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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第三十九章『勘査』

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493話「鷹の血」

「ディアマント女王陛下」

「なんじゃ」

「その耳元と首元の『ルビー』、非常に美しい。輝きが深く鮮烈で、貴女にとてもお似合いです」

「お褒めの言葉感謝する」

「まぁ、ほんと。『ルビー』だわ。いいルビーなのかしら?ディアマント女王陛下」

ラヴィハの言葉に反応したスリラハがようやくディアマントに目を向け、値踏みするようにディアマントのアクセサリーを見て意味ありげに笑った。

「……ピジョンブラッドじゃ」

「あら、ルビーの最高峰ね。ふぅん、お兄様?」

ディアマントも言葉の端々に感じる違和感に少しだけ返答に間が空き、隣のヘルソニアをちらりと見てから困った顔でガーネを見た。

ガーネ自身も何か引っかかりを感じつつ、何かルビーに意味があるのだろうとは思い自身の下調べ不足に内心で舌打ちを漏らした。

不安そうなディアマントを安心させるために耳元に口を寄せ、「大丈夫だ」とだけ短く伝えてすぐに姿勢を正した。


「ディアマント陛下、お菓子とお酒でしたら貴女はどちらがお好きですか」

「…酒じゃ」

ラヴィハのディアマントの呼び方が『ディアマント女王陛下』から『ディアマント陛下』と突然変わったことで、ガーネはラヴィハが明確に距離を詰め始めたのを感じて懸念が僅かに輪郭を帯び始めたのを確信した。

しかし、事前情報の通り『奥手』なのか、話題はどれも当たり障りのないものばかりであった。

「ディアマント女王陛下、私ひとつ気になっていたことがあるんですの」

「なんじゃ、スリラハ皇女殿下」

「ディアマント女王陛下の護衛騎士、貴族ですの?」

「…妾の騎士に、爵位はない。法の上では貴族ではない」

「やだ、平民ですの?平民が王族の騎士?」

「平民ではない。当国の重要旧家の当主で、爵位がないだけで扱いは公爵相当じゃ」

「あら!ふぅん、そうなんですの」

その瞬間にスリラハの目が獲物を捉えるような眼差しでガーネを見つめ、ディアマントはむっとしつつもある意味『いつものこと』であることとこの場で表立って何かを言うわけにもいかず、無言でナイフで一口大に切り分けたエビを口元に運び、赤ワインを飲んだ。


「────…そこの侍女」

ガーネは軽く手を上げて指先で合図をしてスメイラを呼ぶと、比較的ガーネの近くにいたためすぐに傍に近寄った。

「お呼びでしょうか、特務総監様」

「Verify 'Hawk's Blood', priority one.」

「…承知いたしました、すぐに」

侍女服に身を包み、敢えて普段書類仕事をする時にしか掛けないメガネ姿のスメイラがスカートの裾を持ってカーテシーで頭を下げ、ガーネの指示に従って確認に向かった。


────至急、『鷹の血』の確認をしろ。

『鷹の血』、ピジョンブラッド。

スメイラも当然先程の会話は聞こえていたし、余程警戒したのか周辺に聞こえても『絶対に誰もわからない、この世界では存在しない言語』で指示したガーネのその言葉で『何を拾って来い』と求めているかはたったあれだけの言葉で理解するには十分だった。


「ディアマント陛下。ご趣味は?ご公務でお忙しいかとは存じますが、お手すきの際は何をなさっていますか?」

「ええと…読書じゃ」

「奥ゆかしい。どのような本をお読みですか?」

「最近だと、流行りの小説を読むことも多いが貴国の歴史書と神話を拝読した。神話の、マハー・シャクティヒの『地ならしと砂の城』の話が非常に興味深かった」

「我が国のことをそんなにお調べいただいたのですか!感激です。お美しいだけでなく奥ゆかしく、勤勉で聡明だ」

「そのようなことはない、『人並み』じゃ」

「謙虚なところもまた素敵ですね」

「ほほ、『人並み』じゃ」


ガーネが多方面に警戒の目を向けつつ、食事は進んでいった。

例の『導師』も相変わらずヴェールを付けているために表情は伺い知れずではあったが、サイフィルとラズリを監視で配置させているために今のところは特に変な動きは無さそうで、不穏な感情だけがどんどん膨れていった。


「ディアマント陛下、どのような食事がお好みですか」

「あまり好き嫌いはないからどのようなものも食すが、オエィセの郷土料理はとても好みで美味しく食べている。貴国の文化とも混ざっていると伺っているが、皇国の食事はどのようなものなのだ」

「基本は同じように、砂漠で寒暖差が大きい土地ですので保存が利くように香辛料を多く使用しています。味付けも、比較的近いかもしれません」

「そうなのか、ならば貴国の食事も是非口にしてみたいものじゃ」

「ディアマント様…ええ、是非」

その瞬間、どこかラヴィハの表情がうっとりとしたものに変わりディアマントを見つめる眼差しが明確に変化した。ガーネも同性だからこそわかる、『男の目』だった。

ディアマントも違和感に僅かに肩を揺らしたものの、本能的に目を逸らしてガーネを見ることも出来ずラヴィハと見つめ合う形となってしまった。

近くに控えるように立っていた導師・タマスが初めて動き、ラヴィハの元に近寄ると両手を合わせ合唱をし、ラヴィハが頷いたのを確認してからタマスは耳元にヴェール越しに唇を寄せ、何かを囁いた。

ヴェールのせいで唇の動きが読めず、声が拾えたかを確認するように同じく招待客として卓についていたカルセに視線を向けると小さく首を振った。

聞こえなかったか、聞こえたにしてもメイジーエ語で理解出来なかったかのどちらかであろうとガーネも小さく頷いて視線を戻した。

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