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24、アプルゴルド星 〜竜紐は神竜の加護?

「皆さん、お疲れ様。彼らは、イロハカルティア星から行商に来たポーション屋さんですよ。貴方達は、出迎えに来たのではないのですか」


 神アプルゴルド様に仕える魔帝クラリス・ロールさんは、よく通る声で、門にいた騎士風の獣人達にそう尋ねた。


「はい、魔帝クラリス様、伝説のポーションを売る小さな種族が来たと連絡が入り、お迎えに参りました。ぜひ神殿へお越しいただきたいと、神竜様がおっしゃっていまして」


(神ではなく、神竜が?)


「そうか。だが……私が案内係をしています。おまえ達は、宇宙海賊が彼らの行商の邪魔をしないように、市街地の安全を守りなさい」


「はっ、かしこまりました! 魔帝クラリス様」


 クラリスさんは、彼らが神竜と言ったときに、眉間にシワを寄せていた。彼女も、違和感を感じたのかな。



「クラちゃん、神竜というものは、神殿におるのか?」


 猫耳の少女は、わざわざキョトンとした顔を作って、そう尋ねた。完全に子供を演じているみたいだな。


「ええ、そうね。数年前から、神殿に出入りしているわ」


 クラリスさんのこの言い方から、僕はいくつかのことを察した。それ以前は、神竜は神殿には出入りしなかった。つまり、神竜が神アプルゴルド様の配下になったのは、数年前だということだろう。そしてクラリスさんは、神竜のことを良くは思っていない。



「ふむ、あのリボンは、クラちゃんは身につけておらぬのか?」


「あの竜紐ね……アレは、神に直接仕える人達は、誰ももらってないのよ」


「なぜじゃ? 神竜がケチなのか?」


「ふふっ、ティアちゃんってば、面白いことを言うのね。私達は、神アプルゴルド様から鎧をいただいているの。あの竜紐は、神竜の加護が備わっているらしいけど、私達の鎧には、神アプルゴルド様の強力な加護が備わっているから不要なのよ」


(竜紐が、神竜の加護?)


 イロハカルティア星でも、精霊様の加護を受けることはある。僕がポーションを作る素材もそうだ。薬草は、精霊イーシア様の住まいがあるイーシア湖のものだし、水は、イーシア湖の水を使っている。いずれも精霊イーシア様の加護を受けたものだ。


 だけど、神の住まいである神殿で、他の誰かが加護を与えることがあるのだろうか。神竜の試練は、神殿で行われていると、クラリスさんは言っていたよね。



「クラちゃん、僕達は、神竜様に呼ばれたということでしょうか」


「ええ、そうみたいね……。でも、気にしなくていいわ」


 クラリスさんは、神竜とはどういう関係なのだろう? 神竜の招待を気にしなくていいということは、魔帝の方が地位が高いのかな。



「神殿に行ったら、リボンをもらえるのか? 神竜の試練は、どこでやっているのじゃ?」


 女神様は、答えがわかっていて、質問しているみたいだな。


「ティアちゃん、うーん、今日はやっているのかしら?」


 クラリスさんは、猫耳の少女に神竜の試練を受けさせたくないみたいだな。



「行商人さん、神竜の試練は、いつでも神殿でやっているよ。神殿の中庭に、神竜の試練に挑むための入り口があるんだ」


 猫耳の少女について来ていた獣人さん達が、そう教えてくれた。


「いつでもなら安心じゃな。じゃが、そんなにずっとやっているということは、たくさんの人が神竜の試練を受けるのかの?」


 首を傾げた猫耳の少女に、デレっとした笑顔を向け、大きな獣人さん達は、次々と話し始める。


「行商人さん、そうなんだよ。だから、神に仕える人達は、順番待ちの状態なんだよ。加護のない平民が優先なんだ」


「神アプルゴルド様ほどの加護ではないけど、たくさん集めると階級が上がり、それに応じていろいろな加護が与えられるんだよ」


「そうそう、俺は、ほとんど全色を集めたから、何をしても疲れを感じないし、食べなくても元気でいられるんだ」


(うん? 何かおかしくない?)



 僕は、嬉々とした表情で話す彼らのゲージサーチをしてみた。やはり体力は、ほとんどの人がオレンジ色だな。一方で、騎士風の人達は、緑色が多い。


 ゲージの色は残量が、80%以上なら青、60%以上なら緑、40%以上なら黄、20%以上ならオレンジ、それ未満なら赤だ。


 体力が減っているのに疲れを感じないなんて、それはある種の洗脳状態じゃないのかな。もしくは、感覚がマヒしてしまっている?



「そのツルンとした赤いリボンが可愛いのじゃ」


 猫耳の少女は、一人の獣人の首に巻いた竜紐を指差している。他の物よりも、スベスベな質感に見える。


(光沢の具合がバラバラだな)


「これは、長く身につけている竜紐だよ。ずっと身につけていると、加護が強まって、こんな風に輝いてくるんだ」


「ずっとということは、寝る時も付けておるのか?」


 猫耳の少女に、真っ直ぐ見つめられて、その獣人の男性は、デレデレでトロトロな顔になっている。ほんと、この星の獣人さん達は、小さな種族が好きだよね。


「そうだよ。竜紐を身につけて眠ると、目覚めもいいんだ。逆に、寝相が悪くて外れてしまうと、体調が悪くなるくらいだよ」


(いや、その体調が正常でしょ)


 体力がこんなに減った状態でいると、疲れやすいし、免疫力も下がる。なぜ、こんなに体力が減っているのだろう? 体力の消費が激しいようなことをしたのかな。全員が減っているってことは、全員に何か重労働をさせたのだろうか。



「ライト! とりあえず、あそこで露店をやるのじゃ。カイが場所取りをしておるぞ」


(へ? 神殿に行くんじゃないの?)


 女神様は、言うことがコロコロ変わる。たぶん、それには意味があるのだと思うけど。


「わかりました。外門から歩いてきたから、たくさんのお客さんが来てくれましたもんね。今度は、パナシェ風味のクリアポーションにしようかな?」


「それはダメじゃっ!」


(えっ? 凛とした声だ)


 猫耳の少女は、ハッとした顔をして、再び口を開く。


「体力回復の方が良いのじゃ。市街地ではまだ売っておらぬではないか」


(慌ててるね)


 女神様は、ぶんぶんと腕を振り回して、謎の威嚇をして……さっきの言葉をなかったことにしたいらしい。


 クリアポーションはダメだと言ったあの言い方は、女神様の本来の話し方だ。何か考えがあるようだな。



 パナシェ風味のクリアポーションは、体力1,000回復と、毒、細菌、呪いを消す効果がある。ただし、弱いものにしか効かないから、強い毒なんかには役に立たないんだけどね。


 女神様は、大きな獣人さん達に、これを飲ませるわけにはいかないと考えたんだよな。


 大きな獣人さん達の体力値は、かなり高いだろうから、1.000回復では意味がない。クリア効果を今、使うわけにはいかないということかな。


(ということは、毒か呪いか)




「ライト、何をぼーっとしておるのじゃ! はよ、ポーションを並べるのじゃ」


 猫耳の少女は、内門のすぐ内側の道端にテーブルを出し、落書き付きの風船を飾っている。門番の邪魔になりそうな場所だけど、いいのかな。


 僕は、内門をくぐり……予想しなかった光景に、思いっきり驚いた。


(すんごい人だ)


 まるで何かのイベント会場かと思うほど、たくさんの大きな獣人さん達で、ぎっしりだ。


 確かに、これを無視して神殿には行けないな。だから女神様は、露店をやることを決めたのかな。



「マスター、近衛兵達にも手伝わせましょうか。もちろん、彼らには給料は不要よ」


(勤務中なのに?)


「クラちゃん、えっと、さすがにそれは……」


 騎士風の人達は、神に仕える近衛兵なのか。そんな人達に手伝いをさせると……神アプルゴルド様が、僕のポーションを推奨していることにならないかな。



「ライト! おっきな門番にも手伝いを頼むのじゃ。たくさんの人が押しあうと危険じゃから、整列させる必要もあるからの」


(確かに……)


「ティア様、わかりました。では、クラちゃん……」


「うん、任せておいて」


 クラリスさんは、騎士風の人達に、テキパキと指示をしている。確かに助かるけど、いいのかなぁ?



「ライトは、さっさと並べるのじゃ。買いたい人がいなくなるまで、並べ続けるのじゃっ」


 そう言うと、猫耳の少女は、テーブルの上にぴょんと飛び乗った。


「ポーションが欲しい人は、ここに集まるのじゃ。たくさん持ってきたから、慌てなくても大丈夫なのじゃっ。1本、銀貨11枚じゃが、計算が面倒くさいから、10本買ってくれたら、金貨1枚でよいのじゃっ」


(勝手に値下げしてるよ)



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