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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第二十七章『帰郷』

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249話「土産」

用事を済ませて特務室に戻ったガーネは、最短で出かけられるようにと書類の整理を始めた。

ラズリに確認させた捕縛した男は、ガーネによって銃床で強かに口元を殴られたために歯と顎が折れていたようで、『喋る』には相当支障がありそうとの事だったため、尋問は帰ってから行うことにして目先の仕事を片付け始めた。

「俺のサイン必要なやつだけ優先度上げて先に回せ」

「はーい」

スメイラに指示をしたあと、いつものようにお茶の用意をしているカルセの後ろ姿を見て声をかけた。

「カルセ、ちょっと」

「?はい」

ガーネに呼ばれたカルセが首を傾げて、お茶を持ちながら傍に寄った。

「お茶こちら置きますわね。……いかがなさいましたか?」

「お前に頼みがあって。…俺の留守中さ、たまにでいいから陛下の話し相手なってやって。ヘルソニア様も最近忙しいから、妙なことしないように。護衛関係はジェレイドに託してるから」

「今までのように、おやつをお持ちしてお話しする感じでよろしいのですか?」

「そんな感じ。…今朝は普通だったけど、昨日やっぱちょっと怖かったみたいだし。本人は普通そうにしてはいるけど、気にかけてやって」

「もちろんですわ。お任せくださいまし」

ガーネはひとつの懸念をカルセに託し、小さく息を漏らした。

そんなガーネの様子を見たカルセも、ガーネの顔を見つめて声を掛けた。

「……ガーネ様」

「うん?」

「ガーネ様も、無理をなさってはいけませんわよ」

「わかってるよ、危険は無い」

ガーネの言葉に『今回は』本当に危険が伴う場所にわざわざ一人で行くわけではないと察したカルセは、安堵したように笑みを浮かべた。

「ガーネ様、お土産お待ちしてますわね。どちらに行かれるのかは存じませんが」

「…………あの、遊びに行くんじゃないんだけど」


何故みんな土産を求めるのかが意味がわからず、ガーネは苦笑いをした。

「……土産なんて何があるんだよ、『あんな所』に」

自席へと戻ったカルセの後ろ姿を見つめながらガーネは頬杖をついて、自嘲気味に小さく呟きを漏らした。



翌日昼前、各所の調整が済んだガーネは出かける前にディアマントの執務室へと足を運んだ。

「陛下、今よろしいですか」

「なんじゃ」

「…なんで拗ねてんのお前は」

「拗ねておらぬ」

執務机で頬杖をついたディアマントが拗ねた顔をしているのを見て、ガーネは肩を竦めた。

「寂しいのか、俺がいなくて」

「そうではない。お前は妾の騎士になったのに、妾を置いて出かけるとか」

「それを拗ねてると言わずになんて言うのかね。……あんまりそういう可愛い顔しないでくれますか、『また』女官長になんか言われるだろ、俺が」

「妾はつまらぬ」

「あのね、つまるとかつまらぬとかじゃないんですよ。…俺はきちんと、万全な状態でお前を守りたい。その為に必要なのは、自分だってわかってるだろ。『今回は』3日で帰るんだから少し我慢してくれ。その次はどのくらいになるか知らんが」

ガーネは執務机に歩み寄り、少し手を伸ばしてディアマントの髪を撫でた。

「陛下」

「なんじゃ」

「俺が戻るまで、いい子にしててくださいね」

「……ふん!」

「ははは、………チッ、小娘が」

分かりやすく拗ねた態度を取ったディアマントに肩を竦めつつ、最初こそ可愛いなと笑ってはみたものの、他で『これ』をされてはたまったものではないと自分でもよくわからない独占欲のような何かが沸き上がり無性に苛立った。小さく舌打ちを漏らしたところで、顔を背けたディアマントが視線をガーネに戻した。

「……ガーネ」

「なんですか」

「…妾にも、土産を持って参れ。他の者にばかりズルい」

「……………ハイ」


出かける前にキスでもしてやろうかと思っていたものの急に気持ちが削げた様子で面倒そうに返事を返すと、ガーネはディアマントの髪から手を離して一礼して下がった。

「……では、行って参ります」

「怪我をするな、用事が済んだら至急戻れ。よいな」

「御意に、女王陛下」


出かける前に自分の私室に立ち寄り、着替えをして荷物を持ってから王城を出た。駅に向かい、事前に確認していた目的地である北部ノルデン区までの直通軍用路線の乗り場へ向かった。

身分証を提示し、専用乗り場へ到着した頃には事前通達して調整をしていた出発時間の10分前であった。

ガーネは汽車に乗り込み座席に腰を下ろすと、小さく息を漏らした。


乗り換えが必要な南とは違い、今回は直通で行ける。とは言え、約15時間の長旅であった。

「……夜中2時着、か…もう少し早く出るか遅く出るかした方が良かったかな…」

小さく呟きを漏らしながら、ガーネは『伯父が預かっていたもの』と『南の魔女が預かっていたもの』をそれぞれ手にして目を細めてそれを見つめた。


「……やっぱキスくらいしてから出てくれば良かったかな。これで俺が死んだら勿体なかったかもな」

無論、死にに行くつもりはない。しかし、いつ何時どんな不測の事態があるかわからない。自分の立場はそういうものだし、自分のしてきた事もしている事も、常にそれを覚悟している。

急に紳士ぶって途中で止めた自分を褒めたい気持ちと、惜しかったなと思う気持ちが混雑し始め、ガーネはとりあえず仮眠でも取ろうと、自分の手にある『預かりもの』をポケットにしまい直して目を瞑った。

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