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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第二十四章『外遊』

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208話「ベテランと若造」

「統裁官、我々はお前の『補助』でいいな」

「補助『で』いいんじゃない。補助『が』いいんだ。序列3に…雑魚2流れてきてんな、まぁいい。呪具とか術式とかはアンタらに任せる」

「儂らもそれが『最短・最速』と判断する、周辺も含め任せろ」

「ラズリたちだと『こう』はいかねぇからな、まだ。もう少し視野広く持てるように指導しときます」

「なに、我々ベテランとたかだか20代30代の若造を同列にされては敵わん」

「ははは、確かに」


剣を抜いたガーネは、いかにも余裕があるような態度で背後に控えた魔導師長・巫術官長と悠長に会話をしながら目の前の均衡教徒たちに向き合った。

「いいか、『序列は生け捕り、雑魚は始末』だ!」

「承知!」


ガーネは後方支援をベテラン2人に任せ、一気に前へ駆け出した。

序列無しの『雑魚』と判断した1人に、剣で首元の頸動脈を狙って突きを繰り出しほぼ一瞬で制圧する。深く入った傷から勢い良く血が吹き出し、返り血を浴びるもそれに構うこと無く足を踏み出して序列持ちの前衛へと剣を振るう。

前衛らしくさすがの力量はある様子で、一撃では仕留められずガーネの剣は受け止められた。

ガーネの後方で甲高い炸裂音が響き、カルセの悲鳴が聞こえる。

しかし聖結界の気配は途切れていない。

小さく舌打ちを漏らしたガーネは力任せに相手の剣を弾き、再び振り下ろして打ち合いになる。

視界の先の方で術式を展開する様子は見えるが、『後方』に託しているので目の前に十分集中できる。

剣と剣がぶつかり合う度に、小さく火花が散る。

「ガーネ!右へ!!」

魔導師長の声に反応して咄嗟に右に半歩ずれた。元いた箇所目掛け拘束用の魔道具が飛んでくるが、魔導師長の魔法により弾けて空中で灰になった。

「さっすが、ベテランは心強いな」


ガーネは中衛・後衛がいる中でまともに前衛と打ち合っても長引くだけだと判断し、少しだけ距離を取るように数歩後ろに下がって剣を握り直した。

視界のギリギリの所でアメジが一人フィジカル頼りで敵をふっ飛ばしたのを確認したが、ガーネの視線は正面に向いたままである。

剣を握り直した手元で小さくかちゃりと金属音がする。

互いに間合いを取るように、ほんの僅か数秒だけではあるが睨み合いになる。

そこにガーネの死角を突いたつもりらしい残りの序列無しの男が向かって来るが、ガーネは容赦無く剣を横に振り的確に向かってきた男の喉笛を裂く。

「舐めやがって、足音と殺気くらい消しやがれ」

「フン、違いない。だからその男はいつまでも序列を与えられなんだ。まぁ、生涯序列を得ることはなかったが」

「そうだろうよ。俺だってこんな使えねぇ野郎に、肩書なんざくれてやらんわ」

ここまで僅か数分程度ではあろうが、後衛の術者が前衛とガーネの打ち合いや序列無しとはいえ一撃で的確に『処理』をする手腕と容赦の無さに腰が引けたのか、じりじりと後退りをした。

まだ近くには避難中の一般人がいる。

「統裁官!お前のせいで民衆が何人死ぬか、あとで死体の数を数えるんだな!」

「ガーネ、封じておる!殺れ!」

「無論だ」

後衛が一般人を巻き添えにしようとしているのを事前に見越していた巫術官長によって、退路を結界で阻まれた後衛の教徒。ほんの僅か数拍ではあるが行動が遅れ、ガーネは右手に持っていた剣を左手に投げるように持ち替え、空いた右手で銃を左肩のホルスターから引き抜き視線も向けずに遠慮なく発砲した。

的確に後頭部に弾が直撃した男は、声を上げる間もなくその場に崩れるように倒れた。

そのまま中衛の男の膝と肩を目掛けて引き金を引き、姿勢が崩れた所で魔導師長と巫術官長へ声を張り上げた。

「中衛確保!!」


ガーネは左手で剣を握ったまま前衛の男の元に走り距離を詰めると再度剣を振り下ろす。

金属のぶつかる音が再度響き、やや前方周辺でラズリの霊力の気配を感じガーネは口元に笑みを浮かべた。

「…統裁官、我々『序列は生け捕り』じゃなかったか」

「そのつもりだったけど、予定は変わることもあるだろうが。どうする、お前らの引き連れてきた雑魚共、俺の部下たちと他で数人始末してるぞ」

「せめて、貴様の魂だけでも…!」

「終焉の魔女も俺の魂欲しがってたけど、俺の魂は売約済みなんだ…よ!!」

剣だけで攻めてくると明らかに油断している前衛の男の膝を力いっぱい蹴りつけ、関節を砕く。

悲鳴と共に姿勢が崩れた瞬間に、再度剣を振り下ろして手首ごと剣を落とした。

「序列制圧!!確保!!」

ガーネの怒号が響き、魔導師長と巫術官長に視線を投げる。

「残党掃討してくる、ここは託す」

「ああ、任せろ」

ガーネは軽く剣を振って血を払うと、残りの『雑魚』もとい序列無し教徒の始末に走る。


ラズリの周辺に死体が3、そしてラズリ自身も相当息が上がっていた。

「…ッ霊爆!」

自身に覆いかぶさるように向かって来た男の身体に両手を添えたラズリは、小さな身体で自分よりも相当体格のいい相手にも怯むことなく自身の霊力を注ぎ込み、敵の霊力の流れを無理矢理乱して体内で魂から引き剥がすという大技を繰り広げていた。

死体が4に増えたところで、ラズリに向かっていく他の教徒をガーネは背後から容赦無く斬り捨てた。

「ラズリ、怪我人が多数出てる。こっちは俺がもらう、お前はそっちに回れ」

「…ガーネ…!」

ガーネの顔を見た瞬間に、ラズリの顔が酷く安堵したように一瞬だけ緩み大きな双眸がうっすらと水分の膜で揺らいだ。

「よくやった、向こう頼むぞ」

「…ッアンタも怪我、増やすんじゃないわよ!」

「任せろ」

ラズリが式典会場内に運ばれた怪我人の元へ走っていくのを見届け、残りの教徒3人も遠慮なしに的確に急所を狙って始末した。


視線をアメジの方に向けると、足を拘束された2人とアメジと正面からやり合っている男を目視確認する。

ガーネはそのままアメジの方に駆けて行き、近くの衛兵に指示を飛ばす。

「ここ、さっさと人退けさせろ」

「はい!」

「アメジ、お前一人で大丈夫だな?もう片付くだろ」

ガーネが拘束されている教徒2人の心臓目掛けて発砲し始末すると、アメジに雑に目の前の男の始末を託し、返事も聞かずにその場を離れた。

「やだぁ、ガーネ様ったら容赦ない!かっこいい!もっとエイミーとお話ししてよ!!…で、あんたはあたしと2人っきりね」

「…ッくそ…!」

「クソとか言ってんじゃねぇー!!」

ガーネのお陰で周辺を気にしなくて良くなったアメジは、今まで多少の遠慮をしていた目の前の男の得物である棍棒に杖を振り下ろしフィジカルで破損させる。

「う、嘘だろ…!?」

「あたしとガーネ様の時間を奪った罪は重いわよーッッ!!!」

アメジが容赦無く魔法の杖を振り、手ぶらになった男の側頭部を強かに殴打し制圧した。


ガーネは右手に握った銃をホルスターにしまい、剣を握り直して走った。

「そっち任せた。後ろは俺がもらう」

「ガーネ…!」

近衛長の背後でガーネは剣を構えた。近衛長が小さくガーネを呼び、前に向き直る。

これで形勢は大分整っただろうとは思いつつも、近衛長任せにしていてどういう術を使うか大して確認もしていなかったため、こちらも流れ弾で女王に怪我をさせないために得物を剣にしぼり直す判断をした。

「ガーネくん!真ん中、影で足縛る!後ろは呪具!」

スメイラの声でまずは真ん中から始末するかと、敵が反応する前に首元に剣を突き立てる。その流れでもう一人の足元、腱を狙って姿勢を崩させ、ガーネ自身も姿勢を立て直す。

「ガーネ!なんか呪具!」

「なんかってなんだよ!」

「わかんない!!」

呪具を使用される前にとガーネは剣を呪具使いに向かって投げ、脇腹に深々と突き刺さるのを確認すると再度銃を取り出して発砲した。最後に腱を切って足を使い物にならなくさせた男のこめかみを目掛けて引き金を引いたと同時に、近衛長の方も目の前の男を綺麗な型の剣技で斬り捨てていた。

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