伺で予定確認をしている最中に発されたガーネの言葉に、ディアマントは小さく首を傾げた。

「あの男は俺も『個人的に』付き合いがあるので。その後おそらく魔女2名王城到着見込みなので出迎え、それ終わった時間帯で少し出かけます。夕方の『外遊前最終評定』までには戻ります。評定の後は陛下は速やかに夕食と湯浴みを済ませ、明日に備えてさっさと休んでください。以上です」

「出かける!?どこに行くのじゃ!妾も喫茶店のモーニング行きたいっ!行ってみたいっ!!」

ガーネの外出に反応したディアマントが目を輝かせてちゃっかり自分も行きたいとねだるものの、ガーネはあしらうように鼻で笑ってディアマントの額を押した。

「おやつ時にモーニングもクソもねぇだろ。……かなり前にオネダリしてた奴の受け取り」

「オネダリ?…妾、お前になにかねだられたか。『どえろいしたぎ』か」

「ちげーよ、どエロい下着はいつでも歓迎するけど。オエィセ行く前に『寵愛人事が欲しい』ってねだっただろ」

「ああ、アレか。……ふぅん、妾の寵愛か。どえろいしたぎか」

「何言ってんのお前。つーことで今日は俺はものすごく忙しいからキビキビ動けよ」

「フン!」

「なんでだよ…」



一度特務室に戻り、短い時間でも済ませられる案件から順に処理をし、時計を確認して立ち上がった。

「忙しないわねアンタ、さっきあの女のとこ行って戻ったばかりじゃない。また行くの?」

呆れたように呟くラズリをちらりと見てから、思わずと言ったように小さく溜息を漏らした。

「なんか今日に色々集中した…とりあえず今日は来客対応同席した後、その来客後でここに連れて来る。スメイラにも言っといて」

「フーン」

上衣を羽織り直してからラズリの言葉通り忙しなく出て行ったガーネを見送り、カルセが立ち上がった。

「お客様がお見えになるのでしたらお茶菓子が必要かしら」

「どんな客なのかアンタ聞いてる?」

「いえ……とりあえず無難そうなものをいくつか見繕って参りますわ」

「アメジ、アンタ荷物持ち付き合ってやんな」

「はぁい。カルセちゃん、行きましょ」

サイフィルがつまらなそうな顔でアメジとカルセを見送り、ラズリへとちらりと視線を向けた。

「なんか僕いつも留守番」

「アンタが余計なことしたりやったりしたらカルセじゃ制御出来ないでしょ、あの子言い方が優しいから。アタシはアンタのこと容赦なく殺せる」

「怖い…」

「ついでに、ガーネの報道の件でアンタ余計な言わなくていい事平気でペラペラ喋りそうだから。アタシかスメイラ一緒じゃなきゃ無理」

「そんなことないよ!多分!」

「………」



*****



「お久しぶりデス女王サマ、特務総監?サマ!ご婚約おめでとございまス!」

「うむ、久しぶりじゃ。オエィセでは世話になったの」

「ほんとに奥サンなったね!良かったねガーネ!」

「まだなってねーっつの」

「今日はご婚約のお祝いで、ガーネに頼まれてた布いっぱいいっぱい仕入れて持って来たヨ!」

オエィセでガーネが個別に『情報屋』として裏で契約したメイジーエ人の商人・ヴィシュヴァが言葉通り大量の絹織物やレースなどを持参して『王室御用達』になって初めての挨拶兼外商にやって来た。

一通り形式ばった挨拶や雑談を済ませたあとに、ヴィシュヴァの付き人が広間にずらりと取り扱い商品である絹織物を中心とした布地やレースなどを並べて行った。

並べられた色とりどりの織物を目の前にし、ディアマントはうっとりと目を細めて絹の滑らかさを確認するように目に留まった美しい深紅の正絹を取り指先をそっと這わせた。

「……ふむ、相変わらず見事な織物じゃ。繊細で美しい」

「あら陛下。こういったレース、ウェディングドレス用にお探しになっておりましたわね。ピッタリではございませんか」

控えていたミモゼが1枚の繊細な模様のレースを目に留めて手に取ると、品質を確認してからディアマントへと見せた。ディアマントもそれを見て小さく頷くとヴィシュヴァへと視線を向けた。

「うむ。……もう少し、薄手で柄の細かいものはあるか」

「今日持参しているものの中には無いですが、ご希望のデザインあれば一から作るのも出来るヨ、職人に作らせる出来る!」

「なら、あとで侍女長と女官長にその件は伝えさせる。他のも見せよ」

「探してるのは結婚のドレスのだけ?ガーネに言われて『白多め』にはしたけど、他のも持って来てるヨ。ガーネは今日は買ってくれないの?前いーっぱい買ってくれたのに」

ヴィシュヴァが声を掛けると、それまでディアマントの半歩後ろにいたガーネが隣に並ぶように足を踏み出して声を掛けた。

「藍色に銀糸刺繍の織物が欲しい。あるか」

「あるよ、こういうの?」

「フーン。あと、ライトグリーンとボルドー」

「ボルドー?こっちのとこっち、あとこういうのもあるヨ」

「じゃあその手前の、それと奥にある水色のレースとそこの紺。……お前他欲しいのは?」

次々と指を差して商品を指定するガーネに呆気にとられたディアマントが慌てて布地に目を落とし直すと、一番最初に手にしていた深紅の絹地を再度手にした。

「妾、これ好き」

「そうか、じゃあヴィシュヴァこれも。請求書は俺の名前で、この後部屋にモノごと持って来い」

「……ガーネ」

気前よく大量に商品を購入し満足そうにしたガーネをディアマントはじとりと睨んだ。

「そんなにいっぱいどうするのじゃ。また浮気か」

「またってなんだ人聞き悪いな。何回も言うけど俺、女と付き合った数はそれなりにいるけど同時進行なんて不誠実な真似したこと一回も無いぞ。宝石ばっかだからたまにはドレスでも贈ろうと思ったけど、要らねーなら『噂のモーニングの相手』にくれてやろうかな」

「ダメじゃ!全部妾のっ!妾がいいっ!妾のーっ!!」

「落ち着いてくださいませ陛下、特務総監様のお選びになったものは全部モーニングのお相手ではなく『陛下にお似合いの色』ですわ」

ミモゼが苦笑いをしながら口を挟むと、それを見たヴィシュヴァも楽しそうに笑いながら付き人に合図を送った。

「見本帳用意してるのデ、気に入ったのあれば連絡いただけレバ。それと、希望あれば教えてくれたら作るヨ」

ヴィシュヴァの付き人が布の見本帳を女官長に手渡すと、その日の商談は一度そこで終了となった。

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