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断罪ディストーション  作者: 梦月みい
第二十章『再縛』

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162話「クソガキ」

「…ふう。さてこれからどうしようかね」

少し落ち着いてから改めて今後のことを考える。

あそこまで派手になるとは思わなかったが、観衆も多数いて自分の『力』を知らしめるには十分過ぎるだろう。

連中が次のフェーズに移行する前に、まずはこちらも動かなければ。

関係各所への調整と事前通達、その他諸々やる事は山積みである。

最終、あの女も説得する必要があるかもしれない。しかし状況については誰よりもわかっているはずだし、そこは国の王として何が必要か何をすべきかの取捨は出来ると信頼していた。


ガーネは短く息を漏らしてから部屋のドアを開け、廊下を進んだ。

特務室へ向かうさなか聞こえて来る、衛兵中心に城の人間の自分に対する『地霊様を召喚して使役した』という声に、小さくほくそ笑んだ。


特務室のドアを開けると、後処理に忙しそうな面々と一瞬視線が絡む。

直前まで『盟約』の話しをしており、ガーネの気配に話題を切ったのも聞こえていた。


「……ラズリ」

「なによ」

「…………」

「…?なに、どうしたの」

呼んだはいいものの、無言で腕を組んだガーネを怪訝そうに見つめたラズリに釣られ、全員ちらりとガーネを見た。

「……怒らないって、約束出来るか」

「なによ、どうしたの。言ってごらんなさい」


数日前、入院中に『痛いとかしんどいとか怠いとか、ちゃんと言って』と約束したことをラズリは思い返していた。

ほんの数時間前にもそれを釘刺して、ガーネの口から『わかってる、約束する』と返ってきている。

落ち込んでいた件でも白状する気になったのだろうかと、いつもよりも優しく諭すような声で返答した。


「……絶対怒るなよ。……手が痛い」

「……はい?」

「手、ちょっと肉抉ったとこが痛い。俺死ぬかもしれない、助けてラズリ」

先程処置した、左手に巻かれた包帯が真っ赤に染まっていた。

召喚の儀式の様子はラズリ自身も見ていたし、忘れていたがその時はあとで処置してやらねばとも思っていた。

色々な衝撃で、すっかり失念していた。


「…………」

ラズリは真顔でガーネを見た。

「怒んないって約束しただろ!なんで怒るんだよ!」

「……クソガキが」


ラズリが冷ややかに吐き捨てながらも、処置道具を取り出して真顔で窓際のソファへ顎をしゃくった。

ラズリに処置を受けている最中に、アメジが傍に寄ってきてガーネに声を掛けた。

「ガーネ様ガーネ様」

「なんだよ、また何かやらかしたのか」

「んもぅ、そうじゃないわよ!……あのね、あたし1個聞きたいんだけど……ガーネ様、地霊様呼んで『俺に従え』って啖呵切ったじゃない」

「啖呵切ったっつーか、契約者は俺だ。それの何が問題ある」

「あたしの認識が違ったのかなと思ってカルセちゃんとも話してたんだけどね?本来は、『地霊様にこちらが協力をお願いする』ものなんじゃないかしらって。あの態度でもし地霊様が怒っちゃったら、どうするつもりだったのか……今後のこともあるし確認しておこうかしらって思って」

ガーネはその言葉を聞いて、「へぇ」と小さく呟いてアメジの顔を見上げ、思わず小さく笑みを浮かべた。


目の前で手の怪我を治療しているラズリも含め、一般的には地霊『様』、精霊『様』という扱いなのは、ガーネ自身も把握している。

感心したのは、アメジの発言と考えであった。

「なるほどね」

「なるほどじゃなくって。ね、どうなのよガーネ様。時と場合によっては、ガーネ様が保護しようとしていた一般人に被害が出かねなかったの、わかってる?」

「全然?だって俺の方が『地霊ごとき』より上だし。地霊程度と俺を同列にするんじゃねぇ、連中は俺の魔力によって召喚された、俺の使い走りだ。アイツらもどっちが格上かわかったから、大人しく俺の言うこと聞いたんだろ。アイツらもバカじゃねぇしな。そも、この俺が召喚して『使役出来ない』なんて有り得ないね。それに何のためにお前らをあそこに配置してたと思ってるんだ」

「……え?え、そういう感じ?」

「そういう感じ。聞きたいことはそれだけか」

アメジは若干腑に落ちないような顔でカルセを振り返るも、カルセも小さく首を振るに留めていた為それ以上は何も言わなかった。

「……ガーネ、ドレス追加二枚だからね」

「はいはい覚えてるよその約束も」

場の微妙な空気を誤魔化すためか、ラズリがガーネに小さく言いながら巻き終えた包帯の端を処理してから手を離した。

「さてと」

ガーネは改めて机に向かい直して書類に向き直り始めた。


数時間後、夜も更けて先の案件書類が粗方片付いてスメイラはふうと息を漏らした。

「ガーネくん、こっち終わったよ」

「おう、サンキュ。上がっていいぞ」

未だ書類に向かっているガーネに、まだそんなに残っているだろうかとスメイラは首を傾げた。特務のメンバーはとっくに各自の部屋に引き上げており、二人きりであった。

「まだかかるの?分担割り合い、多かったかな」

「え?あー、さっきの案件書類なら三時間前くらいには終わってるぞ。別の仕事だから気にしなくていい」

「手伝おうか?」

「平気。今後忙しくなるだろうしな」

スメイラは含みを持たせたガーネの物言いに首を傾げた。

「また悪いこと考えてたりする?」

「全然。俺いつも真面目に生きてるし、悪いことなんて考えたことない」

「……………………へえ」

「なんだよ、どいつもこいつも。いいからさっさと上がれ」

「はいはい。また完徹なんてやめてよ」

「わかってる、ぼちぼち引き上げる」


関係各所への通達文も含め、調整の事前準備は完了した。

次は外堀を固めに行くか。そう考えながら、ガーネは作成した書類を引き出しにしまった。

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