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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第三十七章『探査』

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418話「測定」

「色々と調べてみたのですが、ウィーストの駅からオエィセまでの道は一本しか無さそうですね」

外遊にあたっての下見の評定が開催される中、今回の警備最高責任者に任じられたジェレイドが地図を広げて一同を見回した。

前回とは異なり道は一本となると、隊列を含めてまた別の懸念が生まれる。下見参加予定メンバー一同、小さく唸りながら少し黙り込んでしまった。

「万が一襲撃に遭った時の逃げ場が無いってことか…無闇に砂漠に立ち入るのは危険だしなぁ」

エーリックも少し困った顔で地図を眺め、腕を組んで考え込んだ。

「参考までに聞くが、西の出身者はいるか。俺は知っての通り北の出身で西は詳しくない。この辺の地理詳しいのはいないか」

ガーネが口を開き問いかけるも、一同小さく首を振った。

それを受けて小さく溜息を漏らし、事前の話通りこの場ではなく下見を経て詰めるしかなさそうかとジェレイドへ視線を向け直した。

「…現地見てみないとわかんねーな、実際の舗装具合も道幅も地図じゃ読み取れねぇ。砂漠地帯とは聞いてるがどの程度の砂漠なのかもよくわからん。俺は、西の方はビーテンまでは行ったことはあるが、あの辺りでも岩場や砂地は目立つ地域だった。もっと西ってなるとどうなのかなという印象だな」

「下見!妾も行く!」

「「却下」」

ディアマントの言葉にヘルソニアとガーネがハモって返答し、その言葉にディアマントはむっと頬を膨らませて睨みつけた。


「誰ですか、小娘連れて来たの」

「私は連れて来ていない。勝手に着いて来たんだ、小娘が」

「小娘、お前は部屋に戻れ」

「そうですよ小娘、貴女まだ執務が残っているでしょう小娘」

「妾を小娘扱いするでない!!妾も話に混ざる!!」


本日の評定参加者ではないはずの女王・ディアマントが何故かこの場におり、しれっと下見に動向するつもりで話に刺さって来た。

「おい、侍女長呼べ!小娘連れて帰らせろ、評定の邪魔だ!さっきから妾も妾もって!」

「いやじゃ!妾も妾もーっ!湖遊び!街散策!お買い物ーっ!!」

「だー!うるせー!子供かお前は!!」

ガーネは立ち上がり入口近辺に控えている書記官と侍従に命令をするものの、ガーネのよりも立場の上であるディアマントの剣幕に誰もなにも言えず困った顔をしているのを見て堪らずガーネはバンバンと机を叩いた。


「ガーネ、其方陛下の子守り係でしょう。面倒見なさい」

「なんで!!?はぁ!!?」

こうなっては手を付けられないのをわかっているヘルソニアは面倒そうな顔でガーネを一瞥し、顎でしゃくるように命令した。それを聞いてにんまりと笑みを浮かべたディアマントが立ち上がり、ジェレイドを見てビシッと指を差した。

「妾、ガーネの隣に座る!近衛総監よ、席を変わるのじゃ!」

「え、あ、はい陛下」

「さ、評定の続きを始めるがよい」

言われるままに席を立ったジェレイドがガーネの隣の席を明け渡すと満足そうな顔でディアマントが隣に座り、偉そうに腕を組んで指示した。

「おーい!!おかしい!色々おかしい!!誰かなにか突っ込め!!」

「仲良い恋人みたいじゃん。良かったなガーネ。両思いか?」

「仲良いのかどうかはさておいて『一応』付き合ってんだよ!」

エーリックもからかうように野次を飛ばし、ガーネの額に青筋が浮かんだ。

「妾、オエィセ硝子細工のランプが欲しい!それと、絹織物と」

「お前は少し黙っててくんない!?もう隣座ってていいから!!」

諦めたガーネは盛大過ぎる溜息を漏らして額を押さえながらどっかりと腰を下ろし、眉間に深い皺が寄った。

「と、とにかくそれでは…3日後、予定通り下見ということで各自よろしいでしょうか」

「妾は?」

「留守番!!」

「で、…では、えーと…通達は追ってということで、本日は…」

ジェレイドが非常にやりにくそうな顔でちらちらとディアマントを見ながら半ば無理矢理評定を締めると、一同部屋を出ようと資料を片付け始めた。

ガーネも資料をまとめて逃げるように立ち上がりさっさと部屋を出ようとすると、くいっと官服の裾を引かれ溜息混じりにちらりと振り返った。

「…なんですか」

「ガーネはこの後妾が色々世話を焼く予定じゃ!」

「なんでだよ」

「ラズリより『完治』と言われたのだろう。お前の『面倒』を妾が見てやろうと思って色々考えておる」

「ほう、ガーネよ完治したか。回路も問題無しか」

「まぁ…一応?」

ディアマントとガーネの会話に巫術官長が声を掛け、ガーネは隠すことでもないと短く返答した。

「ならば、前に話していたお前さんの魔力量と霊力量の測定でもしてみるか」

「そうじゃな、今やれるか」

「準備しよう。少しお待ちくだされ」

ディアマントが勝手に返答をし、巫術官長も小さく頷いて立ち上がった。

「ちなみにガーネ、其方自分ではどちらにより適正があって得意とかはあるのか」

ヘルソニアも腕を組んで興味深そうな顔をしてガーネを見遣り、ガーネ自身は少し考えるように首を傾げた。

「うーん…ぶっちゃけどっちもどっちですけどね。強いて言うなら魔力の方が少し出しやすいくらいですけど、そんな変わんないです。どっちもドバッて出るんで」

「へー、おもしろそ。俺も見てていいですか陛下」

「妾は別に構わぬ」

エーリックが面白がってディアマントに声を掛けると、結局評定に出ていた全員がガーネの測定に興味を持った様子でそのまま残留し、少しして巫術官長と魔導師長が測定用の石や道具をいくつか持って評定の間に戻って来た。

「ちなみに俺、成人前に地元の教会で測定した時『数値0』だったんだけど」

「地方の簡易的な測定具ではお前さんのような特殊体質相手には正確なものは出ないであろうな。とは言ってもこれも正確な数値が出せるわけではない。原始的な測定だがある程度は測定出来るであろう」

巫術館長が小さな石を持って見せると、ぱきっと音を立てて亀裂が入った。

「このような形で、この石はその者の霊力に反応し亀裂が入る。この大きさであればおおよそ100、よって私は少なくとも100の霊力値はあるという程度のざっくりとしたものだ」

「へー、初めて見た」

珍しそうな顔でガーネが小さな石を手にすると、途端に音も立てずにぼろっと崩れてしまった。

机の上に砂のように散らばった石だったものを見下ろしてガーネは「あ、やべ」と小さく声を漏らし、まるで悪戯がバレた子供のように慌てて首を振った。

「待て、違う。これは俺のせいじゃない。最初から脆かったんだ。触っただけで砕けた」

その言い訳を聞いてディアマントが肩を揺らして笑い、同じように小さな石に手を伸ばした。

「わかっておる。お前は話を聞いておったか?『その者の霊力に反応する』と言われたばかりであろう。その大きさの石なら妾でも砕ける」

ディアマントが触れた小さな石も、ガーネと同じように砂のように砕けてサラサラと机の上に小さな砂山を作った。

準備として霊力を遮断する特殊な布で出来た手袋を嵌めた巫術官長がガーネに目を向けた。

「仕組みとしては天秤のようなものだ。お前さんの手に乗せていき反応しなくなった量でおおよその測定が出来るという原始的なものだ。両手を出せ」

「え、こう?」

巫術官長の言葉に従い、ガーネは両手を差し出した。

遮断布製の手袋を嵌めた巫術官長は先程よりも大きなサイズの石をガーネの手の上に乗せると、同じようにそれも砕けて砂のようになってしまった。

「今のはどのくらいなんだ」

「500程度だな。これが砂になるのか」

小さく唸りながらガーネの手の上の砂を見下ろし、ディアマントとヘルソニアに視線を向けた。先程まで小娘のような顔をしていたディアマントも真顔になっており、巫術官長に目配せをして一番大きな石を指差した。

「この大きさでどのくらいじゃ」

「これで大体3000、こちらで1000くらいですな」

「なら、一番大きいのを乗せよ」

ディアマントの命令で巫術官長が一番大きな石をガーネの手に乗せると、バキッと盛大な音を立てて石が割れた。

「…少なくとも3000は超えておるということか。次じゃ、同じ大きさのものを乗せよ」

「はい」

同じ大きさの石が乗せられると端の方にうっすらと亀裂が入り、ガーネはそれを見て顔を上げた。

「3000が2つだと割れ切れぬということは、6000は無いということですな。ならば、1000ずつ測定してみるとしよう」

「ほーん、天秤ってそういうことか。なるほどな」

どういう理屈なのかようやく理解した様子のガーネがされるままに両手に石を乗せられ、結果3000の大きな石と1000の石、500の石と100の石が3つ程度で反応が無くなり、ヘルソニアとディアマントは互いに顔を見合わせた。

「そこそこあるとは思ってはいましたが、想定以上でしたね陛下」

「うむ…ヘルソニアが以前この男に教えた術が上手く扱えぬのも、合点がいったわ。『出力調整』を出来ておらぬのにまともに使えるわけがないな。そも、この量を扱う術を教えられる者などそうはおらぬ」

「どういうことですか」

「ガーネ、お前さんの霊力量は概算ではあるが4800前後ということだな。『筆頭』と言われる儂で120、お前さんのところの巫術医官で90。一般人の『それなりの者』で10前後と考えると、異常過ぎる数値なのは見て取れるだろう」

「へー」

あまりピンと来ていないのか曖昧な相槌を打ちながら手に乗せられた石を回収されるのを、ガーネはぼんやりと眺めていた。

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