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64、バナバナ星 〜町の門での情報収集

「うおっ! これは凄い! 町の結界から出ても暑くないぜ」


「美味いな。こんなジュースのようなポーションがあるなんて、知らなかった」


「火無効ってことは、重装備無しで火山に近寄れるということか? とんでもない薬だな」


「伝説のポーション屋か。確かに、こんなポーションを作り出す賢者は、伝説級だな」



 試供品として渡した、カシスオレンジ風味の火無効付きポーションを飲んだ門番達は、次々と騒ぎ始めた。門番が6人いて、渡したポーションは4本。飲まなかった門番達が羨ましそうな顔をしている。


 僕達は、このポーションをこの星では試していないけど、飲んでおいてもいいかもしれないな。


 クマチャンマークの、白いダウンジャケットのような魔道具服が破れたりすると、たちまち熱中症の危機だ。この星の気候は、魔道具の稼働や魔法の発動を阻害する。ほとんどの城兵は、異常な高温多湿に倒れそうだ。


(あっ、タイガさんも同じかな)


 タイガさんは、赤い帽子を被った彼のチームの人達に、コッソリと飲ませているようだ。彼らは炎系の魔剣を使うから、特に魔道具服の損傷のリスクは高いもんな。




「おぬしら、妾(わらわ)達のポーションは、どうじゃ? 他にも行商人は来るやもしれぬが、まさか門前払いをする気じゃなかろうな? まぁ、この町に入れてくれないなら、他の町に行くだけじゃが」


 女神様は、この町にこだわる気はないと伝えるためか、城兵が持っていた魔道具を覗き込んでいる。この星の地図を示すサーチの魔道具だ。


「おっ、ここよりも、湖の向こうの町の方が大きそうじゃな。春色店と冬色店は、湖の向こうの町に行ったかの? 妾(わらわ)達も、あっちに行く方が儲かるかのぅ。うむ? 湖には島もあるのか。湖上の方が売れるかもしれぬな」


(はい? 春色店とか冬色店って……何色だよ?)


 女神様は、黄色の帽子を被った城兵達に、コソコソと相談を持ちかけているようだ。



「ちょっと待ってくれ! この町に入れないとは言ってない。湖の向こう側の町は、荒っぽい奴らが多い。それに、湖の島は監獄だから、金など持ってないぞ」


(監獄……)


 女神様は、この言葉を聞き出したかったのか。わずかに笑みを浮かべている。


「ふむ、この町の者は、金を持っておるか? 荒っぽい奴らの方が金を持っておるのではないかの? やはり、こっちは失敗じゃったか」


(何の芝居だろう?)


 女神様は、大げさにため息をついている。


「大丈夫だ! この町の住人は全員、宇宙海賊だからな。この貴重なポーションを買う金はあるぞ」


「そうだぜ。1本銀貨10枚だったな? 俺は試供品をもらってないから、今、買うよ。是非、売ってくれ」


 そう言うと、その門番は金貨をチラチラと見せてくる。金持ちアピールだろうか。


「こんな門の外では販売しないのじゃ。町の中で、正々堂々と露店を出すのじゃ。黄色店が一番たくさん売れると、他店に見せつけてやるのじゃ」


(なぜ宣戦布告?)


 女神様は、僕達の方をチラチラ見ながら、門番に力説している。あぁ、競っていることを再びアピールしているのかな。


「そうか、じゃあ皆さん、入ってくれ。名もなき町だが、町の中は、暑くはない」


「ふぅん、それなら通してもらうわ。赤色店の皆、行くで。ええ場所を取るのは、早い者勝ちや」


 タイガさんは、そう言うとサッサと門をくぐっていく。女神様の遊びに付き合う……というより、先に入って危険がないかを調べるつもりだろう。


「のわっ! 赤色店の脳筋店長が、こずるいことをしおったぞ。皆、はよ行くのじゃ。まずは露店に最適な場所の調査じゃ。赤色店に負けるではないぞ」


 そう叫ぶと、女神様は門番を押しのけて、タタタと町に駆け込んでいく。黄色の帽子を被った城兵達も、慌てて後を追いかけていった。


 たぶん、タイガさんが女神様を守るつもりでいるのだろう。バチバチに仲が悪そうな雰囲気を演出しているけど。




「僕達も、通してもらえますか」


「あ、あぁ、もちろんだ。伝説のポーション屋の行商人に会ったのは初めてだよ。たくさんの団があるのかい?」


 ポーションを飲んでいない門番が、僕達にそう話しかけてきた。おそらく、宇宙海賊の中でも地位が高いのだろう。毒見をするのは、下っ端の仕事だと思うし。


(探られているのかな)



「俺達は、団ではなく店っすよ。行商に出たときには、帽子の色で、わかりやすくしてるっす。緑色店は、町の中では目立つから有利なんすよ」


 ジャックさんが、適当な作り話をしてくれた。


「あぁ、そう言っていたな。確かにそんな色の帽子を身につける者はいない。だが、緑色は外だと不利じゃないか? この星は、緑色の植物だらけだぜ」


 宇宙海賊団は、よく、頭にバンダナを巻いているらしいけど、その色は赤か青か黄、つまり自分の所属する星系の色をベースに使っているそうだ。


 ジャックさんは、そのことを知っているから、緑色が有利という話を作ったんだな。賢すぎる。本当の実体験に聞こえるよ。


「俺達は、基本的には町でしか商売しないから、問題ないっすよ」


「ふぅん、他にはどんな色の店が、この星に来ているんだ? さっき、聞き慣れない色を言っていたが」


「あぁ、春色店と冬色店っすね。彼らはたぶん、武装してるっすよ。お兄さん、他の店の情報を知ってどうするんすか? 春色店は知らないっすけど、冬色店は、火無効ポーションを扱ってないっすよ?」


 ジャックさんは、一気に機嫌が悪くなったようなフリをして、門番を睨みつけた。というか、殺気まで感じるよ。


「いや、あはは、そうか。緑色店さん、怒らないでくれよ。別に他の店を探しに行こうというわけじゃないんだ。伝説のポーション屋の行商人とは初めて会ったからな、興味本位だよ」


 門番は、ジャックさんに睨まれて、顔をひきつらせていた。だよね、ビビるよね。ジャックさんは、すごく強い剣士だもんな。


「そうっすか。俺達は、互いにいろいろと複雑な関係があるっす。緑色店は、青色店とは親しくしてるっすけど」


(あっ、仲良し宣言? 助かる)


「へ、へぇ、そうかい。あまり他の店のことは聞かないようにするよ。青色店さんは物静かだから、緑色店さんの舎弟のような立ち位置なのかね?」


 門番は、ジャックさんより僕の方が扱いやすいと思ったらしい。僕に対しては、上から目線だ。


「舎弟というわけでも……」


「うわ、ライトさん、怒らないでくださいっすよ。門番は、何もわかってないっす」


(はい? 何の芝居?)


 ジャックさんは、僕から少し離れるような仕草をした。


「えっ? 何だ? 緑色店さん」


 門番が、ジャックさんに説明を求めている。僕が危険人物だと思われている?


「青色店の店長は、闇使いのアンデッドっすよ。彼を怒らせると、殺されるっす」


(はい?)


 ジャックさんの演技に、門番は顔をひきつらせた。門番を恐れさせたジャックさんが、僕を怖いと言うからだよね。


「闇使いのアンデッド……魔族か。イロハカルティア星の魔族は、強い者が多いと聞く。地底の魔族の国なんて、興味本位で行くと、帰って来れないとか……」


「緑色店の店長は、地底の魔族っすよ?」


「そ、そうか。だから、星をまわる行商人なんてことができるのだな。イロハカルティア星の魔族は、やはり凄い。だから幼児を捕獲して高く売る商売が、流行っているのか」


(は? 捕獲? あの誘拐事件を知ってる?)



「地底から誘拐してるんすか? 殺されるっすよ?」


 ジャックさんは僕に目配せをして、門番にそう尋ねた。


(脅せってことだよね?)


 僕は、スゥハァと深呼吸。そして、覚醒状態へと変化した。戦闘力も隠さない。僕の戦闘力は、一気に跳ね上がる。


「ヒッ……た、助け……」


(ビビらせすぎたか)


 門番は、全員、固まってしまったようだ。僕の目に映るものは青く、スローモーションになる。だから、彼らの顔色の変化は、イマイチわからない。



「地底の魔族を誘拐したのですか」


 僕がゆっくりとそう尋ねると、門番は首が千切れそうになるほど、ぶんぶんと横に振っている。


「俺達は門番の担当だから、星を離れられない。だが、地底には行ってないはずだ。誰も死にたくはない」


 ジャックさんの合図に合わせて、僕は覚醒状態を解除した。門番達の緊張が一気に緩むのを感じた。


「地上に点在する魔族の子供だけなのですか」


「あ、あぁ、たぶんな。大きな湖の島の監獄に囚われているよ。気になるなら……いや、何でもない。下手なことを教えると俺達の首が……あはは」


「ふぅん、地上の魔族には興味はありません」


 僕がそう言うと、門番達は、安堵の笑顔を見せた。


 ジャックさんは門番から、誘拐の件を聞き出したかったんだな。事前にサーチしたことを、彼らの口から聞くことができた。



「さ、さぁ、どうぞ。お通りくだせい」


 門番達は門を全開にして僕達を通すと、敬礼のような仕草をしている。やはり、ビビらせすぎたよね。



[12月19日追記]

うー、すみません。本日、お休みにします。今週はその分、水曜日も更新します。よろしくお願いします。ごめんなさい。

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