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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第三十五章『真名』

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382話「プレゼント」

「……誕生日プレゼント?別にいらねぇけど。欲しいもんはテメェで買えるわ、言っとくけどそこそこ金持ちだぞ俺」

「知ってるわよ!……でもフーン?欲しくないの?コレ」

「何それ。やべー薬か。未成年のうちに酒も煙草も経験はしたけど俺、違法薬物には手は出さねーぞ」

ラズリが見せた錠剤を見て怪訝そうな顔をしたガーネだったが、ラズリはものすごく得意げな顔をしてガーネの前にその錠剤をチラつかせた。

「聞いて驚けクソガキ。『酔い止め』よ」

「まじで?効くの?」

「アタシの調剤よ。とは言っても試作品みたいなモンだから、その効果の実験も兼ねてアンタにあげようかなと思ったんだけど。何せアンタほど乗り物弱いやつなかなか見つからなくて」

「馬に乗るのはそんなに酔わないことが発覚したとこだが、馬車はキツイ。路線によっては汽車もキツイ。貰っとく」

誕生日プレゼントとしては色気もなにも無い代物ではあるが、金でどうこうなる類のものではないためガーネは素直にそれを受け取った。

隣で見ていたディアマントはちょこんと首を傾げ、意外そうな顔でガーネを見上げた。

「ガーネ。お前、乗り物に酔うのか」

「酷いですよ陛下。外遊の下見の際など、同じ車内で吐かれるのではないかと思ったくらいに」

ヘルソニアもその光景を思い出し米酒の入ったグラスを傾けながらキッパリと告げた。ヘルソニアの言葉に同調するようにエーリックとジェレイドだけでなく特務の一同も深く頷いたことで、ディアマントは腕を組んで考えた。

「今後また外遊に出るとなれば、馬車に乗るぞ」

「吐く時はさすがに外で吐くっつの。誰が女王の前でゲロすんだよ」

おもむろにそれまで退屈そうにローストビーフばかり食べていたアミュが、狐を抱いたままガーネに近寄り頭のてっぺんから足の先までを眺めて呟いた。


「……ガーネの、霊力のながれ。ととのえればすこしだけましになる。いままでは『足りない』から乱れてただけ。でもアミュ治せない。アミュは医者とちがう。アミュは魔女」

「足りないってどういうことだ」

「ガーネの霊力と魔力、リエーブがもってた。身体がたりなかった。だから、ゆれたらいっしょにぐらぐらする。ちいちゃいころのガーネはこんなに不安定じゃなかった。今はずたぼろの、ぼろぞうきん。とてもざこ」

アミュの言葉に、『封印』の事情を知っている一部の面々は『本来所有している10分の1の力しかなくなっていた影響のバランスの不一致がそこにも影響しているのか』となんとなく解釈し、ラズリが再度ガーネに近寄りそのまま胸元に手を当てた。

「…終焉の魔女。ガーネの霊力回路と魔力回路、まだ回復してない。これが整えば、乗り物酔いとかそういう身体の内側のバランス戻るってこと?」

「アミュずっとそういってる。お前、医者か」

「そうよ」

「なんで『この程度』なおせない。お前はにせものの医者」

「ハァ!?失礼ね!!」

「アミュのかわいいガーネなおせないの、お前もざこ」

「アンタだって『治せない』んでしょ!!」

「アミュは医者とちがう。アミュは魔女」

「お前らうるせーな」

ガーネが半ば無理矢理アミュとラズリの喧嘩のような言い合いを遮り、面倒そうに小さく溜息を漏らした。

「回路は『焼き切れた』『回復には服薬の必要があって時間がかかる』と俺が一番信頼してる医者が言ったんだ。時間かけるしかねーだろ」

「ガーネ!僕とエイミーちゃんからも誕生日プレゼント!」

敢えて空気を読まずに特攻したサイフィルとアメジに、ガーネは少しだけ嫌そうな顔をして一応受け取るかと顔を向けた。

「ロクなもんじゃなさそう」

「肩たたき券!あと腰揉み券!」

「え、すごく要らねぇ。返品」

「なんで!!?」

「お前らに身体触られたくない、気色悪い」

「なんでよ!あたしの心と愛のこもったマッサージよ!」

「要らねぇ、失せろ。妊娠すんだろが俺が」

「しねーよ!」

久しぶりのやり取りとアメジの地声にスメイラとカルセは思わず苦笑いをした。

「まぁ、ガーネくんが何一番喜ぶかわかんなくて……私とカルセさんからは、特務でのお茶菓子ガーネくんだけ少し豪華にしてあげようって」

「そういうのなら喜んで貰う」

「ちなみにガーネ、お前何貰ったら嬉しいんだ」

エーリックの問いかけに少しだけ考えるように腕を組んだガーネだったが、短く「あ」と声を上げて一瞬だけ侍女長を見た。

「どエロい下着つけた、俺のことが好きすぎてしょうがない小娘感満載の年上の可愛い彼女が膝枕してくれたらめちゃくちゃ嬉しい」

「……だってよ、陛下」

「どえろいとはなんじゃ!どういうのじゃ!」

「お前は知らなくていいんだよ」


再度各々で適当に盛り上がり始めたところで、やや疲れたガーネは近くにいた給仕に「俺は戻ったって言っといて」とだけ告げて広間を出た。

ふう、と小さく溜息を漏らしながら自室に戻り、脱ぐタイミングの無かった飾緒や肩章などの装飾品で普段よりも重たい官服を脱ぎ、明日も着るのかとややげんなりしながらクローゼットにしまった。シャツとベスト、緩めたネクタイのまま再度ソファに腰を落として深々と溜息をついてソファの背もたれに深く寄りかかり、少しだけうたた寝をしようかと瞼を閉じた。

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