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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第二十六章『逍遥』

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246話「紳士は獣を宿している」

※終盤少しだけ性描写があります。苦手な方はお気を付けください!

ディアマントはちらりと傍で立って自分を見下ろすガーネの顔を見上げた。

そのままとんとんと隣を叩いて座るよう促し、ガーネは一瞬『ベッドかよ』と躊躇した。

どういう意味で促されているかわからず、しかしどういう意図であったにせよ断る理由も無いために隣に腰を下ろすと、少し甘えるようにディアマントが背中に腕を回して抱きついてきた。

ガーネは胸元に納まる小さな頭を軽く撫でながら、抱き返そうかどうしようかを悩むように視線を漂わせた。

一応伝えることだけは伝えようかと、視線を胸元に落として口を開いた。

「俺は、お前の隣に立っている以上…お前に怪我をさせるつもりも死なせるつもりもない。これは騎士としてじゃなくて、一人の男として言っておく」

ガーネの言葉に、ディアマントが顔を上げる。視線が絡み、ディアマントは一瞬だけ視線を漂わせ、少し躊躇ったような顔で名前を呼んだ。

「……ガーネ」

「なんだ」

「…妾、また出掛けたい。今度は、周りじゃなくて妾を見て欲しい」

その言葉を聞いて、最後に拗ねたのはそれが理由かと理解してガーネは思わず笑った。

「ははは、見てたけどなぁ。あんなにはしゃぎ回って、可愛いのなんのって。……ディアマント様」

「うん?」

ガーネに笑われて少しだけまたむっとした顔をしたディアマントではあったが、『出掛けたい』という要望を否定されたわけではなく安堵したように息をついたところで、名前を呼ばれて小さく首を傾げた。


「今度は、『お忍び』でやりましょうか。もちろん完全に護衛無しはさすがに無理ですけど。その時も、俺の事また隣に置いてくれますか」

「…ちゃんと、妾のことエスコートせよ。命令じゃ」

「光栄です、女王陛下」

ディアマントがガーネの頬に触れると、いつもよりもラフな髪に少し触れ少し濡れているのに気付いた。

「……髪、濡れておる」

「俺も疲れたから、今日はさっさと休もうかなと思ってシャワー浴びたからな。……けどお前の事気になって」

「そう、か…別に妾は怖くはない」

「なら、部屋戻ろうかな」

「だ……だめじゃ。なぜお前はいちいちそうやって言う」

「…可愛いから?」


寝支度をしていたために化粧はしておらず、普段よりも幼く見える顔。化粧っ気が無くても美しく愛らしい顔立ちは変わらず、ガーネはよく手入れのされた頬に手を滑らせ触れてからようやくその華奢な身体を抱き返した。

ネグリジェのシルクが少しひんやりとした感触で手に触れ、布越しにディアマントの腰元を撫でる。

「……キスしづらいんですけど。もっとこっち来れません?」

「…お前が図体がデカいのじゃ」

「背ェ低い男より見栄えいいでしょ、隣立つのに」

「そ、それに…な、なぜ、妾が、そんな」

「……お前、寝所に来てる俺も俺だけど、ベッドに誘ったのはどっちだよ。そこまで小娘なの?」

ガーネが半ば強引にディアマントの脇に手を差し入れて抱き上げると、自分の膝の上を跨ぐように対面に座らせ直す。そのままディアマントの後頭部に片手を添えると、頭を引き寄せて唇を重ねた。

しんとした室内に小さくリップ音が響き、至近距離で視線が絡み合った。

視線が合った瞬間に明確にガーネの目が変わり、少し荒々しく深く唇が重ねられた。

重なった唇の隙間から互いの僅かに弾んだ吐息が漏れ、ガーネの手元がディアマントのネグリジェの襟元を軽く引いた。

元々首ぐりが少し広めの作りの柔らかな布地は簡単に肩先までずれてしまい、露わになった白い肌に遠慮なく吸い付いた。

覚えのあるその小さな刺激にディアマントの身体が小さく跳ね、しかし抵抗する気は全くなさそうにその華奢な腕がガーネの背中にしっかり回された。

首筋から鎖骨までガーネの唇が這い、幾つかキスマークが散らされる。その度に吐息混じりの小さな声が漏れ、細い肩が震えた。


「…………フー…今日はここまでだ」

深い溜息のような吐息と共にガーネが首元から顔を離し、少しだけ身体を離した。

「えっ、な、なんでじゃ」

ディアマントはどこか不安そうな顔で、自分の何かがダメだったのかとガーネを見上げる。

「……ガーネ、我慢出来るのか」

「お前意味わかって言ってんのか。我慢出来てるように見えるんなら、そう思っとけ」

そう返すガーネの目はどこからどう見ても欲を孕んだ目をしており、ディアマントは小さく息を飲んだ。

「……なぜ」

「なぜだと?そんなん、つい数時間前に怖い思いをした女を無理矢理手篭めにする程、俺は考え無しじゃねぇからだよ。とにかく、今日は終いだ。……頼むから、格好付けさせてくれ」


ガーネは自分で乱したディアマントのネグリジェの首元を律儀に直してからも、明らかに名残惜しそうに首元と鎖骨に散らしたキスマークを指でなぞった。

「…ガーネの馬鹿」

「馬鹿で結構、……俺まだ19だぞ?褒められて然りだと思うけどな。……ところで、話しは変わるが…お前に1個、聞いておくべき事がある」

「なんじゃ」

「……連中、俺の『血』のことはどこまで知ってる」

無理矢理逸らしたにしては重い話題に、ディアマントはつい目を細めてガーネを見つめた。

「正直に申してよいのか」

「正直に言えよそこは」

「全部じゃ。生まれだけではない、妾とヘルソニアが、お前にまだ秘匿にしている部分も含め『全て』……もちろん、連中の全員がそれを把握しておるわけではなかろう、序列を持つ…少なくとも上位以上は間違いなく、把握しておるはずじゃ」

「なるほど」

ガーネはそれを確認すると、ディアマントの身体を抱き上げてベッドに横たえさせた。

そのまま身体に上掛けを掛けてやり、柔らかな髪を撫でてから頬に触れた。


「今日は休め。また明日、顔出すから。おやすみ」

「……おやすみ」


ドアを開け、廊下の先に警備の近衛がいるせいか形式的に一礼をして部屋を出たガーネを視線だけで追いかけ閉まった扉を見つめた。

ディアマントはそのまま寝返りを打って、無理矢理に目を瞑って小さく息を漏らした。

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