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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第三十九章『勘査』

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510話「国家公務員」

翌朝、朝食を摂った一同は改めて桟橋へと集合した。

本日は今回の外遊第二のメインイベントである、神殿視察である。

「なぜ今日は騎士と違うのじゃ」

「今日はいいかなぁって。暑いし。身内だけだし。あれだ、クールビズってやつだクールビズ。大体女王陛下様が正装じゃなくていいって言ったんでしょ。俺だけ騎士服なんて、暑くて船でまたゲロ吐いてもいいのか」

「よくない!」

久しぶりに官服に袖を通したガーネであったが、上衣はさすがに脱いでおり、それでも一応『女王の護衛』として最低限、ベストとネクタイはしっかり着用していた。

他の面々も、昨日までの室内での会談とは異なり外へ赴くため、日中の気温が50度に近くなる灼熱の中での正装は危険と判断し女王命令で略装の指示が出ていた。

ディアマントも、暑さ対策にノースリーブ袖のミモレ丈の鮮やかなピンク色のドレスに、孔雀色のショールを羽織り、普段とは異なり可愛らしくツインテールで髪を結わえていた。

「ところで妾の犬よ。今日の妾はどうじゃ」

昨日思っていたのと違ったリアクションを食らったディアマントは、やや警戒した顔でガーネの顔を見上げた。

「可愛い、その色のドレス好き。腕出てるのは気に入らねぇけどまぁ暑いし、ショール羽織ってるしいいか。またそのショールにしたの?他のも買ったじゃん」

「一番のお気に入りはこれじゃ。今日のドレスにも合うと思った」

「可愛いよ」

「……どのくらい?」

「世界一」

にんまりと得意気な顔で笑ったディアマントを見て小さく笑いながら、ディアマントへと手を差し出した。

「世界一愛らしく美しいお姫様、お手をどうぞ」

「うむ!」

ようやく機嫌の治ったらしいディアマントがガーネの手を取り、ドレスの裾を押さえながら遊覧船へと乗り込んだ。


聖域へ立ち入れるのは、カルセの結界解放と中和による時間と消耗を考慮し最低限での随行となった。

女王ディアマントを始め、側近のヘルソニア、ジェレイド、エーリック、魔導師長、巫術官長、そして特務一同スメイラ、ラズリ、サイフィル、アメジと、聖女のカルセ、最後に『律衡家本家嫡流』であるガーネの12名。

船はゆっくりと運河へ向けて進んでいき、ガーネはディアマントの隣でデッキのソファへ腰掛け遠くを見て過ごしていた。

「ガーネ、向こうの木の根元の花の…、……ガーネ?」

流れる景色を眺めて先日とはまた違った視点で周辺を眺め、興味深そうに王都とは違う植物を見つけて『あれは何か』と問いかけようとして隣のガーネを見ると、ガーネは酷く真顔で真正面を見つめていた。

「…ガーネ。どうした」

「……ディアちゃん」

「なんじゃ」

「きもちわるい」

「どうしてじゃ!はやい!はやすぎる!!ラズリ!!」


早速船酔いをしたガーネの世話を焼きながら、ディアマントは洗面所で嘔吐くガーネの背中を呆れた顔で撫でてやった。

「なぜお前はそんなに乗り物に弱いのじゃ。なになら酔わずに乗れるのじゃ」

「おまえかな…うぶっ」

「バカな冗談を吐かす元気があるのならさっさと全部吐いてしまえ、バカモノ」

少しして霊脈の真上を通る運河に船が入ると、ようやくガーネの船酔いも落ち着いてきた様子ながらも気持ち悪そうに青い顔でソファに寄りかかっていた。

「…カルセは俺に冷たい水を用意して、スメイラは俺に冷たいおしぼり用意して、ラズリはいつもよりちょっと優しくして、そしてディアは俺のこと甘やかして…じゃないと俺気持ち悪くなっちゃうから…」

「アンタ、1回落ちて泳いだら?こないだアタシらのこと放り投げたじゃない、今度はアンタが放り投げられたら」

「俺はお前らと違って着衣水泳でも寒中水泳でも氷下潜水訓練も受けてるから、こういう水ん中なら30時間は浮いたりなんなりして過ごせるんだよ」

「………警察って軍隊?アンタ警察の時どんなことしてたの?」

「俺?まぁ普通に道案内とか、交通整理とか、書類作ったりとか、予算立てたりとか、あとは殺人犯検挙とか要人警護もしてたし、テロ組織潰したり、違法風俗店摘発とか、詐欺組織潜入とか…まぁ色々。『人並み』に」

「多岐に渡り過ぎじゃない?」

「人並みだろ」

「ガーネはほら、いわゆる『キャリア官僚』の男だからな」

幼少期のガーネを知っていてかつガーネの官職課程時代の教官も務めている先輩であるエーリックが口を挟み、ディアマントがちょこんと首を傾げた。

「きゃりあかんりょうとはなんじゃ」

「人並みの国家公務員」

「ふむ、人並みか」

「陛下アンタね、学力テスト満点の『国内最難関官僚課程院飛び級出身』の男がただの国家公務員なわけないでしょ。超優秀出世街道ど真ん中男よ」

「ならガーネは、今もし城にいなかったらどうなっておった」

「えー?知らんけど、王城来る直前が主任だったからなぁ。どうなんだろ。人並みに出世はしてんじゃねーの」

「…衛兵総監、主任ってどのくらいなんですか?」

スメイラも少し興味がある様子で問いかけると、エーリックは酔い覚ましに水を飲んでいるガーネを見て「うーん」と漏らした。

「主任で巡査部長、通常は巡査からだからガーネは卒業してすぐ現場リーダークラスだな。多分、こいつの仕事の出来過ぎ具合を考えたら下手したら課長…警部くらいには順当に今時点でなってたんじゃねーのかな。ま、そんなん足元にも及ばない階級だけどな、今は。なにせ国の中での権限ほとんど持ってるわけだし、先輩である俺より立場上なんじゃねーの」

「そんなことあるか。総監としての権限は大体同じじゃねぇのか。…まぁでも、総監に昇進する前もなにせ俺『寵愛人事』って散々言われてたし。下半身で仕事取った男と言われてたか。下半身使ったのなんか騎士になってからだけどな」

「かはんしん?ガーネ、走ったのか」

「お前はくっだらねー恋愛小説ばっか読んでるくせに。だから小娘って言われんだよ」

「???」

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