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77、バナバナ星 〜ビビりすぎの宇宙海賊

 僕達は、貧民通りへと急いだ。


(やはり襲撃だな)


 貧民通りには、武装した男達が十数人いた。薄汚れた服を着た住人達も、剣を振り回しているようだ。


「なんだ? あ、行商人……」


 武装した男達は、僕達の白いダウンジャケットのような制服に気付くと、動きを止めた。ジャックさん達が、かなり暴れたのだろうか。牽制効果は抜群だね。



「あっ! 行商人さん!」


 貧民通りの住人達から、助けを求めるような視線が集まった。僕達を出口に案内してくれた人の姿も見えた。


(かなり、やられてるな)


 僕は『眼』に魔力を込め、一気に全員のゲージサーチをしてみた。死人はいない。だけど怪我をしている人の体力は、赤やオレンジばかりだ。


 ゲージの色は残量が、80%以上なら青、60%以上なら緑、40%以上なら黄、20%以上ならオレンジ、それ未満なら赤だ。そして死亡時は、体力ゲージが黒くなる。


 貧民通りの住人のゲージの本数はバラバラだ。この星に残された人達も集まっているんだっけ。


 デンデンと呼ばれるお頭の近くにいた人や、僕達を出口に案内してくれた人は、体力は1本、魔力が2本だ。これが女神バナバナ様が生み出した木の実だろう。



「あの、抗争中を邪魔して悪いんですが、いったん引き上げてもらえませんか? ちょっと約束がありまして」


 僕は、丁寧に話してみたが……逆効果だったかもしれない。襲撃者らしき武装した男達は、僕達に剣を向けた。


 昼間とは違って、壁のような建物からのサーチは感じない。見られていないなら、多少暴れてもいいかな。


(あっ、そういうことか)


 見られてないから、襲撃しているのかもしれない。壁のような建物は、この町を監視する役割があるのだろうけど、夜は監視しないのかな? 


 夜とは言っても太陽は昇っている。厚い雲に覆われているから、太陽の色はわからないけど、町の中は、監視できないほど暗いわけではないのにな。



「ふぅん、やはり緑色の奴らだけが強いんだな。青色は昼間も剣を抜かなかった」


(昼間? 遭遇したのかな)


 ジャックさん達と一緒に行動していた城兵に視線を移すと、軽く頷いている。店ごとの特徴を印象付けようとしたのだろうか。



 僕は、うっすらと闇を放出した。


 町の中は、結界のおかげか、この星のネットリとした大気は薄まっているけど、一応、これがある方が安定するだろう。


 城兵達は、僕が闇を放出したことに気づき、ニヤニヤしている。僕の意図がわかったらしく、誰も剣は抜かない。



「ふふん、図星らしいな。緑色以外は弱いんだな? かなり売り上げ金を稼いでいたようじゃないか」


(もしかして、脅されてる?)


 城兵達は、必死に笑いをこらえているようだ。彼らが笑い出す前に、披露しようかな。



 僕は、両手に魔力を集めた。そして、ふわりと円を描くように腕を振る。すると僕の周りに、大量の幾何学模様の小さな魔法陣が浮かぶ。


(上手くできた!)


 僕の通常戦闘力が人並みになってから1年、城兵達には機会がなくて、あまり見せてなかったんだよね。彼らから、ほぅっと小さな呟きも聞こえた。



「な、なんだ? おまえ、なぜ、魔法を発動できる?」


「この星で、町の中だとはいえ、そんな……あり得ない!」


 剣を向けていた武装した男達は、ジリジリと後退していく。ちょっと脅しておく方が良さそうだな。



「青色店は、魔導系なんですよ。だから、町の中で剣は使わない。いつでもバリアの発動もできますからね。もちろん町の中だから、火は使わない。武装している人を相手にするなら、火を使わなくても簡単に燃やせますからね〜」


「な、何を……おわっ!? 動けない!」


 僕は、闇を使って彼らを拘束している。だけど、きっと彼らは勘違いするだろう。


 大量の魔法陣の属性を変えた。オレンジ色だった幾何学模様は、黄色くバチバチと音を立てている。放出してある闇とぶつかって発光しているだけなんだけど、彼らは失神しそうなほど、絶望的な顔をしている。



「た、助けてくれ! 何でもくれてやる。命だけは助けてくれ!」


「ひっ、そ、そうか。青色店が野営の役割だと言っていたのは、こういうことか。ひっ……ひぃいぃ……」


(あっ、気絶した)


 武装していた十数人のうち、数人が立ったまま気絶していた。闇で動きを封じているから、立ったままなんだよね。


 僕は、大量の魔法陣を、闇の中に飲み込んで消去した。それと同時に、彼らの拘束を解く。



「あ、あははは。もう、行商人さんってば、血の気が多いなぁ。あは、あは、あははは」


「僕は、まだ何もしてませんよ?」


「あはあはあはははは。行商人さんってば、面白いなぁ。あははは」


 武装した男達は、逃げようともしない。もう闇での拘束はしていないのにな。気絶した男達も、倒れたときに目覚めている。



「僕達に剣を向けない方がいいですよ。たぶん、緑色店が一番弱いですからね」


(ジャックさん、ごめん!)


「ひっ、そ、そうなんですね。あははは、あはあは」


 彼らは、なぜかずっと笑っている。驚かせたせいで、おかしくなってしまったのかな。だけど、この程度で、ここまでビビるだろうか。



「さっきも言いましたけど、抗争中だったのかもしれませんが、いったん引き上げてくれませんか? ちょっと約束があるんですよ」


「な、は、はい。約束って、こんな古いだけの土着民とでしょうか」


(土着民……)


「ちょっと道案内を頼んでいたので」


「あっ! 白い女神のところに行くという旅人?」


(うん? 何?)


 武装した男達は、何かコソコソと話している。まぁ、放っておこう。怪我人の治療が先だよな。



「怪我を治しますね。回復魔法がダメな種族の方は、いらっしゃいますか?」


 僕は、そう言いながら、次々と貧民通りの住人をまわっていく。手を半分霊体化して、彼らの身体にスッといれて回復魔法を唱えていった。


 みんな、僕の動きに気づかない。手を体内に入れられたとわかると、大抵ギョッとされるんだけどな。


(よし、これで完了)


 改めてゲージサーチをして確認する。うん、もう体力が減っている人も怪我人もいない。




「お頭(かしら)さんは……」


 そう声をかけて、僕は口を閉じた。武装した男達を追い払わないと、お頭さんは出て来られないかな。


 彼らの方に視線を移すと、ビクッと肩を揺らし、一人が口を開く。


「行商人さん、回復魔法も普通に使えるのか」


(笑いは、止まったらしい)


「ええ、一応、目の前に怪我人がいるのは、ポーション屋として放置できませんからね」


「そ、そうか。あの、俺は、レギュロー団の団長レギュローだ。その、あの、白い女神に会うために古い土着民を案内役に選ぶことは、その、悪くないというか正しいのだが、その……」


 団名を名乗ることは、宇宙海賊としての礼儀なのだろうか。団長が、こんなにビビっていてもいいの? なんか、この後、団長は地位を失いそうな予感がする。


「何か問題でも?」


「あ、えっ、はぁ、その、俺達も手伝っているというか、下請けの下請けなのだが、その、白い女神に会いに行くと、危ないというか……」


 彼は、言葉を必死に選んでいるようだが、何かを伝えようとしているみたいだ。


「白い女神が災害を起こすとは、聞いたことがありますけど?」


 そう返すと、彼は手をめちゃくちゃ振っている。違うと否定しているのだろうか。手は動くけど、言葉が出てこないらしい。


「白い女神のいる火山ではなく、火山湖が危ないのだ。その、あの、監視がいて……」


(火山湖の島のことかな)


「監視? 監獄のことですか?」


 僕がそう尋ねると、レギュローと名乗った男は、少しホッとしたように、息を吐いた。


「なんだ、行商人さんも、その仕事をしてるのか。いくら強くても、神には逆らえないもんな」


(神? 何か知っているのかな)



『ライト! そやつを適当にだまくらかして、案内させるのじゃ!』


 突然、女神様から大音量の念話だ。城兵達にも聞こえたようだな。頭がじんじんするんだよね。


(ティア様、彼は宇宙海賊ですよ?)


『宇宙海賊がおる方が、島に入りやすいのじゃ!』


(また、無茶振り……)


 白い女神に、女神バナバナ様からの伝言というか、宇宙海賊を追い払え命令が出たことを伝えに行くのに、その宇宙海賊を連れて行くの?



「レギュローさん、その神は、女神バナバナ様との契約を破ったそうですよ? そっちについていると死にますよ」


 僕が、声をひそめて囁くと、彼は飛び上がって……ひっくり返った。


(ビビりすぎだよね、この人)



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