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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第二十三章『踏査』

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189話「見聞」

馬車が走り出して数十分。

一応は『警備最高責任者』として、事前に打ち合わせていたポイントを要所要所で確認をし、記録をしていく。しかし次第に口数が少なくなり、いつものように最終的に無言になって真っ青な顔で姿勢を何度も変えたり目を瞑って見たりと雲行きが怪しくなっていった。

「……噂には聞いていたが、其方本当に凄いな」

「感心してないで助けてくれませんかヘルソニア様」

ガーネのか細い訴えを聞いて、ヘルソニアはわざとらしく窓の外を眺めた。

「巫術官長…嘘つき…絶対酔わないって言った…」

「儂はそんなこと一言も言っておらん。しかし想像以上だ、魔導師長どうにか出来るか」

「私は医者では無いのでな」

「いやぁ、医者でも無理でしょ。アハハハ!」

魔導師長の見捨てるような言葉と衛兵長の容赦のない笑い声に青い顔のまま苛立ちを露わに据わった目付きで衛兵長を睨んだ。


しかし、数分後ガーネは顔色が悪いながらも立ち上がって窓を開けた。

「────…焦げ臭い」

すん、と鼻を鳴らし、少し遠くを見る。

風向きは進行方向に向かって向かい風で、匂いは風上である進行方向からやって来る。


「…そうか?」

「いや、確かに…かすかに匂うな」

「野焼きか。…文官長」

「はい」

「外交一週間前から終了まで、街道沿い野焼き禁止の通達出すように調整してくれ。煙と視界阻害が面倒なのと…もし火薬の類使われでもしたら発見が遅れる」

「わかった。違反時の取り締まりはどうします」

「警察関係は俺か衛兵長でやります」

「ガーネお前、よくその状態で匂い気付くな。窓閉まってたろ」

「だから言ってんだろ、酔ってても動けはする。非常ーっに、気持ち悪いだけだ。巫術官長の嘘つき…」

「儂は絶対酔わないとは言っていないぞ」


ガーネの馬車酔いが限界に達する直前、不浄となりうるために結界を張っている地点へ到着する。この場所は実際に結界監査含めて現場を確認する予定の為、一同は馬車を止めて降り立った。

「……死ぬかと思った…」

「我々も、其方があの狭い馬車内で吐瀉物を撒き散らさないでいてくれてよかったと思っている」

ヘルソニアが容赦なく言いながら地面に蹲るガーネを見下ろして肩を竦めた。

「いや、さすがに本気でヤバかったら馬車止めさせますって…」

「統裁官、水を」

「サンキュ」

気を回した文官長が冷えた水をガーネに手渡し、少し口に含んで喉の奥を通過させた。

早速結界監査を始めた魔導師の横で一緒に確認をし、文官長へと記録を依頼する。

「魔導師長、ここ最後に張り直したのいつだ。随分古くねぇか」

「古いな。陛下の外遊前に張り直した方が良い」

「ただあまり直近過ぎると安定しないだろ、どうする」

「帰城し次第、早急に手配しよう」

「なら、この件は託す。巫術官長そっちはどうだ」

「霊場の方は問題無さそうだ。荒らされなければ、だが」

「そこはさすがに予見できねぇな。よし…じゃああっちだ。地図だと少し奥の方に古い水場がある、そこの確認を二人に頼みたい」

「承知した」

「衛兵長と近衛長は俺と旧道の確認。魔導師長、道具借ります」

「ああ」

ガーネと衛兵長と近衛長は三人で少し逸れた旧道へと入っていく。

「…本当に、ここの道は地図に載っていないな」

近衛長が地図を見ながら小さくつぶやくと、隣で聞いた衛兵長が肩を竦めて頷いた。

「コイツ執念深いからな」

「執念深いってなんすか。5つ古い版の地図には載ってた道だ。二人で潜伏出来そうな箇所とか確認してもらえますか」

「君は?」

「俺は結界と座標の確認する」

「………そうか」

すでに二人に現場確認を託すつもりでいたガーネはその場で道具を広げて観測の準備をしていた。

「近衛長、行くぞ」

「…ああ」


二人で古く踏み固められた、昼間なのに鬱蒼として少し薄暗い道を進む。

「…街道が見下ろせるな」

「狙われるとしたらここか、だけどまぁ俺らがここで馬車がはっきり視認できるってことは馬車からも確認は出来そうだな」

衛兵長は地図と景色を見比べ、地図に載っていない旧道の書き込みを追加し、注釈を付けた。

「このポイントを通過する際に、隊列を少しずらして陛下の馬車の盾にするように入り込めばいけるだろうか」

「そんな道幅あるかね、ガーネの判断でどうかだな。おーいガーネ、来れるか」

衛兵長が声を張り上げ、旧道入口のガーネを呼ぶ。

丁度観測を終えたガーネは少し小走りで声のした場所に向かって駆けてきた。

「はい」

「お前、これどう見る」

衛兵長が目線の下の、通過予定街道を指さしてガーネに問いかけた。ガーネはほんの少し考えてからしゃがんだり立ったりと視線を変えながら通りを眺めた。

「…隊列少しずらして、近衛か衛兵の馬車で目隠し作りたいが…車幅が足りるかどうかですかね。ただ、向こう側からも視認出来るだろうから逆にここは速度上げて突っ切って投擲対応にするか。…地図で見るよりここは高台だな。…近衛長はどう思う」

「……車幅が足りるのであれば、君と同意見だ。ただ目算だと、かなり無理をしそうだな」

「無理に隊列崩すよりは、視認して発見したら排除の方が早いか」

「視認出来なかったり見落としたりする可能性は」

「ほぼない。ウチの鑑定士なら見落とさない、絶対に。…一旦戻るぞ」

三人は馬車へ戻りながら周辺を確認しつつ打ち合わせをする。

馬車で待機するヘルソニアと、水場の確認に向かった魔導師長と巫術官長と合流し改めて地図と問題の箇所を馬車側から確認する。

「やっぱ馬車並走は無理がありそうだな。魔導師長、索敵はこっちでする。合図でこの距離、あそこに先制は出来るか。最悪ウチのゴリラも使うつもりですけど」

「早打ちが得意な者を選んで同伴しよう、それに私も、この程度であればあそこに攻撃魔法など造作ない。『筆頭』を舐めて貰っちゃ困る」

「はは、別に舐めてないですけど。どっちかっつーと俺のこと舐めてたのアンタらでしょ」

「今は別に舐めていない」

「ハイハイ、…じゃ、このルートの場合はあそこの通過地点は要注意、って感じだな」

「ここから中継地点まで30分程度か…結論は明日の復路の本命ルート次第だな」

近衛長が周辺を見回し、書き込みの増えた資料や地図を眺めて呟いた。

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