表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第二十四章『外遊』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

216/310

206話「ゴシック・ロリータ」

「あーあ、なんであのゴリラじゃなくてアタシのところにこんな集まってるわけ?」

ラズリ自身、見た目で舐められかつ特務の人間ということで教徒が群がった理由は自覚していた。

しかし、民衆が多数いる避難路からこれだけ引き剥がせれば御の字であろう。

おそらく、全部で教徒は20人。別途3人の序列持ちはガーネが相手をし、うち5人は女王を狙いに近衛の方へ行っている。さらに何人か、ガーネの方へも流れてはいるが向こうは平気だろうしそこまで気にかけている余裕はない、と、ラズリは正面を向き直った。

完全に、少女が大の男に取り囲まれている図式である。


「見た目で舐めるのはいいのよ。だってアタシ可愛いからね。でもこんな可愛い女の子、よってたかって7人がかり?キッショ。あのフィジカルゴリラには勝てないけどアタシには勝てるって言いたいの?」

顎先で結んだリボンを解き、ヘッドドレスを外す。ヘッドドレスに装飾代わりに付けているラピスラズリの数珠を左手に持ち、いつも通りの勝ち気な笑みを浮かべて均衡教徒を見遣る。

「言っておくけどね。アンタらがしつこく付け回して狙ってるウチの『統裁官』閣下が、アタシが可愛いからって箱入り娘扱いしてるわけじゃないのよ。ご存知?知らないか。いいこと、アタシはね、特務の中じゃガーネの次に優しくないわよ。なにせ、『人の壊し方』も、『人の殺し方』も────アタシが一番、熟知してるんだから。あ、でも安心して頂戴。ガーネの方が容赦無いから」


強気に言い煽りはしたものの、多少やれる自信はあれど実践の経験はほぼ無い。

完全にハッタリも良いところではある。しかし、何が自分の役目か、何をすべきなのかは理解している。そして『出来る』自信もあった。

それにしても、自分が序列持ちでは無いとは言え7人の術者や戦闘員相手にどこまで動けて使い物になるのかと、数珠を握り締めた。


「…!?ぐ、ああああ!!」

剣を振り上げた均衡教徒が、そのまま剣を振り下ろせずに悲鳴だけを上げた。

遠巻きに民衆を避難させていた衛兵も、民衆も、そして均衡教徒たちも何が起きたかわからずに悲鳴を上げた男を見た。

「だから言ったでしょうが。『壊し方』なら詳しいのよアタシ。肩の関節と膝の関節、潰れてるからね」

数珠を握った左手を翳し、ラズリが見た目14歳には到底見えない妖艶な笑みを浮かべた。

そのまま左手をくいっと引く動作をすると、男は喉を詰まらせたように悲鳴が急に止まりそのまま地面に崩れ落ちた。

「…っ、貴様なにを…!」

「やぁね、敵に手の内そうそう晒すワケ無いでしょ。あ、でもこれはガーネが一回出力バグでアンタらの中の序列持ち捕縛した時に殺しかけた奴、とだけ言っておきましょうか。アタシの方が精度も使い方も上手でしょうけど。ちゃんと『即死』させてあげたし。まずは一匹、残り六匹ね」

以前ガーネが敵を『捕縛』する目的で使った『霊鎖』であるが、本来はそれこそ拘束用の術ではある。

普段あまりべらべらと喋る方ではないラズリだが、妙に饒舌なのはほんの数秒でも気を引き、時間を稼ぐためであった。

ラズリ自身、ガーネに悪い方向で感化されているかと独り言ちながら肩を竦めつつも、複数人で来られた場合に備えて次の術式を展開すべく静かに手元で印を結んだ。

その動作を見て、前衛らしき3人が一気にラズリに武器を持って駆け寄る。

「遅い。『霊糸』」

ラズリの術の発動の方が一拍早く、展開した術式からラズリの霊力によって放たれた糸が教徒たちの足を絡め取った。前に走ってきた速度と勢いを殺さないように後ろに引く形で右手で糸を操作し、足を取られた教徒は前のめりに転倒する。それを見た後衛配置の術者もラズリに攻撃を仕掛けようと印を結ぶ姿が見えると、左手を前に翳して術者に向けて霊力で作った細い針を飛ばす。

高密度に練り上げられた霊力の針『呪針』は、術者の手首と眼球、喉、膝に的確に刺さり、致命傷には至らず始末は出来てはいないが印を結ぶことも声を出すことも、動くことも見ることも出来ずに地面に倒れ蹲った。激痛で声にならない悲鳴のようなものだけが、周囲に響いた。

「アタシ今日ね、『正装』の命令だからお気に入り一張羅なのよ。汚したくないの。わかるでしょ?このドレス、まだ3回しか着てないんだからあんまりレディーに乱暴しないでもらえる?」

「小娘が…!!」

「小娘?失礼しちゃう。アタシこう見えても32歳の、女として一番脂の乗った年頃なんだから。見た目が14歳なのは14歳のアタシが一番可愛いからよ。ま、いつでも可愛いんだけどね?その維持に多少霊力使ってるんだから、アンタらごときに無駄な霊力使わせないで」


そうは言ったラズリの額に、僅かに汗が滲む。

緻密な霊力操作をしながら背後の民衆へ攻撃が向かないように細心の注意を払い、6人の男を相手にするのはさすがに神経がすり減る思いだった。

────クソ、決め手に欠ける…

小さく舌打ちを漏らしたラズリが右手を前に出し、人差し指を立てた。そのまま一番近くにいた男を目掛け、一番単純かつ緻密さの必要のない術を繰り出した。

「霊鎖っ!」

霊力で出来た鎖が男の首に絡まり、容赦無く絞め上げる。骨の折れるような軋むような音と共に、筋肉が断裂するような嫌な音を立てて男が絶命すると、奥で倒れている先ほど仕留め損なって蹲る男にトドメを刺すべく左手を翳した。

「解…!」

男の体内に残ったラズリの霊力の針が解呪の呪文と共に爆ぜ、体内で出血を引き起こして静かに息絶えた。

「…はぁ…、…ほら、3匹始末したわよ!次に死にたいのはどこのバカ!?」

多少息が上がったラズリが再び数珠を構え、眼の前の教徒たちを睨みつけた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ