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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第三十九章『勘査』

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517話「ピッキングをする『悪い男』」

「──── ッはぁ、っは…さすがに、つかれた…」

一番最後にディアマントを背負ってワイヤーを登ってきたガーネは魔導師長、ラズリ、ディアマントと一番最初に自分が昇り降りした分と合わせて4往復したせいで、ディアマントを背中に乗せたまま息を切らせて膝に両手をついて息を整えた。

「ガーネ、ご苦労。苦しゅうない」

「はやく降りたらどうだ!」

「妾はまだ大丈夫じゃ、案ずるな」

「疲れたんだよ!!」

「?妾は疲れておらぬ」

「俺が!疲れたの!!重い!!」

「いつも妾のこと軽いと言うではないか!世辞か!嘘か!!」

「だー!!耳元でやかましい小娘!!」

腕の力が無さすぎて自力でしがみつき続けられないディアマントを支えるために紐で括ったり無駄にしなくていい姿勢の変え直しを何度もしたお陰で無駄に体力を消耗したガーネは額の汗を雑に腕で拭い、先に到着した一同で観察していた、大きさにして大人が12人全員で上に乗ってもまだ余裕のある大きさの『蓋』の傍へと歩み寄った。


「カル、聖、……せ、カ、カル、……カルセ様」

「な、なんですの。カルセでよろしいですわ」

ジェレイドのあまりの吃り具合にさすがに苦笑いをしたカルセがジェレイドの顔を見上げて首を傾げ、ジェレイドは要件を言う前に何度か深呼吸をし始めてガーネは苛立った。

「チッ……クソザコヘタレが…!おいカルセ、お前の言ってた『蓋』はこれで間違いないか」

「間違いございません、これですわ。今登って来ましたあの『階段』も、覚えがございます」

「でもなんでこんなところに入口があるの?ていうか、これほんとに入口?」

ラズリが取っ手に触れて首を傾げると、スメイラも蓋の形状や劣化具合を確認するように軽く手で撫でた。

「多分ですけど、この神殿は『入れる時期が決まってる』んじゃないかな。カルセさんが前に来たのは雨季明け、それも大豪雨のあと。比較的新しい浸水のシミの数メートル下……丁度、あの階段の始まりくらいの高さで、古い蓄積された濡れたあとが残ってる。多分、雨季はこの泉、増水するんじゃないのかな」

「俺もそう思う。現に、思い返せば迎賓館の湖からこっちの泉まで、緩やかだけど下ってるしな。ここが『増水前提の入口』で、俺が入口かと思ってたのはダミーの見せかけの入口、もしくは別の目的の何か。ただ、気になるのは『増水したことが前提の入口』なんだとしたら…相当雨降るだろ、なんでこんな蓋の形状なのかなとは思う。中浸水するじゃん、普通に考えて」

スメイラとガーネで建物構造を一通り考えてはみるものの、中に立ち入ってみないことには状況はなにもわからないかとガーネも改めて扉に手を掛けて引き上げてみる。しかし、先程簡易的に確認した通り開くような気配は無いために鍵穴を覗き込んで奥の方を確認した。

「……術式とか結界はない、普通の鍵だな。まぁここに入る前に聖結界を突破しなきゃならねぇとなるとここは普通でもいいもんなのかどうなのか。蹴破る?」

「いけませんわガーネ様」

強行突破をしようとするもカルセに即答で止められ、ガーネはラズリに手を差し出した。

「なによ」

「ピッキングする、ヘアピン」

「アンタほんとに警察?」

「一応現役」

ラズリがヘッドドレスを固定するピンを1本抜き取るとガーネに差し出し、妙に手馴れた手付きでヘアピンを伸ばして軽く歪め始めたのを見て、エーリックは呆れた顔をしてガーネの手元を見下ろした。

「……俺は官職課程時代にお前にそんなこと教えてねーぞ」

「フン、残念ながらコレを俺に教えたのは『ノードースト警察署長』だ」

「げ、あの人。悪いこと教えやがって」

エーリックの言葉にディアマントがきょとんとした顔をして、ガーネと衛兵総監を交互に見た。

「?衛兵総監よ、このカチャカチャは悪いことなのか」

「基本的には悪いことでしょうね。泥棒が家屋侵入する時に勝手に錠前こじ開ける手段なんで」

「ならピッキュンのガーネは悪い男か」

「そんな間抜けな詠唱のなにかを使った覚えはないし、『税金使って贅沢してる女王様』には言われたくねーや……っと、開いたぞ。さすがに普通の鍵はチョロいな」

使い物にならなくなったヘアピンをその辺に放り捨てて取っ手を引いて蓋状の扉を両手で持ち上げると、古めかしくいかにも重そうに軋んだ音がくぐもって響いた。

「暗い。明かり」

「はい」

スメイラが既に用意していた魔法石を灯してから差し出すと、緩やかな階段がゆっくりと下に向かって続いていた。

「先頭俺、隣にサイフィルが来い。陛下は俺の真後ろ。カルセは陛下の隣、ジェレイドはその後ろで、ヘルソニア様はジェレイドの隣。ラズリとアメジで陛下とカルセとヘルソニア様を守護する形で横について、狭い所は適宜隊列変えろ。スメイラはその後ろについて隊列指示、殿は衛兵総監と師長と官長で頼みます。サイフィルは明かり持ってとにかく周辺視ろ。それとスメイラ、お前はこれ持ってろ」

サイフィルに魔法石を手渡してガーネ自身はホルスターから銃を抜いて構えると、スメイラに自分の警棒を投げ渡した。

「ガーネ、妾も武器が欲しい」

「なんで?」

「妾手ぶらだからじゃ」

「カトラリーより重いもの持ったことのない女がなにを。大体アンタ、そんな武器なんかなくなってそこそこ戦えるでしょ、魔獣微塵切りにしてたくせに」

「妾、おしとやかだからそんなことせぬ」

「いやしてたよ、木っ端微塵」

「はて」

十数段の階段を下ると少し空間が拓け、入口から入ってきた時よりも広い階段が更に階下へと続いていた。

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