↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第三十八章『追憶』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

466/581

447話「魔女再来」

数日後、外遊前の最終調整評定の前日の夕方のことであった。

王城玄関ホールは酷くザワついていた。

「こ、これは…あの…ようこそ?ようこそで合ってるのか、ちげーな、なんだこれ。どうしたらいいんだジェレイド」

「私にはわからない!ガーネを、早く特務総監を呼べ!」

たまたまその場に居合わせてしまったジェレイドとエーリック、そして数人の近衛と衛兵や侍女たちが一様に膝をついていた。

どうしていかわからなかったのである。


「特務総監様!」

特務室のドアが勢い良く開け放たれ、衛兵が飛び込んできた。

久しぶりのこの感覚に、特務室の中は一気に緊張した空気が張り詰めた。

「どうした」

「た、と、と、たっ!とにかく!とにかく来てください!すぐに!」

「落ち着け、すぐ行く」

脱いでいた官服を羽織り、緩めていたネクタイを締め直したガーネが立ち上がると、特務の面々も互いに小さく頷いて立ち上がった。

外遊前に均衡の連中が攻めてきたのか、どういった案件だろうかとガーネは銃だけ急ぎ握りいつものように残弾数を確認しながら呼びに来た衛兵に続いて玄関ホールに向かった。

「ガーネ!!」

「…………は?」


玄関ホールに現れた特務もといガーネの姿を確認したジェレイドの緊迫した声がホールに木霊して、ガーネの間の抜けた声が小さく響いた。


「なにしてるんですか、母上」

「なにって、みんなわたしに急に跪いてしまって母様も困っていたの。どうにかしてくれるかしら」

「……おい、お前ら頭上げろ。なにしてんだ。城ん中で女王以外に膝をつくんじゃねぇバカタレが。……で、母上は何しに来たんですか」

「母様の戸籍の件と、ついでだから登録の名前をね。旧姓でやっていたから、この機会に姓を変えようと思って。あとせっかくだから息子に王都を案内してもらって、母様と一緒に語らいの時間を持ちたかったの。この前ノルデンに来た時はガーネ忙しくしていて、あんまり母様とお話してくれなかったから」

「来るなら来るで連絡もらっていいですかね。俺も普通に忙しいんですけど」

「まあ怖い。5歳の頃のガーネは『はいははうえ』ってなんでも言うことを聞いて、母様の後ろを着いてよちよち歩いていたというのに」

「お前の中でいつまで俺は5歳のガキなんだ!だいたい案内って言ってももう夕方だろうが!」

「なら、母様と夕飯を共にいたしましょうね。母様、昔ルイと一緒に来た魚料理の鉄板焼きのレストランに行きたいわ」

あまりにもマイペースに自分の要求を押し付けてくる母親相手に深々とため息を漏らしながら、未だ緊張してどうしていいかわからなそうな玄関ホールに居合わせてしまった一同に「解散解散」と雑に指示をしてから特務に視線を向けた。

「……ラズリ。多分その店南区の店だと思う、予約しといて。2人分。…それとスメイラは陛下に緊急で謁見の取次して来てくれるか。どうせ話聞いてると思うけど」

「母様、別にディアマントに会いに来たわけではないですよ」

「知ってるけど城まで来て女王に挨拶もしないで出ていく無礼であって欲しくないんだけどな!お前自分の息子が王城でどういう立場で働いてるかわかってる!?」

「母様に向かってお前だなんて言ってはいけませんよ」

「はいはいごめんなさいね!!!」

予期せぬ『嚆矢の魔女』の登場に王城内は非常に騒然とし、ガーネは相変わらず感情の読み取れない表情の母親を特務室へと連れて行き、入口側では無く奥のソファスペースに押し込むように座らせた。

「リエーブ様、紅茶と珈琲どちらがお好みでしょうか」

「紅茶が好きだわ」

「かしこまりました、ガーネ様も同じでよろしいですか?」

「なんでもいい適当で」

物珍しそうにキョロキョロと室内を見回しながら、座った直後にも関わらずに立ち上がって室内をうろつくリエーブに、アメジとサイフィルは緊張した様子で両手を膝に置いて硬直していた。少しして謁見の取次依頼を済ませたスメイラが部屋に戻るとやはりぎょっとした顔で緊張気味に自席に腰を下ろし、縋るようにガーネに視線を向けた。

「仕方ねーだろ、玄関ホールであんな状態になるのに放牧していられるかよ。母上、大人しく座っててもらえませんか。みんな萎縮するんですけど」

「あら、どうして?みんなガーネがそんなに怖いの?ね、ガーネはお仕事中怖い?」

「こ、怖いです。すぐ怒鳴るし」

「サイフィルてめぇ余計なこと吐かすなぶち殺すぞ」

「ヒィ!!」

「……あら、まあ。貴方、『加護』の目だわ。どんな祝福かしら。よくお見えになるでしょう」

リエーブがサイフィルの目を見て興味深そうに顔を覗き込むと、途端に別の意味で緊張したように身を強張らせた。

ガーネと似ているとは言え、男女差はあるその顔立ちは普通に顔面偏差値の高い女性の顔であり、色白の肌に長い睫毛、碧眼の透き通るような瞳と真珠を溶かしたような淡い真珠灰色の長い髪が特徴的な見た目は20代半ばの美しい女性であった。

「リ、リエーブ様ってお綺麗ですね」

「ええ、よく言われるわ」

「子持ちには見えませんね」

「よく言われるわ」

「ぼ、僕!独身なんですけど!!」

「殺すぞサイフィル、人の母親を口説いてるんじゃねぇ」

「まあ、わたし今口説かれていたの?」

「サイフィルよく聞け。未亡人とはいえ人妻だ。ついでに言うけど見た目は24かもしれねぇがラズリよりババアの39だぞ」

「母様、子持ちに見えませんて。20歳の息子がいるのに」

「アンタはややこしくなるから黙って座っててくんない!?ほら、カルセが茶ァ淹れてくれたんだから!!」

「つれない息子。小さなころはもっと可愛かったのに、今はちっとも可愛くないわ。こんなに図体だけ大きくなってしまって、偉そうで。母様少し寂しいわ」

「わーったっつの!やかましいな!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。