280話「めちゃくちゃ可愛い」
※本番行為はギリギリありませんが性的なものが終盤にあります!苦手な方はお気を付けください。
ガーネの真顔の訴えに、ディアマントは満足そうに笑みを浮かべた。
「独占欲の強い犬じゃ」
「……今更?」
どこか煽るようなディアマントと視線が絡み、ガーネは彼女へと手を伸ばした。
ディアマントの羽織るガウンをずらし、そのまま犬のように細い首元に顔を埋めて軽く歯を立てる。以前のように本気で噛みついて皮膚を破ることはしないが、軽く歯型を残してから煽るようにわざと舌先で歯型をなぞった。わかりやすく身体が強張ったのを見て、ガーネは顔を上げてディアマントの顎を指先で掬い上げ唇を重ねた。昼間の侍女たちへの見せつけのための重ねるだけのキスとは異なり、小さな唇の柔らかさを堪能するように音を立てて何度か吸い付き、舌先を口内へと押し込んだ。重なった唇の隙間から小さく吐息と共に声が漏れ、ガーネは唇を離した。
なぜ途中でやめられたかわからないディアマントは戸惑いと困惑で瞳を揺らしてガーネを見つめるも、立ち上がったガーネに半ば無理矢理腕を掴まれて引き立たされた。
「ガーネ」
ディアマントが小さく名前を呼ぶも、ガーネは返答もせずにディアマントの腕を引いて奥の私室の方へと続く扉を開き、無言のまま寝室へと引き込んだ。そのまま華奢な身体を抱き締め、再度唇を重ねてからガーネはディアマントの羽織ったガウンを無理矢理脱がせ、薄手のネグリジェ姿になった身体を寝台へと押し倒した。
「…ふ、可愛い顔」
緊張で強ばった、やや涙目になっている癖に強がりを崩さない生意気そうな顔に、思わず舌なめずりをして頬に触れた。
柔らかく手入れのよく行き届いた白い肌を堪能するように掌で撫でてから、肩に引っかかるネグリジェの細い肩紐をずらした。
ガーネが小さく息を飲むと、煩わしそうに官服を脱ぎ捨て雑に床に放り投げた。そのままネクタイも緩めて同じように床に投げ置くと、いよいよディアマントは緊張したような顔で細い肩を震わせた。
まるで他人事のように『優しくしてやる余裕が果たしてあるだろうか』と考えながら、ガーネはディアマントのネグリジェを肩から抜いて肌を露わにさせた。白い肌に吸い付き、自分の独占欲と所有欲の現れのようにいくつも赤い痕を散らしていく。その度、僅かにちくりとしたような独特の刺激にディアマントの身体が僅かに震えた。
「……また女官長に怒られんのかな、俺。こんなにしちゃって」
一応まだ理性はある様子で確認をしながら、ついに内腿まで散らした所有印を舌で舐めながらシャツのボタンを外し始めた。
ディアマントは緊張しながらもまだ多少の余裕がある様子で、ちらりとガーネと視線を合わせた。
「…何度も言うが、妾がこの国で一番偉い」
「はは、そうでした女王陛下。……そんな高貴なお方の肌にこんなに触れちゃって、俺処刑ですかね。不敬で」
「……ばか」
「そうやって、あんまり可愛い顔しないでくれますか。本気で歯止め効かなくなる」
シャツの前を肌蹴させたガーネが苦笑いをしながら改めてディアマントの頬に触れると、ディアマントも手を伸ばしてガーネのシャツにそっと手を掛けて肩から外した。
ディアマントがガーネの肌を見るのは二回目であるが、一回目に彼の肌を見た時は血塗れで特務室の前の廊下に横たわり、死んでしまうのでは無いかと震えたのを思い出した。
「…ガーネ」
不安そうに瞳が揺れたのを見て、ガーネはディアマントの髪を優しく撫でながらそっと唇を重ねた。そのままシャツを脱ぎ、改めてディアマントの身体に触れていき、掌を腰から下腹部へとゆっくりと這わせた。
一層身体が強ばったディアマントがしがみつくようにガーネに腕を回すも、その華奢な腕が僅かに震えているのに気付いた。
「……怖い?今ならまだやめられるけど」
「い、いやじゃ。怖くない」
「俺の事見ててくれますか、その可愛い顔で」
数日前に、女官長と侍女長が『40年は医官以外の男は誰も寝所に通していない』と漏らしていたのをガーネは思い出した。目の前の22歳前後にしか見えない女の体感時間概念がどういったものなのかはわからないながらも、普通に考えれば相当に『久しぶり』である事は伺える。その緊張くらいはせめて解してやろうと、何度も唇を重ねてゆっくりと身体に触れた。
「──── ッま、まって、ガーネ、いたい…こわい」
「え、痛い?」
痛いと訴えられ、爪でも当たっただろうかと手を止めた。
「すみません、爪整えてたつもりなんですけど」
「ち、ちが……そうじゃな…」
小さく首を振ったディアマントの顔が、見たことが無いほどに羞恥にもある種の屈辱にも捉えられるようななんとも言えない顔をしており、ガーネは『まさか』と一つの懸念に思い至った。
「……この状況でこんなこと聞くのは無粋なのは承知してますが、大事なことなのでお聞きします。どのくらい振りですか」
「……な、……ない、はじめてじゃ」
「………………まじかよ、ちゃんと言えよ、そういう大事なことは……」
ガーネが身体を起こして額を押さえると、深々と息を漏らして背中を向けベッドに座り直した。
それを見たディアマントは慌てて身体を起こし、全裸のままガーネの背中に縋りついた。
「で、出来る!妾、ちゃんと教わっておる、習った!知ってる!出来る!」
「出来る出来ないの話じゃない。今は俺が加減出来る自信がない」
ベッドの上に脱ぎ捨てたシャツを手にすると、それをディアマントの身体にそっと掛けて振り返った。
「できるもん…」
「わかったから。……今日は最後までしない、きちんと準備してからだ」
「……お前は、その、……我慢出来るのか」
「……は?出来てねーよふざけんな、必死に押さえてんだよこっちは。けど俺は、お前を雑に扱うつもりはない」
視線を合わせたガーネの真剣な顔に、ディアマントはやや不服そうにしながらも小さく頷いた。
「…ガーネ」
「なんだよ」
「……わ……妾のこと、どのように思っておるのじゃ」
「めちゃくちゃ可愛い」
「そ、そうではなくて!」
「うるせー口だな、黙らせんぞ」
ガーネが半ば無理矢理、『好き』だと言って欲しいと訴えそうなディアマントの小さな唇を塞ぎ喋らせないように唇を食み、舌先を再度捩じ込んだ。最後まで事に及ぶことは断念したとは言え、『ここで終わる』とは一言も言っていない。
身体を慣らし『教え込む』ことに切り替えたガーネは、再び彼女の身体をそれこそ繊細な薄硝子の細工にでも触れ扱うように手を這わせた。
明け方前、疲れ果てて眠ったディアマントの寝顔をそっと撫でてからネグリジェを着させ直し、上掛けを掛けてやった。
そのままガーネも脱いだシャツを着直して床に投げたネクタイを拾って結び直す。ベッドの近くのソファに腰を落としたガーネは、深々と溜息を漏らしてから遠い目をして窓の外を眺めた。
「……あーあ、『またお預け』だよ……覚えてろよこの女」




