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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第三十七章『探査』

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414話「オエィセ区外遊評定」

「ガーネよ、近衛総監の身体はそんなに良かったのか」

評定が始まって全員が着席した直後のディアマントの第一声に、ジェレイドは凍りついて顔が引き攣った。

「やめてくんないですか、そこだけ切り取ったらあらぬ誤解生むでしょうが。俺は触るなら女の身体がいいんですけど。まあ、良い身体してましたよ。さすが近衛総監、剣を振るための踏ん張りの利く腰の筋肉に肩周りの筋肉の柔軟性、それとデカいわりにやっぱりバランス取れてますね。体重があるわりに締まってます」

ガーネが妙に生々しくジェレイドの身体の評価をし、ディアマントは感心した様子で腕を組んでジェレイドをちらりと見た。

「ほう、ならガーネは近衛総監と同じ体重を目指すのか」

「目指さねーよ。タッパはコイツのがあるんだぞ。んなことどうでもいいんですけど、さっさと始めてくれませんか」

「そうですよ陛下、今日は夕方来客があるんでしょう。評定長引きますよ」

「近衛総監!無駄話をするでない!」

「私はなにも話しておりません…!」

とんだとばっちりで雑に叱責されたジェレイドが困った顔で小娘ノリのディアマントを見つめ、恨めしそうにガーネに視線を向けた。

律衡評定の最終日の緊迫した様子とは異なり、冗談から始まった今回の『外遊警備評定』。


ヴェルーティン王国の西部国境近辺にある、『オエィセ区』が今回の目的地である。

周辺は砂漠地帯ではあるものの、運河や広大な湖のある砂漠の中のオアシス都市。今回の外遊の目的は国境付近施設や国境防衛結界の視察、王国西の隣国との会談、運河や鉄道の交通状況の視察、それと律衡評定で話題にのぼった『西の神殿』の視察と確認などが主な目的であった。

オエィセ区までの道のりは、前回のゲルブ辺境伯領までとは異なり隣の区に軍事拠点があるため直通路線がある。軍事拠点区であるウィースト区から、馬車で半日未満の距離のため移動手段自体はそこまで難しくはないが、砂漠超えの必要がある。しかし、砂漠と言っても石畳で道は整備されているため、馬車は問題なく通行出来る場所である。

「西は織物が美しい。妾はいくつか織物が欲しい。街を散策する!」

「遊びに行くのではないですよ陛下」

「じゃが前回のトーパスの時とは違い今回は時間に余裕はあるであろう?」

「あの時とは違ってある程余裕を持って計画を立てていますからね」

「ならまた街ブラじゃ!あとは湖で遊ぶ!それから西も珍しい宝石がある、妾はそれも見たい!それから」

「遊びに行くのではないですよ陛下」

ヘルソニアがぴしゃりと釘を刺し、ディアマントはつまらなそうに腕を組んで椅子に凭れかかった。

「では早速本題だが、今回の評定の目的であるこのこむ……女王陛下の護衛について」

「ヘルソニア、今お前は妾のことを小娘と言おうとしたな」

「しておりません。今回は護衛最高責任者は誰としましょうかという話をしたいのでこむ、陛下は黙っていていただけますか」

「ヘルソニア!」

「どうだ、其方たち」

ディアマントを無視して全体に目を向けたヘルソニアに反応するように、一同は無意識に前回の護衛最高責任者を務めたガーネに視線を向けた。

「え、俺?」

視線を浴びでガーネが思わずと言った顔で声を上げ、ディアマントも当然のように小さく頷いた。

「お前でよいのではないか。なんだかんだと適任だと妾は思うが」

「私もそう思うが」

「だったら評定の意味ないでしょ。評価いただけてるのはありがたいんですけど、今回は俺じゃない方がいい。俺はジェレイド…近衛総監を推します」

ガーネの言葉にぎょっとした顔でジェレイドが視線を向けた。

ジェレイド自身も、前回の外遊の際のガーネの指揮力を目の当たりにしており、実際それが評価され騎士に任命されている。その後あった開庭招宴でも護衛最高責任者を務めているし、当然今回もガーネがそうなると思っていたからである。

「…一応、推薦理由を聞こうか」

やや不満そうなディアマントに返答すべくガーネが起立し、確認するように口を開いた。

「陛下、念のため確認ですが今回俺は『随伴』でよろしいんですよね。前回はジェレイド論破出来なかったら俺、留守番だったらしいじゃないですか。今日は誰か論破する必要あるんですか、論破しないと留守番ですか俺」

「無い。お前は妾の騎士じゃ、当然お前は妾に随行せよ」

「でしたら尚更、今回の護衛最高責任者は俺じゃない。俺も『騎士として』外遊は初めてです」

「…なるほど」

「それに、コイツなら出来ますよ。本来近衛の任務ってそれでしょ。むしろそういう意味での統率は俺よりずっと適任だと思いますけど」

「ジェレイドよ、其方はどうだ」

ヘルソニアに促され、ジェレイドは少し困惑しながら着席したガーネと入れ替わりに起立した。

「…任じていただけるのでしたら、精一杯務めさせていただきます」

「他、不満のあるものはおるか」

ディアマントの言葉に一同「意義なし」と返答し、恙無く今回の『オエィセ区外遊護衛最高責任者』は近衛総監であるジェレイドに決定した。


そのまま、下見日程の調整や行路案、外遊行程などの確認を行い、前回のような波乱も起こらず平和に評定は進行していった。

「────では、本日の評定は以上とする。週明け、私と近衛総監、衛兵総監、特務総監、魔導師長、巫術官長、輸送責任者、文官長は別途下見のための警備評定をもつこととする。日程はまた追って通達を出す」

「ヘルソニア、妾の湖遊びと街ブラの計画案の話はいつするのじゃ」

「しません」

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