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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第二十三章『踏査』

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188話「懸念と火花」

数日後。

「じゃあ、出かけてくる。戻りは何事も無ければ明日の夜。スメイラ頼んだぞ」

「はい、行ってらっしゃい。気を付けてね」


荷物の支度をすませ、ガーネはスメイラに特務を託して出かけていった。

各部署での調整を重ね、外遊の下見の日となった。


駅に到着し上等車両に乗り込み、ガーネはヘルソニアの隣で腕を組んで考え込んでいた。

「ガーネ」

「はい」

「何か懸念があるのか」

「…強いて言うなら……馬車酔いですかね…」

ヘルソニアは想像と違った答えが返ってきて、珍しく少しだけ表情を崩した。

「まあ、それは2割冗談として」

「8割は本気か」

「はは、…『今回』は、どのタイミングで来るかなぁと」

「…今回も来ることを想定しているのか」

「当たり前でしょ、来ますよ絶対。特務の連中置いて、出てるの俺だけですよ。…アイツら、随分俺のこと舐めてるみたいなんで。それに来る理由なんて、ヘルソニア様も陛下もよくご存知でしょう」

「…よく、三日で開けたな。そも、私も陛下も、其方が『あそこ』にたどり着くのに二年はかかると思っていた」

「それ、陛下にも言われましたよ。あ、言っときますけど『書き換え』ちゃったんでサーセン。…『答え合わせ』、アレでいいんですかね」

「さて?どうだろうな」

「……ま、良いですけど」


ヘルソニアと話し込むガーネの後ろ姿を、近衛長・ジェレイドは面白くなさそうな顔で見つめて視線を窓の外に向けた。

「なーに黄昏れてんだ、近衛長」

近衛長の隣に移動して腰を下ろした衛兵長は、いつもの雑な態度で声を掛けた。

「いや、別に」

「ガーネのこと気に入らねぇのか」

「…そういうワケでは」

「いやぁ、お前意外と顔に出るよな」

「…そう、だろうか」

「ま、アイツ生意気だしな。昔からあんな感じだわ」

「衛兵長は、統裁官と付き合いが長いんだったか」

「アイツが7つくらいのときからだからまぁ…あれ、アイツいくつだっけ。おーいガーネ、お前今いくつだ」

「……19」

急に少し離れたところから話題を振られ、振り向いたガーネはあまり見ない衛兵長と近衛長の組み合わせに少し意外そうにしながらも返答をし、そのまま前に向き直った。

「19だとよ、だから12年くらいか」

「随分、長い付き合いなのだな」

「まぁな。当時俺は警察官で、アイツの『親』の後輩でさ。よく面倒見てたよ、クッソ生意気であんまり昔から変わってねーわ。口ばっか達者で」

「…まあ、多少…頭は回るようだな」

「悪いことは言わん。口喧嘩は吹っ掛けない方がいいぞ。一番嫌な返し方してくる上に逃げ道全部潰すからな、ハハハ。…バカっぽいけど、アイツは馬鹿じゃない」


衛兵長は笑いながら言っていたが、完膚なきまでにやられた第一回評定を思い出しジェレイドは小さく舌打ちを漏らした。


乗り換え駅に到着し、早速一同は駅の状況を確認し始めた。

「意外と通路が広いな、野次馬対策しねーと」

「いっそ駅封鎖しますかヘルソニア様。どうせ特別編成車両でダイヤ調整かけるわけですし」

衛兵長の言葉にガーネが頷き、ヘルソニアへと視線を向けて問いかけた。

「そうだな、それが無難かもしれん。ガーネ、駅はどのようにこなす」

「民衆は駅前広場で顔見せ出来るようにしましょうか。地元警察に応援要請します。汽車の到着後、魔導師・巫術官・特務でサイフィル出します。術式や呪具何かの残存や仕掛けが無いか安全確認をしてから陛下を下ろして馬車に乗り換えで…所要時間30分、というところですかね。近衛長、その時間で陛下を下ろすまでの車内段取りは足りるか」

「問題ない」

「ならその方向で調整を」


駅のホームから実際の馬車への乗り換えまでの動線を確認し、一同は馬車へ乗り換えの準備を始めた。

「巫術官長」

「いかがした、統裁官」

「馬車酔いを絶対にしないように俺を守ってくれ」

「…………は?」

「馬車が嫌だ、乗りたくない、絶対酔う」

「ガーネお前、まだそんなに酔うのか」

やや呆れたような顔でガーネを見た巫術官長と衛兵長だったが、ガーネ本人はいたって真剣である。

「体質は自力じゃ変えられない。酔いたくない」

「そんなに酷いのか統裁官」

「ちょっとだけだ、酔いたくない」

「ちょっとだけなら我慢したらどうだ、まあ…気休め程度で良ければ、だが…対策できないことは無いが」

「絶対酔わないんだな絶対だな」

「絶対とは儂は申しておらん。統裁官も自分で言っておったであろう、『体質は変えられない』と。それの調律の補助のようなものに過ぎん」

巫術官長に縋るように迫るガーネに、珍しく仕事以外で近衛長の方から声を掛けてきた。

「……君は、そんなに馬車に酔うのか」

その言葉は優しさから出た心配の言葉では無く、ガーネは評定の際から舐められているのをわかっていたためもはや敬語の類は一切使わないことに勝手にしていた。

「馬車っつーか乗り物全般基本無理。汽車も酔うけどまだマシなだけだ。三半規管が死ぬ」

「その状態で、もし移動中に襲撃されでもしたらどうするつもりだ」

結局こき下ろしたいだけか、とガーネは眉を寄せ、自分よりもやや背の高い近衛長に視線を向けた。

「どうするって、制圧するに決まってんだろーが。こっちは何度も実際にそうして来てんだよ、現場舐めんな」

ガーネとジェレイドの視線の間になにかばち、と火花が散るような光景を見た気がして、年長者である巫術官長が「まあまあ」と割って入りガーネに『気休めの調整』をして、ようやく馬車に乗り込んだ。

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