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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
幕間Ⅴ『総括』

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222/311

前編

外遊からの帰還、翌日。現場に残った魔導師長、巫術官長も無事に帰城した。

責任者評定の招集により、一同は評定の間に集められた。

「…統裁官、何やら随分痛々しいな。ああ、額を切っておったなそういえば。手も怪我をされたか」

巫術官長がガーネの出で立ちを見て少し驚いたような顔をして声をかけるが、本人は至って通常通りである。

「いや、額ちょっと切れてただけなんで見た目の割には全然軽傷っす」

「あまり無茶はなさるな、今日が一番若いぞ」

「…………ベテランが言うとちげーな」


外遊前と比べ、一同の態度がどこか違うような感覚を覚えるが理解出来ずに首を傾げる。

ガーネにはそれが何故かはよくわからなかったのは、自分に向く感情如何に対し基本的に無頓着であるが故である。

周囲はガーネに比べると誰も彼も『大人』であるために、最初こそ『生意気なクソガキ』とは思われても、接しているうちにわりと年上には可愛がられるタチであった。それは王城でも例外ではなかった様子で、ガーネは意味がわからなそうに小さく首を傾げながら席に用意された金平糖をぽりぽりと摘んだ。


「では、責任者評定…今回の外遊においての総括を始める」

ヘルソニアの声で会議が開始され、被害状況の報告などが始まった。

ガーネに話が振られ、資料を手に起立する。

「ご報告いたします。会場に現れた均衡教徒は全部で23人。うち3人が序列持ちで全て捕縛予定でしたが、民衆へ被害が及びそうでしたのでその場で処断いたしました。他、近衛長・衛兵長・特務人員の助力もあり計21人処理。捕縛した2人は現在宮廷医預かりで治療させています。『喋れるようになり次第』、俺が尋問予定です。帰路での襲撃に関しましては全8人、うち1人は陛下への不敬で処断、他7人はその場で制圧しております。死体の検分は目下実施中、目的は捕縛した教徒の口封じかと」

「よし。では衛兵長、民間人の被害状況の報告を」

「はい。重傷3、軽傷8で死者は0で押さえられました。ただやはり避難時の転倒事故は避けられませんでした。転倒による骨折と、最初の爆発による裂傷です」


その後も各部門からの報告を取りまとめ、最後にディアマントが立ち上がった。

「此度の外遊、皆大義であった。均衡の連中が攻め入ることは、第一回評定の際に統裁官が指摘した通り最初からわかりきっておったこと。その中でも死者を出さず、被害を最小限におさえてくれたことに妾はお前たちを誇らしく思う。…ただ、此度の件でやはり『王権』の在り方を示さねばならぬ機会は増えそうじゃ。その際には、またお前たちに働いて欲しい。よくやってくれた、礼を言う」

ディアマントの言葉に一同が起立して礼をした。どことなくしんみりとした空気に似たなんとも言えない雰囲気の中、ヘルソニアが口を開いた。

「此度の働きに応じた処遇については、既に陛下と検討している。別件ではあるが諸般の準備もある故、すぐではないが…半月後、其方たちへの労いも兼ねて一つ会を催す予定だ。案内は後日、別途通達する」


評定が終了し、衛兵長は近衛長へと歩み寄った。

「なあ、近衛長。今日の勤務は」

「…日勤だが」

「よし、飲みに行こう」

「は?…いや、まあ別に構わんが」

「決まり決まり、ガーネも誘おうぜ。おーいガーネ!」

「え、彼もか」

既に衛兵長はガーネの方に行ってしまっており、若干の気まずさを孕んだ近衛長が少しだけ離れた所で2人のやり取りを眺めた。

近衛長は、彼が衛兵長と親しい故に来るのだろうと思っていたが、聞こえた答えは意外なものであった。

「めんどくせぇ、やだ。一人で行け」

「はぁ?お前つれねーなぁ。こないだ付き合ってやっただろ」

「そうだっけ、俺都合の悪いことは忘れるんだ」

そう言って特務室へと足を向けるガーネに、衛兵長は王城の広々とした廊下でガーネに縋り付いた。

「行こう!ガーネ!一緒に行こう!!」

「なんなんだよめんどくせーな!アンタもう酔ってんのか仕事中に飲んでんじゃねぇよ!!」

「飲んでねーよ!まだ!お前と一緒に飲むから!!」

「忙しいって言ってんだろ!アンタも忙しいだろ!!縋り付くな34歳のオッサンが!!」

「ガーネ、俺はお前が一緒に行くって言うまで、特務室でも便所でも付き合うからな」

「怖い!わかったわかった!!しつけぇな!!笑われてんだろが恥ずかしいな!!」

廊下を歩く侍女や衛兵たちがくすくすと笑いながら横を通り過ぎて行くのを耐えられず観念したガーネは半ばキレながらも了承した。



19時過ぎ。ガーネは了承したはいいものの、どうにも面倒で適当な理由をつけてすっぽかそうと書類を眺めていたところ、部屋の扉がノックされた。

いつも通りの『案件』であれば丁度良いとドタキャンする理由が出来たかと思ったのも束の間、顔を見せたのは衛兵長であった。

「げ」

「おい、『げ』ってなんだよガーネ。お前のことだからどうせ理由付けてすっぽかそうとしてたんだろ?そうはいかねぇんだな、はい出かけるぞ」

「はいガーネくんこれもらうね」

手からするりと書類をスメイラによって奪われ、カルセによって官服を脱がされた。

「裏切り者だ」

「ハイハイ、いってらっしゃーい」

ラズリにまでひらひらと手を振られ、どこか頼って欲しそうな顔をしたアメジとサイフィルのことは無視をした。

「え!?僕たちにもなんか縋って然るべきじゃない!?」

「ガーネ様つれない!!」

「うるさ、あーもうちょっとだけだからな」

観念したように部屋を出ると何故か近衛服を脱いだ近衛長まで廊下にいて、ガーネは『どういう面子だ』と一層面倒そうに眉を寄せた。


王城に比較的近い小料理屋に入り、座敷に通される。

既に始まる前から機嫌の良さそうな衛兵長が座敷に腰を下ろし、早速メニューを眺めた。

「オレンジジュース」

ガーネは面倒そうに腰を下ろしてネクタイを緩めてメニューも見ずにジュースと告げ、近衛長に視線を投げた。

「衛兵長はどうせビールでしょ。お前は」

「…私も一杯目はビールで構わない」

「だって」

「はいはい、すみませーん生3つ!」

「あれ、このオッサン俺の話聞いてた?耳怪我してんのかな」

「…君は飲まないのか、晩餐で結構グビグビ飲んでいなかったか」

近衛長の問いかけにガーネはいつの話をしているのかと記憶を辿るも、それがつい一昨日の晩のことかと思い返し肩を竦めた。

「あ?あー、なんか嫌いなモンばっか出たから、丸飲みするのにワインで流してただけだ」

「コイツめちゃくちゃ好き嫌い多いからな。ザルだから酔わないけど」

「酒ってさ、なんか渋いじゃん」

「はいはい子供舌」

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