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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第二十四章『外遊』

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220/310

210話「俺の可愛い女王陛下」

女王の乗車する馬車に、カルセが同乗する。

途中何度か休憩を挟み、王都に帰還する駅へ向かうための馬車車内。

時間の経過とともに緊張が少しほどけて来たディアマントは、横で馬に乗って並走するガーネを物珍しそうに窓から見つめる余裕が出てきたらしく、先程満足に話せなかったためか近衛長が制止するのも聞かずに窓を開けてガーネに声をかけた。

「ガーネ!」

「なんですか」

「お前、馬など乗れたのか」

「馬くらい乗れます。顔出すな引っ込めてろ」

雑な物言いにむくれた顔をしたディアマントだったが、ガーネの未だ警戒した顔を見てほんの僅かに眉を下げた。

「…ガーネ」

「なんだ」

「……」

名前を呼んだは良いものの、それ以上何も言えなくなったディアマントへ横目で視線を向けたガーネは小さく息を漏らした。

「…王都で街ブラする計画でも立ててろ、今度はちゃんと付き合ってやるから」

「…本当に?」

「俺が約束破ったことあったか?ほら、わかったら顔引っ込めろ。窓閉めとけ」

ディアマントは嬉しそうに少しだけ笑って、素直に窓を閉めて座り直した。

それを見たカルセが微笑ましく表情を緩め、ディアマントに声をかけた。

「良かったですわね、陛下。以前に外遊された時は散策などなさいませんでしたものね」

「うむ。…楽しかった」

ほんの十数分ではあったが、ほぼ初めてに等しい街中の散策を思い返し素直に頷いて返した。

「なによりですわ、王都ではどこに行きましょうね。何をなさりたいですか?」

「妾、あの串に刺さったのを食べてみたい」

「まあ、いいですわね」

「カルセ、お前はガーネと出かけてなにをしたのじゃ」

「そうですわね…前にお休みをいただいて、特務の皆様で温泉に行かせていただいた時は、射撃で遊んでガーネ様にぬいぐるみを取っていただきましたわ。あとは甘味屋でおやつをいただきました」

「…妾も、そういうことがしてみたい」

「ふふ、ではガーネ様に警備組んでいただきましょうね」

「…ヘルソニアは、怒らぬか」

「貴女私を何だと思っているんですか。そんなことで怒りませんよ」


駅まではあと二時間弱の地点。

事前視察で警戒していた箇所に差し掛かる。

ガーネは少し遠くを見つめ、馬の速度を上げ前方の特務の馬車に並走して声をかける。数言会話をして女王の乗る馬車に並走する形で戻って来ると、馬車の窓を叩いて近衛長を呼び、窓を開けさせた。

「来た。散らしてくる」

「やはりここか。我々近衛も出るか」

「いや、一人でいい。万が一俺が取りこぼしたら任せる、とにかく隊列崩すな」

ガーネの『来た』という声に、カルセが緊張した面持ちで意匠を握り締めて声をかけた。

「ガーネ様!もう少し近づきませんと、序列かどうか判断つきませんわ!」

「いらん、もう2人押さえてる。もし口封じに序列が混じってたとしてもそんな余裕はない、全部始末する。とにかくお前は陛下をお守りしろ、いいな」

「かしこまりました!」

ガーネが再び馬の速度を上げようとした瞬間、前方に何かを投げ込まれ周辺の視界が一気に白く曇った。

「クソ!連中コスい真似しやがって…!」

「ガーネ、止めるか!?」

近衛長が馬車を止めるかと判断を確認するも、ガーネは間髪入れずに声を被せた。

「止めんな!速度だけ少し落として走れ!的にされる!!」

そうは指示したものの、後方に行きアメジに魔法で散らさせる指示をするには遅すぎる。

ガーネは忌々しそうに舌打ちを漏らし、左手で剣を鞘から少し抜いて刀身を握り掌に傷を入れた。

掌が裂け、血が滴る。思っていた以上に深く切れてしまいそれに対しても小さく舌打ちを漏らすが、車列を止めてもこのまま走り抜けても危険なのは変わりない。大人しく的になる気はないガーネは左手を翳し過去一度だけ使用した盟約の呪文を唱えた。

「盟約、ガーネ・ディーム・ロットの名において契りを命ず!精霊・風、位は下!応じよ!!」

ガーネの詠唱に引かれ、周囲に風が強く吹く。呼ばれた精霊の気配に、カルセが青い顔をして窓に駆け寄った。

「ガーネ様!!『また』下位の精霊様ではなく上位の精霊様を召喚されてますわ!!」

「あー、間違えたな。仕方ねぇわ。…おい!貴様ら誰のおかげで顕現できてると思ってる!働け!!」

相変わらず精霊相手に横柄過ぎる態度を取るガーネを見て、カルセはヒヤヒヤと窓の外を見る。しかし、以前ガーネが下位地霊を呼んだつもりで上位を召喚した時と同じように、圧倒的な『何か』の力で精霊を使役する。風の精霊の加護で、周辺に風が吹き煙幕が綺麗に散らされていく。


「……少し前に、あやつから報告は受けておる。地霊の際も『ああ』だったのかカルセよ」

「…はい、その時は地霊様も少しガーネ様を値踏みなさっていた様子でしたが…今日は比較的、すんなりとご協力いただけているようで安心いたしました…」

「フン、あの男の『血』の問題よ。カルセ、お前もガーネから多少のことは聞いておろう。アレは特殊じゃ、…しかしなかなかやりおる。直接見れて良かった」

「…陛下、アレは…」

話についていけない近衛長がおずおずとディアマントに声をかけると、つい数十秒前まで王都散策に想いを馳せていたどこか少女のような顔からすっかり女王の顔になったディアマントと視線が合う。

「盟約術じゃ。知らぬか」

「…あれが、噂の」

近衛長が視線を向けた窓の外では、騎乗で剣を抜いたガーネが周辺に目を光らせていた。

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