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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第九章『眷恋』

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54話「対照」

「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりでしょうか」

「俺はココア、コイツにはアイスレモンティー」

「かしこまりました、ご用意いたしますので少々お待ち下さい」


リルは正面に座る、昔よりも少し大人びたガーネをまじまじと見つめる。

「…なんだよ」

「あ、…アイスレモンティー…」

「違うのが良かったのか?」

「う、ううん。あってるの」

「寒くねーか、ひざ掛けあるぞ」

「…へいき」

「そ」

リルは顔を赤くして俯いた。

横柄な態度で足と腕を組む姿も、面倒そうに少し遠くに視線を投げる様子も、好きな飲み物を覚えていてくれた所や、相変わらず見た目のわりに嗜好が子供っぽい所、さり気なく気遣いが出来るところも、返事が雑なところも全部昔のままだった。なのに、昔よりも背が高くなって、身体つきもすっかり『男の人』になっていて、声も昔より少し低くなった。


「お待たせいたしました、ご注文のお品物でございます。ごゆっくりお寛ぎください」

ウエイターが目の前に配膳したグラスの氷が、からんと音を立てて液体の中で揺れる。

リルは急に緊張して、鞄から鏡を少しだけ取り出してちらりと鏡面を見てから目を伏せ「ふう」と小さく深呼吸をした。


ガーネは、いつの間にかリルの方に視線を向けており、一瞬視線が絡んだ。リルの方から緊張に耐えられず視線をふわりと外すと、ガーネも『釣られた』のかゆっくりと視線だけが周囲に流れるのを気配で感じた。

「…話し、したいことあったんじゃねーの」

沈黙を崩すようにガーネから声を掛け、リルはぴくりと肩が揺れた。

視線をガーネに戻すと、今度は曖昧にではなくしっかりと絡んでガーネの深紅の双眸に自分が映っているのが見えた。

────まっすぐに、目があう。



「……アレはモテるの納得するわ、ガーネくん」

「そうですわね。ガーネ様、見目も相当整っていらっしゃいますし…それでいてあの所作と気遣いは大抵の女性がお慕いされてしまうのも当然ですわ」

「で、でもさ!ガーネ性格は相当イカれてるし!僕がぶちのめしてやろうかな!」

「多分返り討ちに遭うと思うな」

ガーネの待ち合わせ時間より前に同じ喫茶店へ入店し、身を潜めた三人はそっと観葉植物の影から二人を見守っていた。

単純な興味本位に他ならない。

女王からの任で『すべきこと』は正直山のようにあるが、こちらの方が最優先事項である。

サイフィルたちはガーネに気付かれないように、引き続き注視した。


「えっと、あの」

ガーネはココアを啜りながらリルが喋るのを待つ。リルを見つめる目が、妙に真剣だった。

その視線の意味を考えたリルはもじもじと指先を弄りながら言葉を必死に探していた。

────どうしよう、ガーネが『あたしをみてる』


「あ、し、仕事!そうだ、仕事。別れたあと、卒業してから官職進んで警察官になったんだってね。マリたちがエリートじゃんって褒めてたよ。すごいね。警察官、夢だったもんね、おめでとう」

「…どーも」

「き…昨日も、さ、ガーネがちゃんと『お巡りさん』してるとこ見れて、なんか感激しちゃった。かっこよかったよ」

「引ったくられないように荷物気を付けろよ、女王のお膝元とはいえ貧富の差もそれなりにあるんだ。ゴロツキも多少いる」

「うん…あ、な、なんかさ、ゴロツキといえば!ガーネの態度が悪すぎて地元のヤンキーみたいなのに囲まれたことあったよね。アレ怖かったなー」

「……そりゃ悪かったな怖い思いさせて」

「…な……なんで、久しぶりなのにつれないじゃん。付き合ってたときは、ずっと優しかったのに。今日みたいにいっぱい気にかけてくれて、ぶっきらぼうなのに、優しかった」

ガーネは空になったカップをソーサーに置くと、さも面倒そうな雰囲気たっぷりに深くため息を漏らす。

「そりゃ、『付き合ってる自分の女』相手なら優しくもすんだろ」

「そうじゃなくて…!」

「……ハァ、めんどくせぇな。『今はなんで優しくしてくれないの』って言いたいんだろ。当たり前だ。だってお前、今は俺の女じゃねーだろ。優しくする理由がない」


リルは返事が出来なかった。

────そうじゃない。ちがう。いやだききたくない。おねがい、いかないでそばにいて、あたしのこと、ちゃんと『みて』。あたしのことだけみて、すきになって。


言いたい言葉は山程あるのに、言葉が出ない代わりに涙が出る。

「話しはそれだけか、俺は戻るぞ。こう見えて忙しいんだ。…今しがた、やることが出来たとこだしな」

ガーネはぶっきらぼうに言い放ち、会計伝票を持つと自分の発言のせいで涙を零すリルに目もくれずに立ち上がった。


「……サイフィル、お前だけ外出ろ。話しがある」

最初からそこにいることに気付いていたらしく、会計へ向かう前にガーネは観葉植物の向こう側に低く声を掛けた。



「な、なにかな。あ、違うよ僕たちほんっと偶然!……違うんだ悪かったってごめんって」

「────今から俺の言う事よく聞け。カルセに祈りの力を使わせろ。どれが『本物』かわからねぇ、なるべく周囲に悟られるな。それからお前はあの女を『鑑定』して尾行して俺に報告しろ。出来るな?」

「え、え、どういうこと」

「そのままの意味だ、上手くやれよ。タイミング見てカルセとスメイラを俺んとこ戻せ」


それだけ伝えてサイフィルに託すと、ガーネは人混みに消えて行った。

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