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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第二十四章『外遊』

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207話「魔法少女・エイミー」

均衡教徒、6名。

文字通り膠着状態と言った様子で、目の前のやたらと厳ついのに服装だけファンシーな大男と数秒睨み合いをしていた。

アメジの見た目のチグハグさやどこからどう見てもオネェであることに若干の怯みがあったことは否定はしないが、単純にそれ以上に明確な『力量の差』が見て取れたからである。

正面から突っ込んでも、当然隙はない。

そしてどう攻めようかと考えあぐねている様子であった。

「なぁにーあんたたち。あたしがキュートだからって、遠慮してる?そうよね高嶺の花っぽいもんね、わかるわぁその気持ち。でもね、あたしの心はガーネ様のモノなの」

「…おい、その辺の民衆人質に取れ。あの手合いは正面からやるな」

後方にいた指示役らしき男が、小さな声で仲間に指示をする。それを聞いて頷いた教徒の女は身軽さを活かして横に飛んで近くの避難路にいた一般人に向かおうとしていった。

「させるかゴラァ!!」

今までのあからさま過ぎる裏声から、地声と思わしき野太い声が響き『魔法の杖』が炸裂した。魔法ではなく完全にフィジカルであった。

地面が抉れ、まともに喰らえばひとたまりもないことは明白な破壊力である。

「あたし、女だからって容赦しないからね。ましてや一般人に手出ししようだなんてこのエイミーがけちょんけちょんにしてやるから!」

そう言ってアメジは杖を振り回し、一般人を狙おうとした女の脇腹を強烈に殴打した。

女の身体は容赦なく横に吹き飛ばされ、近くの壁に強かに全身を打ち付けた。生死の程はわからないが、あの威力でぶつかればおそらく息はないだろうと想定される。


日頃特務のメンバーから『バカ』と言われるアメジは、確かに自分がバカである自覚はあった。魔導書も数行読めば眠くなり、暗記も出来ない。言われたことは比較的すぐ忘れ、難しいことを言われると途端に理解出来ない。しかし、『何をすべきか』まで見失う程馬鹿ではない。

今すべきことは、敵を始末することは勿論であるが、『一般人を守ること』。

強さだけで言えば、自分が強い自覚も自信も十二分以上にある。

しかし、その強さを前面に出せば一般人を巻き添えにしかねない自覚もある。衛兵長が、ガーネが何故自分をこの配置にしたのか考えればわかる。

『守ることが出来る力がある』と、信頼していたからだ。


アメジは杖を握り、未だ避難の完了しない民衆の列の盾になるように位置取りをする。

「抜かせないわよ。勿論、ガーネ様の邪魔もさせないんだから」


「構うな、この人数相手に守り切れるか。人質を取って統裁官の所に向かえ、出来れば女か子供だ」

「了解」

「フン、バカじゃないの!あんたらガーネ様のこと舐めすぎ!仮に人質取ったところで、ガーネ様なら『その他大勢』取るために人質ごと殺すわよ!冷酷なんだから!そこが悪い男感満載で痺れるわよね、容赦無くて!……でもその前に、『抜かせない』って…言ったハズだけど?」

「構うな、行け!」

前衛の一番アメジに体格の近い教徒が大型棍棒を振り上げてアメジに向かって来る。アメジはその対処に向き合わざるを得なくなると、その隙を突こうとした他の教徒が人質の群れに向かっていく。少し離れた所で衛兵も剣や槍を構えているが、おそらく分が悪いのは見て取れた。

「あんたたちは今あたしとやり合ってるんでしょーが!他に目移りしてるんじゃないわよ失礼しちゃうわね!!」

アメジは杖で棍棒を受け弾き返すと、姿勢を変えて民衆方面に向かった教徒の足元に狙いを定めた。


大掛かりな技にしたら民間人も衛兵も巻き添えになる。

挙句土地や建物を破壊しかねない。

ガーネが散々『王都じゃないから好き勝手出来ない』と言っていたのを思い出し、迂闊に破壊をしては辺境伯はどうでもいいにしても『ガーネに』迷惑がかかる。それはいただけない。


一応アメジもそこまでは考えられており、出力を最大限に絞って基礎中の基礎の魔法で足止めをする。

「エイン・フリエーレン!」

アメジの詠唱で、民衆に向かった2人の教徒の足ごと地面を凍らせる。抜け出すには魔法を解除するか、氷を溶かすか、足首から下を切断する以外には早急な手段は無い。

これで多少持たせられれば、とアメジは棍棒を持って体勢を立て直した男に向き直り、再び杖を構えた。

「あの後ろでガーネ様みたいに偉そうに指示してる男も厄介だけど、あんたみたいなのが一番厄介。か弱いあたしに出来るかわからないけど、死んでもらおうかしら」

「…か弱い?貴様、俺らの仲間の女…アレ多分即死だぞ」

「あらそう?火事場の馬鹿力かしら。それともあんたたちが弱かったんじゃないの?ガーネ様に雑魚認定されてるくらいだし」

「…吐かせ!」

棍棒と杖がぶつかる音が、重く周囲に響く。武器同士のぶつかり合いにしては異常に重量のある音で、指示役らしき男も人質を取りに行かせた配下がまるで使い物にならない状態に舌打ちを漏らした。

「お前ら!こっちは時間を稼ぐ、呪具でもなんでも使って足元どうにかしろ!」

指示役が捕らえられた二人組に声を張り上げ、目の前の棍棒を持った配下の補助に回るべく呪具を取り出した。

「爆ぜ飛べ!」

一番最初に奇襲を掛けた際のものと思わしき爆発型の呪具を発動させて投げる直前、アメジは笑みを浮かべた。

「あんただったのね、ガーネ様のイケメンに傷付ける原因のクソ野郎は!どこ傷入ったのか知らないけど!!ヴェルテ・イディグ!!」

アメジは呪具を持った指示役ごと、『防御結界』で包んだ。

「な、…!?」

「イケメンに傷入れた恨みじゃボケ!!」

発動した呪具は止められない。

周囲に被害を出さず、結界の中で無惨に呪具が炸裂し、指示役の男は自らの攻撃によって至近距離で直接その爆発を受けた。

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