65、バナバナ星 〜注意を引きつける役割
「あははは、ライトさん、最高っす」
門をくぐり、町に入ってしばらく経つと、ジャックさんが突然笑い出した。彼と同じく緑色の帽子を被った城兵達も、我慢の限界を超えたのかケラケラと笑っている。
僕と同じ青色の帽子を被った城兵達は、既に僕から離れている。先に町に入った女神様達の居場所を探るようにと命じたためだ。
「ちょっと、ビビらせすぎましたよね」
「面白かったから問題ないっすよ。一人が使っていたステイタスサーチの魔道具が、ぶっ壊れてたっすね〜。あはは」
(サーチされてることは感じてたけど……)
「僕が壊してしまったんですか。えー、弁償しろとか言ってこないかな」
「あははは、言ってくるわけないっすよ。ライトさんの覚醒を見せたことで、俺達は、怒るとステイタスが爆上がりする種族だと思われたっすよ。これで伝説のポーション屋は、この町では安全っす」
ジャックさんは笑いながらも、そう説明してくれた。もしかすると彼は、こうなることを狙って、門番を相手にいろいろな芝居をしていたのかもしれない。
僕達は皆、お揃いの白いダウンジャケットのような魔道具服を着ている。高温多湿の気候から身を守るためだけでなく、良い意味で利用できるということだ。
女神様は、宇宙海賊団の性質を利用するために、制服を用意したみたいだけど、なるほど、こういう使い方をするためか。
「皆に制服を着させたのは、こういうメリットを想定したんですね。ティア様は」
「ティア店長は、腹黒っすからね。俺達が暴れたときの恩恵を受けることは、当然、想定済みっすよ。ライトさんと俺には、宇宙海賊になっておれと言ってたっす」
(何、それ、聞いてないよ)
「僕が闇使いだと門番に話してくれたのは、闇を使いやすくするためかと思ってましたけど……」
「俺達は、危険人物を演出する担当らしいっすよ。仲良し宣言もしたので、露店は並べて出すことにできるっすよ」
ジャックさんは、女神様からいろいろな念話を受けているようだ。この帽子は、女神様が念話をしやすくするために作った物だもんな。
「僕達が並べて出店すると、町の警備をする人達の目が、一ヶ所に集まるからですね」
「タイガさんが自由になるっすよ。ティア店長も騒いで人目を集めるつもりみたいっす」
(なるほど、そういう作戦か)
タイガさんは、女神様から何かの調査を命じられているのだろう。火山湖に浮かぶ島の監獄の調査と、それを仕切っている主犯もしくは、主犯に繋がる者を捜すのかな。
「じゃあ、僕達は、目立つ場所に出店しましょうか」
「そうっすね。でも、ライトさんのグループは町の調査中っすよね? うーん、その結果を確認してからでもいいっすけど」
ジャックさんは、城兵達に視線を移し、彼らの同意を得ながら話しているようだ。この町に来ている城兵はすべて僕の部隊の人達だから、気遣ってくれているのかな。
女神様によって城兵達は、帽子の色でグループ分けされた。ジャックさんと同じ緑色の帽子を被った彼らは、ジャックさんの店の店員という役付けになっている。だけど、ジャックさんの部隊の人達じゃないから、扱いにくいのかもしれないな。
「あの、えっと、ジャック店長」
緑色の帽子を被った城兵が、僕をチラッと見たあと、ジャックさんに話しかけた。うん、それでいい。この町の中では、皆は女神様の城兵ではなく、ポーションの行商人の店員なんだから。
「おっと、俺っすか!?」
なぜか驚く、ジャックさん。
「は、はい。あの、黄色店と赤色店は、町の中央の露店通りに店を構えたようです。この付近にはほとんど人はいませんが、あの壁のような建物の先には、大量の住人がいるようです」
「そ、そうっすか。ライトさんの店員達は、その場所をおさえてるんすかね?」
城兵は、互いに念話で情報交換をしているようだ。一方で、僕には何も言ってこない。
(ちょっと、さみしいよね)
僕には、ずっと、ワープワームからの映像が届いているからだろう。僕の城兵は、そのことを知っているから、僕には念話をしてこない。
「いえ、良い空き場所は無さそうです。あの壁のような建物からは、強い魔力を感じるそうですが……」
(あれは、星を失った神の屋敷かな)
「なるほどっす。壁のような建物からよく見える場所に、露店通りがあるんすね。じゃあ、俺達はどう動くかな」
ジャックさんは腕を組み、思案顔だ。おそらく、タイガさん達と相談してるんだろうな。
壁のような建物は、タイガさんが調べるつもりだろう。あの建物の主人が、主犯かそれに近いと予想したんだろうな。
僕達の役割は、注目を集めてタイガさんが自由に動けるようにすることだ。
次々に送られてくる映像からは、他に怪しい場所はないように見える。宇宙海賊が集まっているだけの仮の町だと思っていたけど、少し違うようだ。露店通りには、子供の姿も少なくない。
(僕達は、動く方がいいな)
「ジャックさん、僕達は、町を歩いて回りませんか」
「へ? 露店を出さないと、怪しまれないっすか?」
「行商人ですよね? それなら、歩いて売ることが基本ですよ。僕は、無名な頃は、歩いて売ってました」
「そうすると、注意を集めるという作戦は……いや、アリっすね。動き回る行商人の方が、監視の目を引きつけやすいっすよ」
ニヤリと笑うジャックさんは……イケメンなんだよな。性別不明に見られる僕とは大違いだ。だけど、この外見の違いも、町の中での行商には役立つ。僕とジャックさんでは、客の取り合いにはならないはずだ。
「じゃあ、3人ずつに分かれて、まわりましょうか。僕とジャックさんは危険人物を装うから、店員さんにはしっかり行商してもらわなきゃ」
「そうっすね。一番売った店は、好きなポーションを新作してもらえるんっすからね」
(あ、忘れてた)
ジャックさんの言葉に、城兵達は、やる気を出したらしい。そんなに新作ポーションを作って欲しいのかな。イロハカルティア星に戻ったら、オーダーメイドを考えるのもアリかもしれない。
僕は、ジャックさん達と離れ、戻ってきた青色の帽子を被った城兵と合流した。
「俺、店長と一緒に、ヤバイ危険人物をやりたいです」
「私は、本気で一番を狙いにいきますよ」
(皆、楽しそうだな)
彼らはどっちの組に入るか、ニヤニヤしながら話し合っている。
「じゃあ、決まったかな? 3人ずつに分かれて、ポーションの行商開始だ。カシスオレンジ風味の火無効付きポーションは、イロハカルティア星ではあまり売れないから、よろしくね」
「はい! ライトさんの異空間ストックを減らせるように売りまくりますよ」
「火無効付きポーションの異空間ストックって、どれくらいありますか?」
(えー、そんなのわからない)
「少なくとも、湖上の街に建てたポーション倉庫3つ分はあるかな」
「うっ……それは、売り切れの心配はありませんね」
「ふふっ、みんなには1万本ずつ渡しておくね」
ポーション入りの魔法袋を青色帽子の全員に渡した。ジャックさんやタイガさんのグループには、女神様が文句を言いながら分けてたっけ。
「ひっ、金貨何枚分だろう?」
「1本あたり銀貨10枚で売るなら、10本で金貨1枚だから……」
「金貨1,000枚分? うひゃ」
「おまえら、ネコババするなよ?」
「そんな金を持ち歩くのは怖いな」
城兵達が、めちゃくちゃテンパっている。宇宙海賊の町だもんな。強奪されるリスクは高い。
「販売価格は、まとめ売りなら適当に交渉してね。売り上げ金が多くなってきて不安なら、僕を呼んで」
「は、はい。わかりました! すぐに呼びます!」
「おい、3人ずつに分ける意味がないじゃないか」
「責任重大だろ。宇宙海賊だらけの町で……」
言い合いをしているうちに、壁のような建物がはっきり見える距離になってきた。そろそろ内緒話はマズイかな。
「みんな、売り上げ金を強奪されても、気にしなくていいよ。逆に、それを取り返す正当な理由ができるからさ。うっかり強奪犯を殺しちゃうかもしれないけど、僕、蘇生魔法は得意だよ」
大きな声でそう言うと、城兵達は安堵した表情を浮かべた。
そして、すれ違った住人の怪訝な顔……その直後、壁のような建物からのサーチ魔法を感じた。
昨日は、更新お休み、ごめんなさい。
その分、明日も更新します。よろしくお願いします。
突然、前話のあとがきに追記で、理由も書かずにお休み連絡だけをしたため、体調不良を心配する声をいただきました。ありがとうございます。昨日のお休みは体調不良が原因ではありません。
先週エアコンが壊れ、保証期間が終わっていたため修理が高額になるとわかり、買い替えになってしまい(泣)、設置作業場を確保するための室内大移動や、その後のあれこれのせいで書く時間が確保できなかったのです。ごめんなさい。
ご心配いただいた皆様、ありがとうございます。
アリ(´・ω・)(´_ _)ガト♪




