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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第二十六章『逍遥』

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241話「騎士様」

『王都散策』当日、出発時刻の30分前。

城内での随伴者一同は、ガーネを中心に最終確認で大広間に集合していた。

「じゃあルートは大丈夫だな。配置は私服隊は外側のここ、もっと外の警察と連携。なにかあれば、衛兵総監か近衛総監に合図を。独断では決して動くな」

「はい」

「特務、基本はスメイラの指示に従え。特にサイフィルは周辺の視認、カルセは周辺の音」

「はい」

「よし、じゃあ私服隊から先に配置につけ。カルセは俺の剣持って来い」

「お待ち下さいまし、持って行きますわ」

私服の衛兵、近衛が先に王城を出て警備区域に向かう。

ガーネの指示でカルセが特務室に保管している剣を取りに行くと、サイフィルが思い出したようにガーネに近付いた。

「ねーねーガーネ」

「なんだバカ」

「バカじゃねーし!!」

「いいから早く要件言えバカ、俺は忙しい」

「僕は武器、持たなくていいの?」

「必要無い。何度も言うが、使い慣れてない奴が下手に武器を持つ方が危険だ。お前やスメイラが武器を持とうと思わなくていい、お前らの仕事はそれじゃない」

「えー、つまんない」

あからさまにイラついた顔をしたガーネを見て、スメイラとラズリが事故になる前にとサイフィルを引っ張った。

「アンタいい加減にしなさいよ!まず武器持つ前に頭鍛えなさい!」


「特務総監様、もう間もなく陛下のお支度整います」

侍従長の言葉に頷き、広間で待機した全員に声をかけた。

「わかった。…全員出ろ!」

入口前に集合し、カルセから剣を受け取り腰に佩く。肩口に装備した銃の装填数も念の為確認をして、女王の到着を待った。

一足先にヘルソニアがガーネの元にやって来て、一瞬だけ目を見開いてガーネを上から下まで見てから口を開いた。

「……ではガーネ、陛下のお守り頼みますよ」

「承知いたしました。…ヘルソニア様は本当にご同伴されないのですか」

「陛下が、私がいるとやかましいと申すのでな。まあ、私も忙しいので面倒を見てくれるのであれば願ったり叶ったりだ」

「………ぜってー俺の方が、やかましいと思いますけどね…ヘルソニア様いた方が中和されるんじゃないですか」

「違いない。だから安心して任せられる。何かわがままを言って迷惑をかけるようだったら後で報告をしろ」

「はは、わかりました」


王城入口の広場に集合した物々しさを遠巻きに見て、末端の事務方の若い女性職員がわいわいと集まっていた。

「いたいた!今日もかっこいい〜」

「……なんですか、あれ?」

「あー、アンタは最近入ったばっかだから知らないわね。王城名物の四壁!右の白い近衛の服着てる王子みたいなのが近衛総監、その隣のちょっと渋いイケメンが衛兵総監。その奥にいる爽やかイケメンが衛兵二番隊長。で、中央の黒い服の人が特務総監」

「一番の出世頭があの特務総監でね、先日の論功会で騎士叙任されたんだから」

「…………あの特務総監、って…ガーネって名前ですか?」

「そう、ガーネ様!」

「へぇ…」


十数分後、ディアマントが侍女長を引き連れて現れると、一同頭を下げて迎えた。

「楽にせよ。今日の妾はお忍びじゃ」

「忍べてねーよ」

ガーネのツッコミにディアマントが顔を向けると、あからさまに不満そうな顔をした。

「なんですか」

「なぜ『騎士』ではない」

「は?いや、騎士でしょ。肩書きは」

「肩書きの話ではない。見た目の話じゃ」

「同じだろ中身は。何が不満なんだ」

何を馬鹿なことをと言わんばかりの顔でディアマントを見つめ返すガーネの出で立ちは『いつもの』官服姿に腰に剣を佩いただけの姿であり、まず第一のディアマントの密かな願望である『妾の騎士を引き連れての街ブラ計画』が開始前から暗礁に乗り上げた。


「不満というかなんというか」

もごもごと口篭ったディアマントと面倒そうに肩を竦めたヘルソニアを見てガーネも『そういう事か』と察しはするものの、ガーネにも言い分は一応あったため口を開く。

「あのですね。アレだと動きにくいです、見た目重視なんで。警備に支障が出ます。まして今日は『公式公務』でもないでしょう、このままで十分です」

「うーん、でもせっかく騎士になって初めての公務じゃ」

「…………」

ガーネは先日から引きずっている色々な苛立ちが複雑に絡み、思わず彼女にその苛立ちをぶつけそうになり目を伏せて小さく息を吐いた。

「…………わかりました。なら、お望み通り着替えて参ります」

「本当か!」

「但し、その格好で出掛けるのなら俺にも立場と体面があります。準備に小一時間はかかる、ついでに各所に通達も出しているのと警備の問題上時間をずらすことは考えていません。よって中央区視察は一時間短縮させます。よろしいですね、では着替えて来ます」

「ま、待て!………そ、……そのままでよい…」

「そうですか、ならこのままで」

そのやり取りを見ていた周囲の面々は改めて、ガーネに口で勝てる人間がいるのだろうかと他人事のように考えた。あの女王ですら丸め込まれふてくされているのを見て、大人である全員『見なかったことにしよう』と顔を背けた。

「ほら、行きますよ。そんな顔してたら、せっかく可愛くしてるのに台無しでしょ」

「…可愛い?」

「可愛いよ」

「どの辺が可愛い!?」

分かりやすく機嫌が治ったディアマントを見て、ガーネは小さく「そういうとこ」とだけ言って先導するように入口を出た。

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