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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第二十六章『逍遥』

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235話「街ブラ警備評定」

翌日、『女王の王都中央区散策に伴う警備・導線・規制の調整評定』の日。

ガーネは用意した資料や地図の類をまとめ持ち、室内を振り返った。

「お前らも、全員来い」

「え?ガーネこれから会議じゃないの?」

「そうだよ、だから来いって言ってんの。今日の育成は評定見学」

前回の外遊時に使用していた評定の間ではなく小評定室へと招集されており、首を傾げる特務一同を引き連れてそこへ向かった。

入口前に控えの近衛がおり、ガーネの顔を確認すると挨拶をしてから入口を開けた。ガーネの後ろに続いた特務の一同はやや緊張した顔で中へと続き、事前にガーネが打診していただけあってか中央の机とは少し外した場所に補助椅子が並べられていた。

「お前らそこ座れ」

ガーネが顎で椅子を差し、特務の近くの長机の端の方に腰を下ろした。

「今日は見学付きか」

ジェレイドがガーネと特務を見て声を掛け、ガーネは肩を竦めて頷いた。

「衛兵や近衛と違ってウチは少数だからな、潰し利くようにしとこうと思って目下調教中。…あ、そうだ。おいお前ら、今日は見学だからな、口開くなよ。どうしてもその場で発言したいことあったらスメイラ通せ。わかったな」

「はーい」

元気良く返事をしたサイフィルにものすごく不安そうな顔をした所で、ガーネは机に頬杖をついて深々と溜息を漏らした。

「なんだガーネ、まだ胃が痛いのか」

すっかり名前呼びが定着したジェレイドがガーネの顔色を見て声をかけると、ガーネは苦笑いをしながら懐から取り出した紙を差し出した。

「…?これは?」

「なんだと思う、陛下の街ブラ希望先だ」

「……市場」

「俺も同じリアクションしたわ、お前これどう思う」

「いや…厳しいのではないかと…区画ごと封鎖すればなんとか…?いやしかし」

「そうなるだろ、俺の今一番の胃痛先だ」

「衛兵総監も同じ反応をしそうだな、陛下が不在だから言うが」

「そういうこと。あー、しかしジェレイドも味方してくれるならまず一つは肩の荷降りたわ。ヘルソニア様も同じ反応してたし、会議で勝手に候補から外して話し詰めちまいたい。どうせ陛下来ないだろ」

以前よりも意外と仲が良さそうな様子で会話するガーネとジェレイドの姿を見て、特務の面々は無言で顔を見合わせた。

まだ会議前故に、ごく小さな声でアメジが口を開いた。

「…あの2人、いつの間にか仲良さそうね」

「ほんと、ちょっと意外。ウマ合わなそうなのに」

そんなやり取りをしている数分後、衛兵総監であるエーリックも小評定室に顔を見せ、特務同席に少し驚いたような顔をした。

「なんだガーネ、今日は保護者付きか」

「なんで連中が俺の保護者だ」

「珍しいな、こういう場にコブ付きなんて」

「調教してんだよ、俺の言う事聞くように。骨の髄まで俺の指示に従うように反射レベルで仕込んでる」

「…君がそれを言うとあまり冗談に聞こえないのだが」

「半分冗談だよ」

「半分は本気かよ」

やや呆れたような顔のジェレイドとエーリックに向かってガーネは腕を組んで後方の特務を顎で差した。

「実際、外遊ン時はよく動いてただろ。俺の仕込みの成果だよ。…ま、あそこまで動けるようにするのも苦労したけどな」

評定開始定刻、入口の扉が開き新総監三人はぎょっとしながらも起立して頭を下げた。

来る予定もなかった女王が姿を見せたからである。

ガーネだけではなく全員が起立して頭を下げたのを見て、スメイラたちも立ち上がって一礼をした。

「うむ、くるしゅうない。楽にして良いぞ」

妙に機嫌の良さそうなディアマントが着席し、全員顔を引きつらせた。

「………あの、何しに来たんですか」

ガーネが遠慮もなく口を開きディアマントとヘルソニアを見ると、ヘルソニアは肩を竦めて隣のディアマントを見た。

「妾の散策計画じゃ!きちんと妾の希望を取り入れてもらわねば困る!」

「希望なら昨日俺が聞きましたよね。何のために聞いたと思ってるんですか」

「妾の意向が反映されるのをこの目で確認するためじゃ!」

端的に言えば、王都視察と言う名の街散策が単純に楽しみで仕方がなく、計画時点から参加したいだけの様子は見て取れた。

全員それを察した様子で、諦めた顔で小さく息を漏らした。

「…まあ、とにかく始めよう」

ヘルソニアが小さく咳払いをしながら周囲に視線を投げると、ガーネが事前に用意し提出していた中央区の地図や水路などをまとめた資料を文官が各個人に配布し、見学の特務の面々にも同じように配られた。

「ではまず、此度の評定概要だが…全員知っての通り、陛下の気まぐれでの王都散策においての警備・動線・規制に関しての調整を行う」

「待てヘルソニアよ、妾の気まぐれではない。王として民の暮らしを視察することは当然の職務じゃ」

「わかりましたから」

ヘルソニアにぴしゃりと言われやや拗ねたような顔をしたディアマントは大人しく手元の資料を眺めるようにぺらっと捲った。

「では、基本は特務総監中心に詰めてもらおう」

一瞬しんとなり、ディアマントも思わず顔を上げてガーネを見た。

「……え、あ。俺か」

「なんじゃお前、具合でも悪いのか」

「いやその『特務総監』って呼ばれ慣れてなくて。あと体調は悪いですね、誰かのせいで」

「誰のせいじゃ」

「さあ?」

わざとらしく肩を竦めながら中央に進み、少し大きく拡大した王城を中心とした中央区の地図を文官と共に貼り出した。

「えー、では警備案について。事前に陛下の希望についてはある程度お伺いしてますので、そこも含めてルート調整と日程調整、各所調整について詰めていきたいと思います」


前回の外遊の評定とは異なり、比較的緩い空気感で評定が始まった。

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