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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第二十八章『招宴』

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278話「クリティカルシンキング」

「スメイラとカルセ、これ突合して来い。お前らが動くのが一番手っ取り早い」

夕方、帳簿を一通り洗い出して盗難に遭ったと思わしき聖杖3点に絞って、実際にその物が教会に実在するのか壊れて放置された物なのかを確認して来いと指示を出す。

「わかった」

「めちゃくちゃ悪いんだが、なる早。2時間以内には戻って欲しい」

「では、早速行って参ります」

「ラズリは留守番、『あの女』が来たら部屋に入れるな」

「はいはい」

「俺は色々調べ物をしたいから出てくる。2時間以内に戻る」


ガーネは王立大図書館、その奥の区画の管理指定図書区域へと進む。すっかり『認証』を得られたらしい自分の鍵を翳して中に入り、今にして思っても自分なりにも多少ショックだったらしい『事実』を突き詰めるために、そこの区画の奥の『禁書庫』へと立ち入った。

隠すように置かれた戸籍と血脈系譜と、その他の書類を今一度見つめ、何度見ても変わらない『自分の生まれ』に関しての現実を突き付けられる。これに関しては、割り切れたわけではないが、今更何をどうしても変わらない『事実』である。

先程侍女長たちに啖呵をきった以上、本気で無駄死にをするつもりはないと改めてガーネは以前確認しきれなかった書類や記録の類を一つ一つ確認した。

「……封印、……これか」

14年前の記録と、もう一つ比較的新しい記録がわざと奥の方に隠すように仕舞われているのを見つけて引っ張り出す。

それの内容中身も確認して、ガーネは思わず目を細めた。

「…あの野郎、誰に喧嘩売ったのかわからせてやる必要が出てきたな」

舌打ち混じりに時計を確認し、そろそろスメイラたちに帰れと命令した時間になるかと自分も作業を切り上げて禁書庫を出ると、王城へと戻った。


「お帰り、どうだった」

王城の門衛警備を通過する際にタイミング良くスメイラとカルセの姿を見つけて合流し声を掛けると、カルセが眉を下げて小さく頷いた。

「ガーネ様の、懸念された通りになるかもしれませんわ」

「……私もこの手のこと詳しくなくて、カルセさんに話聞いた。おそらく、製造は48年前のジェベット聖具工房製」

「…48年前か、際どいラインだな」

門を通過し、少し考えるような顔で歩くガーネを見つめ、スメイラとカルセは声を掛けた。

「どうやって探す?」

「一旦、陛下に頼んである」

「……陛下に?」

まさか頼み先が国のトップである女王であるという事実に、スメイラは驚いて一瞬目を見開いた。聞き間違いかと思いたい気持ちも含めて、ガーネの言葉を復唱した。

ガーネは悪びれること無く小さく頷くと、隣を歩くスメイラとカルセをちらりと横目で見た。

「特務に『占術』が得意なやつはいないだろ。俺も占術は齧ってないからな、お願いした」

「……君が齧ってない分野ってあるんだ…」

「あるだろそりゃ」

特務室に戻り、ガーネは疲労感たっぷりに息を漏らして自席に腰を下ろした。


「…次から次へと、休まる暇がねぇな」

小さく呟きながら、朝にやりかけの通常業務の方の仕事に取り掛かる。その様子を見てカルセが立ち上がり、いつものように茶汲みの声掛けをした。

「何かお飲みになりますか?」

「いや……そういや、腹が減った。今日何も食ってないわ」

「アンタ開庭招宴でなにも口にしてないの?」

思い出したように告げたガーネにラズリが眉を寄せてガーネを見た。

しかし、ガーネ自身も別にわざと食べなかったわけではないと反論するように口を開く。

「するわけねーだろ、近侍護衛だぞ。さすがに水は一口飲んだけど」

「だから痩せるんでしょ!どうせまだ仕事するんでしょ、なんか買ってきてあげるから。何がいい?」

ラズリが立ち上がると、ガーネは少し考えたように腕を組んだ。

「……カレー」

ガーネがぽつりと言いながら、引き出しにしまった財布を取り出してそのまま投げ渡した。

ラズリもそれを受け取ると、小さな声で「別にいいのに」と呟きつつも面倒なのでそのまま受け取ることにして視線を向け直した。

「甘口でいいの?」

「甘口じゃなきゃ食えない」

「はいはい。…スメイラとカルセは?カレーでいい?」


ラズリが食堂に注文を通しに向かい、ガーネは処理の終わった通常業務の方の書類をまとめて提出用のファイルにしまうと、改めて教会から借りてきた帳簿に目を通し直した。

「……ん?」

何かの違和感を覚えたような気がして何度か同じページを読み直す。別の帳簿や領収書も照らし合わせ、改めて腕を組んだ。

「ガーネくん、どうしたの」

「…いや、まだわからん。なにか引っかかってる」


十数分後、ラズリが王城食堂の配膳係とともに戻ってくると、ガーネは自席ではなく傍のソファの前のローテーブルを指差し『そこに置け』と無言で指示しながら、机に広げた資料を凝視した。


「……カルセ」

「はい」

「ここの教会、トップの階級は」

「司祭ですわ」

「司祭になってどのくらいだ」

「えぇと…どのくらいだったかしら。15年は経っていないかと思いますわ」

「そうか」

資料をまとめ直すと、ガーネは立ち上がって近くのソファへと腰を落とした。

まだ湯気の立つカレー皿を凝視し、皿とスプーンを持って立ち上がった。そのまま自席でカレーを頬張る女性陣に近寄ると、ラズリが小馬鹿にしたような顔でガーネを見上げた。

「なによ、1人じゃさみしいから一緒に食べたいの?隣座る?」

「これお前にやる」

ラズリの煽りを無視して、ガーネはカレーの具材の玉ねぎを器用にラズリの皿に移した。

「は?」

「カルセにはこれをやる。スメイラにもついでに」

「まあ、仕方のないお方ですこと」

カルセの皿にはにんじんを移し、スメイラの皿にはらっきょうと福神漬けを移した。

「これで異物無く食えるな」

満足そうに言いながらソファに座り直し、じゃがいもと鶏肉しか入っていない甘口のカレーを頬張った。

「君、ちょっと好き嫌い多すぎなのそろそろ矯正させるよ」

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