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23、アプルゴルド星 〜何かの手がかり?

 僕達は、神都の街の大きな内門へと、やってきた。


 歩く方が宣伝になると女神様が言うので、ワープワームは使わずに、外門と内門を繋ぐ長い道を歩いたんだ。確かにそのおかげで、とんでもない数のお客さんが集まってきた。


 風船を身につけて、ぴょんぴょん跳ねる猫耳の少女は、小さいけど、とても目立っている。小さな白いスケルトンは、風船に重力魔法を使っているのか、風船を持たされたまま、女神様の近くをふわふわと浮かんで移動していた。


 その後ろから、デレデレと表情を緩ませた大きな獣人達がついてくる光景は、ちょっと異様な気もするけど……だから、余計に人が集まるんだよね。




「行商人さん、あの門の先が、神都の市街地だよ」


「ふむ、大きな門なのじゃ。どうやって開け閉めするのかのぅ?」


 猫耳の少女のすぐ後ろには、隙があれば話しかけようとする大きな獣人達でいっぱいだ。だが、皆、小さな種族を怖がらせないようにという配慮か、一定の距離は保っている。


「俺達は、力持ちだから大丈夫なんだ。夜になると、門番が数人で開け閉めをしているよ」


「おおっ、こんなに大きな門を、たった数人で動かすのか? 重力魔法を使っておるのか?」


「いやいや、魔法なんか使わないさ。俺達は、あまり魔法は得意ではないからな」


「なんと! 魔法を使わずに動かすのじゃな。とんでもない力持ちなのじゃ」


 猫耳の少女に、デレデレ顔で話しかける獣人達……。


 そんなことより僕は、女神様が彼らに話を合わせて、ニコニコと褒める姿に、とても驚いている。



 そういえば湖上の街では、子供達に対して、こんな接し方をしていたっけ。女神様のはちゃめちゃな言動は、身近な大人に対してだけだ。いや、大人とは限らないかな。女神様はシャインに対しても、よく無茶振りをしている。


 シャインは、見た目は5〜6歳に見えるけど、種族的にはまだ赤ん坊だ。10歳くらいに見える猫耳の少女よりも小さいのに、女神様は、シャインには遠慮がない。


 おそらく親しみの表れだとは思うけど、僕の息子は、まだそれを理解できるほど成長してないんだよね。だから、すぐに涙が出てくる。まぁ、これも、必要なことなのかな。シャインは、もう少し成長すると守護獣として、精霊様や精霊が宿る地を守ることになるんだから。




「あら、マスター……」


 神アプルゴルド様に仕えるクラリス・ロールさんは、門を指差して、僕達の方を振り返っている。


(警戒されているのかな)


 門の前には、鎧を身につけた大きな獣人が、ズラリと並んでいた。門番というより兵、いや騎士のようにも見える。宇宙海賊が市街地に入らないように警戒しているのかな。もしかすると僕達が目立つから、警戒して出てきたという可能性もありそうだ。



「クラちゃん、僕達が騒がしいからでしょうか」


「ふふっ、マスターもシャインくんもティアちゃんも、すっごく可愛いからだわ。あっ、ティアちゃんのお人形さんも不思議だものね」


(うん? それで警戒されるのかな?)


 僕が首を傾げていると、シャインの後ろをついてくる獣人さん達が、口を開く。


「珍しい種族は、見なきゃ損だからだよ。キミ達は、とっても可愛いからね」


「えっ? えーっと……僕も、そう見えているのでしょうか」


「もちろんだよ。小さな種族は、小さな子供の状態でも子供ができるなんて、俺達は知らなかったよ」


(いや、僕は余裕で大人だけど)


 シャインの後ろをついてくる獣人さん達は、女神様の後ろをついて歩く人達とは違って、あまり話しかけてこない。それに、声も大きくはないし、内向的な印象を受けた。


 こういう人達には、真っ向から否定しない方がいいよね。クラリスさんは、彼らよりは外交的なタイプだけど、拒否されると傷つくんだよな。彼らは、真面目でおとなしそうだから、言葉には気をつけないと。



「皆さん、彼は、私がよく行く店のマスターで、こんなに可愛らしいけど100歳をとっくに越えているのよ?」


 クラリスさんがそう説明すると、獣人さん達は大げさにのけぞっている。そんなに驚いたのかな。


「魔帝クラリス様、それは事実ですか? なんと長寿な……。こんなに可愛らしいのに、俺の爺さまの二人分の時間を生きているとは……ひゃぁぁ」


(寿命は短いのかな)


「そうよ。イロハカルティア星の種族は、とっても種類が多いの。マスターは、ちょっと特殊な種族だから、特別かもね」


 クラリスさんは彼らに、僕が神族だとは言わないんだな。イロハカルティア星の極秘事項だと考えているのかもしれない。街を歩く住人には、気軽に話すことじゃないよね。



「父さん……ティアちゃんが……」


(うん? 女神様はどこに行った?)


「シャイン、猫ちゃんはどこに行ったのかな? 小さいから見失って……あれ?」


 猫耳の少女は、大きな門にたどり着いていた。そして、落書き付きの風船をぶんぶん振り回して、門にいる騎士を威嚇している!?


「げっ、クラちゃん! シャインをお願いします」


 そう言って、シャインをクラリスさんに預けると、大きな獣人の彼女は、デレデレと怪しい笑みを浮かべた。



 僕が一歩踏み出した足元には、ワープワームが集まっていた。僕の腰には族長さんがくっついているから、何も言わなくても、すぐに行動してくれる。


 そして、僕が二歩目を踏み出したときには、大きな内門の前にワープしていた。



 ◇◇◇



「のわっ!? なんじゃ! ライト、急に現れよって」


 僕の動きを予測していなかったのか、猫耳の少女は、大げさに驚いている。だけど、悪さをしていた顔ではないね。


「ティア様、何を暴れているんですか!」


「こやつらが、妾(わらわ)に意地悪を言うからじゃ!」


(はい?)


 猫耳の少女が指差す先には、騎士風の鎧を身につけた獣人達がいる。その表情は、ピリピリとしているように見える。



「あの、彼女が何かご迷惑を……」


 僕がそう話しかけると、騎士風の獣人達は、なぜか僕に剣を捧げるような仕草をした。たぶん、敬意を表してくれているのだと感じた。


「とんでもございません! 貴方が、女神イロハカルティア様の番犬であり、伝説のポーション屋でもあるライト様でしょうか」


(番犬って言葉を知っているんだ)


 女神イロハカルティア様の側近8人は、女神様の番犬と呼ばれている。


「えっ、あー、えーっと……」


「素性を隠されているのですね! 申し訳ございません! もしや、イロハカルティア星から出られたことを知られると、マズイのでしょうか?」


「えーっと……あはは、どう答えようかな。なぜ僕が、その人物だと思ったんですか?」


 僕は、思わず、質問に質問で返してしまった。


「はい! イロハカルティア星に行った者から、ライト様の噂は聞いていました! 青の神ダーラと相討ちになって消滅したと聞いたときには、目の前が真っ暗になりました。ですが、しばらくして復活されたと聞きました! まさか、お会いできるとは……夢のようです!」


(なんだか、凄い勢いだな)


 チラッと女神様に視線を移すと、ムスッとして不機嫌な……フリをしている。目が笑ってるんだよね。僕が、タジタジになっているのが、面白いらしい。



「おっきい門番! そんなことはどうでもよいのじゃ。それよりも、妾(わらわ)は、あのリボンをどこでもらえるのかと聞いておる」


(うん? 神殿じゃないの?)


「お嬢ちゃん、あれは、おもちゃじゃないんだよ。神竜の試練を受けた証だからね」


「妾も欲しいのじゃ! あの色がかわいいのじゃっ」


「譲ってあげるわけにはいかないんだよ。あれは、神アプルゴルド様に仕える神竜様が、我らのために作ってくださっているのだよ」


(神の配下なのに、神竜?)


 なんだか、言葉に引っかかりを感じた。それに神アプルゴルド様に、神竜の配下がいるなんて初耳だ。クラリスさんからも、そんな話は聞いたことがない。



「おぬしらは、リボンを持ってないのか」


 猫耳の少女は、騎士風の獣人達の周りを、ぴょんぴょんと飛び跳ねている。これは威嚇行動なのかな?


「お嬢ちゃん、俺達は、神アプルゴルド様から既に鎧を与えられているから、別の証は身につけられないのだよ」


「妾は、鎧をもらってないから、リボンをもらえるのじゃな? どこに行けば良いのじゃ?」


 女神様は、めちゃくちゃしつこいな。だが、そこに何かがあるのかもしれない。



「あっ、魔帝クラリス様!」


 シャインと手を繋いだクラリスさんが追いついてきた。その表情は、さっきとは違って、キリッと引き締まっていた。



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