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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第三十七章『探査』

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427話「苦手なもの」

「ところでヘルソニア様」

「なんだ」

ちょっと、と一行から少し離れたガーネの隣に移動したヘルソニアは、ガーネを横目で見て声を潜めて問いかけた。

「文脈はわかりません。拾えた単語だけ……『城の使者』『警戒される』『呪術』。路地裏の怪しそうな連中の会話です」

「……やはりな。なんとなく、嫌な霊力の気配はずっと感じてはいる」

「ただ、さっきの店主みたいに好意的なのもいるんで一概にメイジーエの国の人間がどうとは言わないし思わないですけどね。さっきの店主は鎖骨に刺青があったんで、アレは根っからの『商人』ですし嫌な感じの霊力の巡りも感じなかった。何より多少の観光地価格の値段盛りはありますけど、本人も言ってた通りわりと適正価格で商売してますね。もう一、二軒ランダムに買い物でもしてみますがヘルソニア様何か欲しいものはないですか。言語練習がてらちょっと喋りたいんですけど」

「ふむ……しかし私はあまり物欲が無いからな。陛下は物欲の化身だから陛下に買ってやれ、それと其方が扱き倒している特務にでも見繕ったらどうだ。強いて言うなら、鉱石を少し見たいくらいか」

「陛下にはあと何か鉱石見る予定です。これだけデカイ霊脈あればいい石ありそうなんで。なら、鉱石見に行きますか。ついでに暑すぎてしんどいんで、アイスか氷食いましょ」

「其方、観光客のようだな」

「まじで暑いんですもん、よく全員平気な顔してますね。許可する気なかったけどディアマント様の水遊び許可してやろうかなと思うくらいには暑いです。汗も出ねぇ」

「まぁ、ノードーストもノルデンも真夏でも最高気温25度いかねぇしな。俺は生まれは北だけど育ちは王都近郊だし、北で生まれ育ったガーネには日中のこの45度超えはしんどいだろうな。オジサンがなんか買ってやろうな」

あまりにも暑がるガーネを気の毒に思ったのかエーリックが近くの露店で冷えた水の入った瓶を買い与えると、ガーネはそれを飲んで気分悪そうに眉を寄せた。

「水分補給も大切だがあまりガブガブ飲ませ過ぎるな、水中毒を起こすぞ」

「多少は平気だろ、加護付きの湧き水だし。とは言え普通に気持ち悪い、誰か塩かなんか持ってねーか」

「そこの屋台で干し肉売ってそうだな」

人の良さそうな顔で屋台で声を掛けているメイジーエ人を一瞥し、ガーネは鎖骨の入れ墨と左手の包帯を確認して全員に視線を向けた。

「せっかくだし全員食うだろ」

「そうだな、どんなものか食べてみたい」

「ちょっと練習したいから俺が買う。…バーサー・アビヤーサム・カロァーミ、えーと…クニカァム・サハーヨー・バヴァ。サァーマァーニヤタハ・マンダム・ヴァダ」

「アサトゥ」

「あー、…バクサヤン・ヴィハルツム・イッチャーミ、ラヴァニタム・デーヒ。サルヴェ・クレツィヤーマハ、クーパヤ・ムーリャム・ハラサヤ」

「ハァ?ドルヴィニータァー・プラータナー!プレークサナールタム・アーガタハ・ヴァー?アドゥヤ・エーヴァ・ケーヴァラム」

「アヌグリヒト、マハァヴィーラ。……ウッチャーラナム・シュッダム?アヴァガチュタハ?」

「イーサド・アパブラムサハ・スルーヤテー、タターピ・プラヴィーナハ・アスィ。ヴィデーセー・アディータム?」

「ナ・ヒ、サヴァヤム・エーヴァ・アディータム」

「はー、大したもんだな兄さん。サービスだ、オマケしてやるよ。勉強頑張りな」

「はは、サヴィーカロァーミ。ところで良い鉱石屋近くにない?」

「鉱石か。そこの通りを右に行ったところは大きくて老舗の店だ、商人の買い付けにもよく人が訪れる」

「へー、じゃあそこ行ってみる」

この短時間で擦れ違った通行人の会話を一度聞いてそこそこ流暢に会話が成立する様子を見て、一同は感心するのを通り越して恐ろしいものでも見るような目でガーネを見つめた。

「ガーネよ、お前さんメイジーエ語はどこで習得した」

巫術官長がおずおずと問いかけ、ガーネは「うーん」と少し考えるように唸りながら受け取ったばかりの干し肉を紙袋から取り出して口に咥え、全員に配布するように差し出した。

「多少の単語とか文法とかは、外遊が決まってから図書館で本とか辞典見て覚えたかな。発音はなかなか耳馴染みないからここに来て通行人のメイジーエ人のメイジーエ語聞いて実際喋ってみてる感じ」

「……今は、どんな会話をしていたんだ君は」

「今?『言語練習中だから少し付き合え、ゆっくり喋って欲しい。食べ歩き用に全員分買う、だから少し値引きしろ』に対して『図々しいな、今日だけだぞ観光か』って。で、『発音あってる?聞き取れる?』って聞いたら『訛りは強いけどそこそこ上手だぞ、留学でもしたのか』『独学だ』って会話。…肉しょっぺー、水くれ」

「ガーネ、君…頭が良いとかの次元では無いのではないか」

「あー確かにな。ガキの頃から頭良いとは思ってたけど、ちょっとどころじゃなく異常だよな」

ジェレイドとエーリックがガーネの尋常ではない頭の良さに怪訝そうな顔をしながら水を差し出し、同じように干し肉を齧って食べた。

「IQが高いのかもしれんな。だがそれだけ頭が良いと苦労しそうだ」

「そんなことないと思うけど。さっきだって結構発音直されてたし、大体俺が頭良かったらもう少し人生イージーに過ごしてんだろ。わりとハードな人生送ってると思うけど…あ、ヘルソニア様あの店みたいです。いい鉱石屋」

干し肉の残りを頬張り水で流し込んだガーネは、先程の露店の店主の言っていた通りに面した大きな鉱石を扱う商店の看板を見つけて指を差した。

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