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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第五章『洗礼』

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27話「不自然な終止符」

翌日の昼過ぎ。

早朝一番の汽車に乗って、ガーネは王都東側の商業都市『トーリステノート市』の土地に足を踏み入れた。

王都程ではないにせよ、主要駅も比較的大きく商業都市ということもありかなり栄えている印象だった。

賑やかで景気の良さそうな町並みが連なっている。

馬車ほどの揺れが無いため、今回はさほど乗り物酔いに見舞われることもなく穏やかな到着を迎えたガーネだったが、早速動くかといつもの黒い官服に袖を通した。


城の詰め所にあった数日前の新聞を手に、ガーネは駅前の大きな商店街に向かう。新聞には、『神隠し』『また行方不明』の文字が並んでおり、その後の報道がぱたりと止まっている。


「ちょっと聞きたいんだけど」

身分の説明はやはり衣服だけで充分らしい。

ガーネが声をかけると王都や王都近郊の街とは少し異なり、興味深そうななんとも言えない好機に満ちたようなリアクションを毎度返される。



「────…連続失踪事件?」

聞き込みの結果、この半月程ほぼ毎日人が、それも若い女ばかりがいなくなる事件が続いており、どういう訳か数日前からその報道すらついにされなくなったらしい。

あまりにもその足取りが全く辿れないため、『神隠し』と称されなにやら『よくない存在』が関与する噂が囁かれている、との話だった。

「成程なぁ、『邪教』が絡んでそうな雰囲気は充分だな。杞憂だといいけど」

先日の厄介事のようにならなければと、ガーネの心のうちはそれが大きく占めていた。


「それにしても、『若い女』ばっかりってのが妙に引っかかるな。おっちゃん、いなくなった女の子ってどんな子?」

遅めの昼食がてら立ち寄った飲食店のカウンターで、注文したオムライスを頬張りながら店主の男に問いかけた。

「なんだ兄ちゃん、変なことに首突っ込むなよ?危ないだろうが」

何故ここで子供扱いをされたのかと多少むっとしながら、ガーネは胸の内ポケットに携行している警察手帳を見せた。

「警察だよ。『女王の命令』で調べてんだ、怖い目に遭いたくなけりゃさっさと知ってること洗いざらい答えな」

店主はその物言いにどちらが悪人だと密かに思いながら、厨房内の椅子に腰を掛けて子供のように口元に米粒を付けてオムライスにがっつくガーネを見つめて肩を竦めた。

「……そうさな。最後にいなくなったのは一昨日、隣の区画の花屋の娘。その前は五日前に役所の受付の女の子、先週はそこの本屋の新妻」

「共通点なさそうじゃん」

「それがなぁ……どの子も美人と評判の子たちだ」

「……ふぅん?」


ますますキナ臭いな、と感じながらガーネは空になった皿の上にスプーンを置いておしぼりで口元を拭った。

「ごちそーさん」

「あいよ、3500ヴェルね」

「え、なにそれ怖いぼったくり」

店主の顔を見る。

「……ぼったくり?」

「観光地価格と言いな。3500ヴェル」

「…………証書払いで」



観光地の飲食には気を付けようと深く心に刻みながら、ガーネは街の警察署を目指すことにした。

幸いにも、街の中心部にいたため警察署はそこまで距離も無く目的地は目視できる範囲にあった。

ずかずかと無遠慮に警察署に入ると、民間人とは異なり流石にガーネの『官服』の意味を理解している様子で、敬礼とともに出迎えられた。

「この事件の関連の捜査資料、全部見せてくれ。隠すとわかってんだろうな」

先程から聞き込みで使用していた数日前の新聞記事を見せながら、女王の名を盾にした『告げ口』を含ませて指示する。

慌てた様子で担当課の資料室へ案内されると、近くの椅子に腰を掛けて捜査資料に目を通していく。


一連の失踪事件、始まりは半月ほど前の観光客の16歳の少女。成人した記念の旅行で友人とこの街を訪れ、忽然と姿を消した。その翌日に21歳の魔法具店の娘、更に三日後には19歳の銀行員、それから先程の飲食店で聞いた本屋の22歳の新妻、18歳役所の受付嬢、17歳花屋の娘…と続いている。

捜査資料に添付されている精度の高い似顔絵は一様に『美人』と評して遜色ない顔立ちをしている。

それよりもガーネに引っかかりを強く残したのは、捜査の打ち切り命令書。

捜査資料も『形式上』残しているだけのような内容で、酷く杜撰だった。

ガーネ自身も新人とは言え一応は警察の立場であるため、この資料には妙に違和感を覚える。


よその管轄の警察署に、土足で踏み込んでいる自覚はある。

本来であれば新人であり後輩の立場である以上、こちらが頭を下げるべきだという認識も持ち合わせていた。だが、今回は話が別だった。

ここにいる彼らが従うべきは、目の前の一介の若造ではない。その背後の『女王』の意向だ。

だからこそ、ガーネは敢えてこの場で警察手帳は提示していない。『女王のお気に入りの犬』として、その身分を示す身なりをしてこの場にいる。


そこまで考えてやりづらさの根源である『遠慮』を捨て、近くに控えていた警察官に簡素に声をかけた。


「この一連の事件の捜査責任者を呼べ。今すぐだ」

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